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The National / Sad Songs for Dirty Lovers (2003)
ザ・ナショナルの2作目。
佳作的な前作に比べるとバンド・サウンドのダイナミズムや表現力が増し、じわじわと伸びていった彼らのキャリアにおいて理想的なセカンド・アルバムといえる。
深く沈み込むようなずっしりとした質感を持つマット・バーニンガーのヴォーカルは情感豊かに、曲によってときに激情を見せ、当初からの落ち着いた雰囲気だけではない重みのあるエモーションを放出している。
本作からマット、デスナー兄弟、デヴェンドーフ兄弟が顔を揃えて布陣が完成。
サウンド面ではフォーキーな音からエレクトロを取り入れた音まで多彩な取り組みを進め、演奏も質実剛健。音に「説得力」がある。
2作目にしてしっかりと地に足の着いた作風で、どこか悟ったような感覚が全体を覆っている本作から彼らは批評家の高い評価を得るようになってくる。
この後EPのリリースを挟み、ブレイク・スルーを果たしたサード・アルバムへと向かう。
1stのときにも書いたけど、ザ・ナショナルの作品は、都会の街中を歩き回っているときに聴くのに最適。
NYはブルックリンを拠点に、都会的な洗練されたロックを聴かせる彼らは、そこまでオルタナティヴっぽくはなく、いかにもインディっていうわけでもなく、かといってアメリカン・ロックというほどルーツ・オリエンテッドじゃない。でも、そのどれもが含まれている。ジャンルがよくわからない不思議なバンドで、その意味では音楽性は違ってもR.E.M.のような独特なスタンスを取れているんだと思う。
自らの音楽性のお披露目的なデビュー作から、その後のキャリアの地歩を固める2作目を経て、その音楽性と実直な姿勢が徐々に評価され、いつの間にかUSロック・シーンにおいて重要な位置を占めることになる。