(‘06) Arctic Monkeys / Whatever People Say I Am, That’s What I’m Not
2000年代UKロック最高のバンドの衝撃的で完璧なデビュー作。16年近く経過した今でも全く古びることなく、孤高のクラシック感を漂わせている。全く無駄のないタイトでヘヴィなグルーヴと疾走感溢れるビートの上を、アレックス・ターナーの捲し立てるような、心地良い語感のヴォーカルが走る。
アレックスは元々ヒップホップ・リスナーでザ・ストリーツからの影響も色濃く、地元シェフィールドのような英国の地方都市に住む若者の日常を当事者目線と俯瞰の両方で綴る詞は文学的な響きを含んでいる。特に初期の名曲”When The Sun Goes Down”やラストを締める”A Certain Romance”は静と動のコントラストも詞の抒情も含めて圧巻。若者のためのロックとしては最高峰。
ジャムやスミスやオアシスを聴いて育ち、ストロークスに刺激を受けて音楽を始めた20歳そこそこの若者4人が、1作目でここまでの完成度と強度のアルバムを作れたのは奇跡的だが、今作での堂々とした立ち振る舞いには"小慣れた"感があり、既に初期衝動に収まらない風格が漂っていて、その意味ではこのマスターピースの登場は必然的だったのかもしれない。
ネット上のデモ音源から人気に火がつき、デビュー作リリース時には既に人気爆発。オアシスのデビュー最速売り上げ記録を抜き、全英チャート1位となり、この年のマーキュリー・プライズまで獲得。彼らはオアシス以来途絶え、リバティーンズが取り戻し損ねたブリティッシュ・ロックの真髄と時代の必然を初めからがっちりと掴んでいたのだ。
今日はアレックス・ターナーの誕生日。ということで、昨年で15周年を迎えたアークティック・モンキーズのファースト・アルバムを。
後にアレックスは今作の曲について、「今の自分にとってリアルじゃないから、他人の曲を演っているようだ」みたいなことを言ってた気がする。たしかにこのアルバムは若さ故の蒼さや焦り、切迫感がそこかしこに迸っている。僕は大学1年生の時にこれに出会い、恥ずかしながら最初はあまりハマらなかった。でも、わかりやすい”Mardy Bum”あたりから徐々にその魅力に食いついていき(アレックスはアルバム1枚に1曲はこういうスウィートな曲を入れてくるよね。心憎いぜ)、気づけばこのバンドのふてぶてしいクールさにずっぽり嵌ってしまった。このアルバムには、夕立の中、得も言われぬ苛立ちをエネルギー源に思い切り自転車を漕ぎまくるようなパワーがある。思わず体を揺らし叫び出すような。
まぁ僕自身は自転車に乗れないんですけど...。