Billy Joel / Piano Man (1973)
デビュー作の失敗、アメリカ・ツアーの打ち切り、人間不信からの精神状態の悪化とどん底にいたビリー・ジョエルは、当時のマネージャー(のちの妻)と共に西海岸へと向かう。
生計を立てるためにロサンゼルスのラウンジでピアノを弾いていた時期に、後の代表曲にして永遠の名曲"Piano Man"が生まれ、やがてコロムビア・レコードとの契約を得る。自身の将来を懸けたこのセカンド・アルバムは初のチャート・インを果たし、彼のブレイクのきっかけとなった。
ときにエルトン・ジョンのように歌い、ときにボブ・ディランのように語り、彼は物語性に富んだ歌を紡いでいく。カントリーやフォークの要素も取り入れながら、美しいバラードもものにしている。
人生の苦悩や悲哀の中に光を見出すピアノ・マンは、優しく美しく悲しく弾き語りながら、同時にロックンロールな強さとしなやかさをも感じさせる。
ビリー・ジョエルのキャリアを決定づけるとともに、ピアノ弾き語りシンガーの代名詞ともなった不朽の名曲「ピアノ・マン」を含む出世作。
土曜の夜、バーでの人々のふれあいや喧騒が、生き生きと描かれる。
夢を追い、夢に敗れ、日々の生活に追われ、そして週末のバーで飲み明かす、ありふれていて愛おしい日常。
”古き良き”ならず者への愛着を示したり、旅立ちの期待と不安、故郷への愛憎入り混じる想いなど、20代前半の悩める若者のありのままの姿を刻んだ蒼き傑作。
(ジャケの顔ちょっと怖い…)
奇しくも半年前、33歳の折り返しにビリーのデビュー盤について書いていた僕は、無事(?)にまた1つ歳をとった。誕生日は通過駅の如く、気づけば後方に消えゆく。
32歳最後の日に日常から逃避した僕の33歳の1年間は、一言で言うと「凪」だった。
少なくとも日常生活においては、ひどく心を揺さぶられることなく、過ごしてこられた。そのことに安心しつつ、どこか物足りなさを感じているのも事実。
不都合なことから目を背けて、心地良い方向に流れようとしている自分に対して、仕方がないとも思うし、同じぐらい腹立たしくもある。でも変えられないのよ。
来春には否が応でも環境が変わるだろうから、それまではじっくり冬眠していたい。
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