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Norah Jones / The Fall (2009)

「秋」あるいは「落下」をタイトルにしたノラ・ジョーンズのソロ4作目は、前作でシンガー・ソングライターとして本格始動したノラ・ジョーンズが公私に渡る長年のパートナーとの関係を解消し、髪もばっさり切って、30歳を迎えて、心機一転、新バンドで取り組んだ意欲作。

今回は彼女の愛聴盤であるトム・ウェイツの「Mule Variations」をはじめ、モデスト・マウスやキングス・オブ・レオンなどを手掛けたロック畑のジャクワイア・キングをプロデューサーに迎え、残響が広がる透徹したモダン・ロック調のサウンドを実現。

新たなコラボレーターとしてドラムスのジョーイ・ワロンカー、ギターのマーク・リボーら腕利きのミュージシャンを集め、ライアン・アダムスとの共作曲も収録した本作は、前作に続いてノラ自身のギターも大々的に取り入れ、ポップスからソウル、ロックにまで自然に滑らかに接近した音を聴かせる。

前作のようなストーリーテリングに加え、寂寥感を含んだり感傷的だったり辛辣だったりする詞も、人性の転機を迎えた彼女の心境をこれまでになくストレートに表現している。

彼女らしい自由で柔軟な挑戦の結果が、本作の心地良いグルーヴに繋がっている。






タイトルが秋を意味しているのかはわからないけど、孤独感や寂寥感を含みながらも温かみのあるサウンドは秋にぴったりで、毎年この時期になると聴いている。

音響面においてもヴォーカルにおいてもアンニュイさとスモーキーさを増している(それなのに彼女らしいナチュラルさと上品さは失われていない)本作の路線は個人的にツボで、ノラ・ジョーンズ関係作品なら名前だけで売れる風潮とは関係なく、単純にロック・アルバムとして凄く好きな作品。

本編の最後の13曲目のラストで(ベタな形ではあるが)ジャケットの意味が分かるというのも微笑ましい。



そして僕が持っているデラックス・エディションには、彼女の拠点としている”ザ・リヴィング・ルーム”でのライヴ音源(2009年9月4日)も収録されている。

発売前の「ザ・フォール」からの3曲に加え、ウィルコの「ジーザス・エトセトラ」、ジョニー・キャッシュの「クライ、クライ、クライ」、キンクスの「ストレンジャーズ」というカヴァー3曲の選曲センスとパフォーマンスも秀逸。

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