Eno / Here Come The Warm Jets (1974)
ロキシー・ミュージックを脱退したブライアン・イーノが、のちに相棒となるロバート・フリップやロキシーのフィル・マンザネラら旧知のギタリストと共に制作したソロ1作目。ちなみに本作は”イーノ”名義。
ロキシー時代の延長線上のグラム・ロック的な煌びやかさに加え、「ノン・ミュージシャン」を自称する彼らしくアート性と実験性にも富み、アルバム・ジャケットが示すとおりのごちゃごちゃ感が意外にも均整の取れた音像にまとめられた、奇抜で先鋭的な作品。
ロックらしからぬ音のコレクションやロバート・フリップ印のエキセントリックなギター・ソロを絶妙な按配で配置することで、何でもありのレコードをアート・ポップ作品へと昇華させている。
一方で1950〜60年代のロックンロールやポップスを聴いてきたイーノの意外なポップ志向も感じられ、幕開けの①はラモーンズっぽいし、④ではガールズ・グループの清々しさとキャッチーさを放ち、⑥や⑨はフィル・スペクターやビーチ・ボーイズを彷彿させるほど甘美にメロディアスに作られている。
アンビエントの巨匠としてのイメージからすると、本作は驚くほどポップで、キャッチーとすらいえる楽曲が収められている。何だか楽しげなのがイーノらしくない(?)。
まあ出自がロキシー・ミュージックで派手派手な”何もしない人”だからなぁ。
カリスマ的キワモノからリヴィング・レジェンドへと進んでいくキャリアも含め、タモリさん的な立ち位置なのかもしれない。