Chvrches / The Bones of What You Believe (2013)
スコットランド・グラスゴー出身のエレポップ・バンド、チャーチズのデビュー・アルバム。
最大の売りはデペッシュ・モード風の80年代エレクトロ・ポップ・サウンドと、ヴォーカルのローレン・メイベリーの可憐さであることは間違いないが、それだけで終わらない音楽的な引き出しの多さも感じさせる逸品。
激キャッチーなメロディ・ラインはローレンのヴォーカルによりポップ&クリアな方向へ増強され、強力なシングル曲群を生み出した。
一方で、示唆に富んだリリックにはジャーナリスト出身のローレンらしい知性とワード・センスが光り、研ぎ澄まされたビートや存在感のあるグルーヴには経験豊富なキャリアを誇るマルチ・プレイヤーのイアン・クックとマーティン・ドハーティの力量が表れている。
ダーク&アグレッシヴなサウンドによる鋭利さと重量感、ポップで明瞭な浮遊感との対比もバランス良く的確で、この手のサウンドの新鮮味が薄れてきた2010年代においても、しっかりとした作りの音楽は耳に残ることを証明した。
似た感覚の曲が多い(がどれもフックがありクセになる)ところも伸びしろ十分で、次作以降更なる成長をみせることになる。
2013年は僕が本格的に社会に出た年で、同時に多くの新譜に心躍らせた1年だった。
その中でもチャーチズは印象的だった。
御多分に洩れず、ローレン・メイベリーの可憐さ、可愛さに心を奪われた僕は、キャッチーすぎる曲にもハマり、この時期ずっとチャーチズばかり聴いていた。
女性蔑視やルッキズムをきっぱり拒絶し、自身の考えを説得力溢れる文章で毅然と綴り、一方で以前所属していたインディ・バンドで無邪気にドラムを叩き歌っていた彼女の姿が今でも記憶に残っている。
芯が強くて可憐で音楽と文章の才能があるという、理想像を体現していたように思えた。(こういうことを書くこと自体も本人に失礼な気がしてきたが、当時そう思っちゃったんだからしょうがない。)
次作以降、さらにポップスとしての強度を高めていくチャーチズは、クールさと音楽オタクならではの情熱とともに、グラスゴーのエレポップ・バンドというある種の異端からポップ・ミュージックの王道へと突き進んでいく。