The Horrors / Primary Colours (2009)
ゴスとガレージ・パンクに振り切ったデビュー作が一部で評価を得つつも、見た目も音も佇まいもキワモノ扱いされる向きがあったザ・ホラーズは、この2作目で”突然変異”を果たし、各誌が選ぶ2009年ベスト・アルバムでは、NME誌で1位、MOJO誌で2位に選ばれるなど、各所から賛辞を受けた。
UKインディ・ロック界隈の最大勢力であるXL Recordingsにレーベル移籍し、ポーティスヘッドのジェフ・バーロウをプロデューサーに迎えた本作は、ジョイ・ディヴィジョンやザ・キュアー直系のニュー・ウェイヴ・サウンドにMBV的なギター・ノイズによるシューゲイザーや浮遊するシンセ・サウンド、クラウトロック風ビートを全編に大胆に導入。
アートワークにおける光の風合いやアルバム・タイトルの「原色」が示すとおり、漆黒の闇に淡く光が差したような音を、はっきり覚醒した状態で鳴らしているようなイメージ。
アルバム1枚を通して一つのサウンドスケープを描くようなスケール感があるが、
9〜10曲目にかけてのクライマックスではキャッチーさやポジティヴさすら感じさせるなど、楽曲単位でもソングライティングに磨きがかかっている。
前作でのアングラ臭たっぷりの登場から、多種多様なサイケ要素を時代を縦断して取り込み、アート性をも獲得した、2000年代屈指のセカンド・アルバム。
ザ・ホラーズがその名のとおり狂気じみたB級ホラー的なサウンドを鳴らしていた初期から激変を遂げた2ndアルバム。
この後彼らはどんどんポップになっていく。今やホラーズというバンド名からは程遠いところに来ている。
本作におけるクラウトロックやサイケに影響されたポスト・パンク/ニュー・ウェイヴ調のサウンドは初聴時からかなり好みで、以降もわりと頻繁に聴いたものだ。
覚醒したリズムの反復に浮遊するシンセ・サウンドが心地良い逸品。