Madness / One Step Beyond... (1979)
1970年代終盤から80年代初頭のイギリスの音楽シーンを彩ったスカ/2トーンをザ・スペシャルズと共に牽引したマッドネスは、その後イギリスの国民的人気バンドとなっていくわけだが、その独自性と魅力はこの傑作デビュー・アルバムの時点ですでに存分に発揮されている。
スカの弾けるようなリズム感と哀愁溢れるメロディと市井の人々の悲哀や情けなさを描いたリリック。それらを英国らしくポップにユーモラスに楽曲に落とし込む洒脱なセンス。ふざけているようでいながら楽曲の質自体は頗る高く、それをわずか39分の間に15曲繰り出していく様は圧巻。
キンクスの系譜を継ぎ、ブラーへと続いていくアイロニックなポップス(あるいはポップなアイロニー)の粋を体現した傑作。
硬派な印象のスペシャルズに比べると軟派な雰囲気のマッドネスだが、曲のポップ・センスでは負けていない。
キャッチーな楽曲の中で、サッグスことグレアム・マクファーソンのコミカルだったり渋かったりするヴォーカルも良い味を出している。
張り詰めたテンションで活動を続けたスペシャルズがオリジナル・アルバム2枚だけで解散した一方で、マッドネスは断続的に活動し、結果的に息の長い人気バンドとなっていて、ロンドン・オリンピックのセレモニーにも出ていたのを思い出す。