('07) Arctic Monkeys / Favourite Worst Nightmare
デビュー作で破格の成功を収め、2000年代のトップ・バンドへと一気に駆け上がったアークティック・モンキーズ。それから1年後にリリースされたセカンド・アルバムでは、その独特のふてぶてしいほどに強靭なグルーヴが更に強く、鋭く、確固たるものへと磨き上げられている。加えて演奏自体の強化、複雑なリズムと大胆な展開を導入して表現力の幅が広がり、アレックス・ターナーのヴォーカルも切れ味と色気を増している。詞の語感も相変わらず気持ちよく、鮮やかにリズムの中に組み込まれている。内容もおよそ20代前半の若者とは思えないほど、痛烈で示唆に富んでいる。
前半は1~3曲目で一気にギアを上げて疾走し、4曲目で少しペースを落とす。激ポップな5曲目の清涼感と、やわらかな甘酸っぱさが漂う6曲目(後のアレックスのソロを予期させる)で締める。ここまででもアークティック・モンキーズの破格の才能とその魅力は存分に感じられる。
そして、本作の真骨頂ともいえる後半、7~12曲目の6曲の中で静と動、強弱をコントロールしながら新境地を切り開いていく。様々なアイデアを散漫にならぬよう、暴れ馬を乗りこなすように、ファストでハードな曲の中に詰め込む。
これまでの音楽性を確固たるものとし、これからの方向性を冷徹に見極め、バンドの2007年の現在地が浮かび上がる。ベタな”UKロック新人”の類とは別次元で、圧倒的な音楽センスで驚異的なスピードで成長を続ける彼らは、この後一度もコケることなく斜に構えることなく、アルバムを追うごとに次々と新たな武器を獲得していく。
・・・なんか気合い入ってるな、これを書いていた当時の自分。でも、筆に力の入った感じも、思い入れと比例しているということで許そう。
15年前のアルバムだけど、今聴いても当然のようにカッコいい。若さを言い訳にしない才能の大きさ。アレックス・ターナーのアーティストとしての凄みみたいなものは、最初から現在まで全く衰えず、どんどん表現の幅と手法を増大していっている。
1~2作目は特に夕方に聴くのがおすすめです。