見出し画像

The City / Now That Everything Has Been Said (1968)

のちに70年代を代表するシンガー・ソングライターとしても名を上げることになるキャロル・キングのソロ・デビュー前の前身バンドにおける作品。

当時彼女は60年代の「職業作曲家」時代の公私に渡るパートナーだったジェリー・ゴフィンとのコンビ解消と離婚を経て、新たなパートナー(こちらも公私とも)となるチャールズ・ラーキー(ジェイムス・テイラーのバンド仲間だった)をベーシスト、70年代のSSWブームを下支えしたダニー・”クーチ”・コーチマーをギタリスト、凄腕のジミー・ゴードンをドラマー(正式メンバーではなかった模様)、そして旧知のルー・アドラーをプロデューサーに迎え、新天地L.A.でレコーディングを敢行。

新バンド”ザ・シティ”名義での唯一のレコードとなる本作は、まだ自信を持ち切れずとも元来の魅力が光るキャロルの透徹した歌声を実力派の演奏陣が支えており、12曲中11曲を占めるキャロルが手掛けた楽曲には、この頃から既に珠玉のメロディが詰まっている。

地味ながらも確固たる音楽性と信念に貫かれた本作は、販売元のゴタゴタで上手く世に出回らなかったのが悔やまれる、まさに”幻の名盤”。紛れもなく「Tapestry(つづれおり)」へと繋がっている。



名曲「スノウ・クイーン」から始まるキャロル・キングの「プレ・デビュー」期のバンド作。
バンド編成、それも手練れのミュージシャンをバックに置いているだけに、カントリーやフォーク、ブルーズなどのアメリカン・ルーツに根差したアメリカン・ロック(その意味では時代を先取りしている)が、控えめながら的確な力感で成熟した演奏で鳴らされている。
そしてキャロルの歌声とメロディは、この頃から丁寧で繊細で、細部まで意識が行き届いている。



12月。
最近は飲酒量が減った代わりに、コーヒーばかり飲む日々。
冬の厳しい寒さの始まりと、かつてなく”凪”だった一年の終盤。
いつものように自宅に引きこもり、新聞を広げながら音楽を聴き、手を温めながらコーヒーを飲み続ける週末。
何かを得ているような、同時に何もかもが失われているような、安堵感と焦燥感が複雑に入り混じる年の瀬です。

いいなと思ったら応援しよう!