The Fratellis / Costello Music (2006)
2006年に颯爽と登場したグラスゴー発の3ピース・バンド、ザ・フラテリス。
iPodのCMソングとして一世を風靡した"Flathead"を中心に、ごきげんでキャッチーなポップ・ソングを連発したこのデビュー・アルバムは、新人としては異例の好セールスを記録。
一筋縄ではいかない捻った曲の運び方や、④、⑬などに聴かれる優れたソングライティングのセンス、アートワークからも窺える洒脱さとは裏腹に意外と骨太なジョン・フラテリのしゃがれたヴォーカルなど、一発屋に終わらない多才ぶりを発揮(結果的に今では一発屋の扱いだけど)。グラスゴー産らしい牧歌的な魅力や、クラッシュ風のリズムの導入もある。
UKインディ・ロックにとって幸せな季節となった2000年代中盤。
フラテリスは数多の新星に埋もれることなく、クセと独自性を発揮したバンドだった。
5月の最終日。洗い立てのブルー・ジーンズのようによく晴れた初夏の昼下がり。
今日は仕事を昼上がりで切り上げ、録音した日曜サンデーを聴きながら、新調したMacBookの周辺機器をようやく手に入れ、地元のハンバーガー・ショップの窓際のテーブル席でビールとコーヒーも楽しんでから帰宅。
映画やらTV番組やら小説やら新聞やら、目に入れなきゃいけないものは仕事以上に溜まっているのだが、とりあえず陽気な音楽を喰らいたかったので、帰り道にふと頭の中をよぎったフラテリスを。「課題」をすべて横に追いやり、スピーカーの前に座り、ヴォリュームのつまみを大きく右に捻ってみる。
僕が高校生の頃にフラテリスが流行ったのは、言うまでもなくiPodのCMの効果。やはり上にも書いたように、一発屋感が凄いよね。
でも、シングル曲を中心に猛烈にキャッチーな曲を吐き出している本作においても、ちょっとした叙情を感じさせる瞬間があり、そこでの吟遊詩人っぽさもまたジョン・フラテリの個性。
事実、その後のキャリアにおいても、自分の中から湧き出てきたものを書きつけるように音楽を作っている印象があり、今でもバンドとソロ名義を交えながら、それほど売れなくともコンスタントに新作を出し続けている。