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The Beach Boys / All Summer Long (1964)

初期ザ・ビーチ・ボーイズの集大成というべき通算6作目のスタジオ・アルバム。

ビートルズを初めとしたブリティッシュ・バンドのアメリカ進出から受けた刺激と”本場”のグループとして対抗心。長く続いた父の”支配”からの脱却。そして、ブライアン・ウィルソンの”理性が保たれた”ポップ・センス。
あらゆる意味でバンドにとって重要な本作は、サーフ・ロックとホット・ロッドの最後の煌めきを捉えた、究極の夏のポップ・アルバムとしても燦然と輝きを放ち続けている。

(西海岸の)若者の夏という青春の永遠のテーマを描き(タイトル・トラックはジョージ・ルーカスによる青春映画の古典的名作「アメリカン・グラフィティ」のエンディングにも使用された)、ブライアンだけでなくマイク・ラヴやデニス・ウィルソンのヴォーカルにも焦点を当て、カール・ウィルソンのギターもフィーチャー。
ブライアンは全体を統制し、過去最高級の完成度の楽曲を揃え(カヴァー曲の"Hushabye"も秀逸)、極上のハーモニーをもたらす。
終盤の”レコーディング風景”風のお遊びトラックもご愛嬌で、そこから最終曲に流れ込む展開もまた良い。

ビーチ・ボーイズがバンドとして壊れてしまう前の”幸せな季節”を刻んだ最高傑作(の一つ)と呼べるであろう、削ぎ落とされた、魔法のような25分。

そして、永遠と思われた”夏”は、ブライアンの「正気」とともに失われ、過ぎ去っていく。




”夏中ずっと”のタイトルからして象徴的なビーチ・ボーイズの最初の到達点。
「海と車と女の子」というテーマ、享楽と繊細を行き来するメロディ、ため息が漏れるほど美しいコーラス・ワーク、ちょっとした実験性。
これまでのバンドの集大成にして、その後の方向性の予感も散りばめられている傑作。
12曲25分という”食い足りなさ”もまた、束の間の夏休みのようで愛おしい。




海の日。
色々あって、今日まで4連休+αの夏休みだった。
色々というのは、表面上は色々じゃないけど、僕の頭の中では色々と逡巡があって、結果、ただ単に現実逃避のブレイクとなった。

頭の中にこびりつくよくわからない憂鬱を何杯ものビールとビーチ・ボーイズの音楽で洗い流そうとして、外を闇雲に歩いては追い払おうとして、でもうまく行かなくて、同じところに立ち返る。
そしてまた現実逃避のために夏を消費する。

それもいいことだろう。
明日の憂鬱を今先取りしたってしょうがないものね。

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