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Radiohead / My Iron Lung [EP] (1994)

90年代初頭の音楽シーンに大きな影響を与えた名曲"Creep"を収録しながらも全体としては佳作止まりの印象も強かったファースト・アルバム「パブロ・ハニー」と、名作セカンド・アルバム「ザ・ベンズ」の狭間に置かれた、橋渡し的なEP/ミニ・アルバム。

初期ミューズのインスピレーション源となったと思しき耽美で過剰なギター・ロックと、ジェフ・バックリィにも通ずるピンと張り詰めた空気感。
翌年リリースのセカンド・アルバムからオミットされた楽曲を収録しているが、こうしてまとめた音源で聴くと、物足りなさもあるが、なかなかに良い曲が揃っている。
後の彼らからは想像できないほどオーソドックスな曲が多いのも却って興味深い。

そして、初期レディオヘッドといえば前述の"Creep"の成功とその呪縛なわけだが、そこから逃れようともがき、否定と試行錯誤の先に生まれた名曲"My Iron Lung"に始まり、憎き"Creep"の本質がプリミティヴにピュアに吐露されたアコースティックVer.で終わる皮肉な構成も良い。

この時期の蒼くて尖ってポップで、苦悩の跡が色濃く刻まれた音を聴ける貴重な作品。






UKギター・ロックが誇る名盤中の名盤「ザ・ベンズ」に向けて、産みの苦しみを味わっていた時期のレディオヘッドの音楽性を捉えた貴重な音源。
いかにもギター・ロック/インディ・ロック然としたベタな作りの曲も残しつつ、少しずつエッジを尖らせ、深みを増していく様子がそこはかとなく感じられる。
特に初期レディオヘッドにおけるトム・ヨークは、苦悩の深さが音楽性の深さに直結していたわけで、ここでの悪戦苦闘が翌年の最高のレコードに見事に結実した。

秋の夜の冷えた空気にレディオヘッドの音楽はよく合うね。

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