Ásgeir Trausti / Dýrð í dauðaþögn (2012)
ビョークやシガー・ロスらを輩出したアイスランドの人口40人程度の小さな集落出身の新星シンガー・ソングライター、アウスゲイルの母国でのデビュー・アルバム。
ボン・イヴェールやジェイムス・ブレイクらとも比較される幽玄で繊細で清廉なフォーク・サウンド(と時折挟み込まれる滑らかなエレクトロ・サウンド)、透明感のある美しいメロディ、シガー・ロス直系のアイスランドらしい雄大なスケール感、マムフォード&サンズを彷彿させる昂揚感が光る逸品で、父が詞を書き、14歳離れた兄(同国内で別バンドで活動中)がギターを担当しているからなのか、冷涼な空気感と孤高の揺らぎの中にポジティヴな暖かさが宿る。
後に英語版で再リリースされる本作だが、アイスランド語で歌われるこの原盤の方が神秘性とフラジャイルな響きをより感じられる。
冬がよく似合うアルバム。同時に暖かな陽光を想起させるのも本作の特徴。
聴いていると「この人絶対良い人なんだろうな」と思わされる。
4曲目なんて、ボサノヴァから始まる甘く柔らかなエレクトロ・ポップで、一聴しただけで口ずさみたくなるような名曲だもんね。何て歌ってるかわからないけど、それでいいのさ。
風邪気味の体調不良が1週間近く続き、先週の水曜、木曜と夜に咳が出て眠れない日が続き、精神的にも限界が来たので金曜にまた仕事を休んで病院へ。
診断基準の目安値より大幅に高い数値を叩き出した僕は晴れて喘息と診断されたのでした…。
ここ何年か、たまに同じようなことになってたから自分の中で気づいてはいたけど、こうして診断されるとかえってすっきりするもので、憑き物が取れたように、金曜の夜からは気管がむず痒くても咳の波が押し寄せても、落ち着いて気を持ち直して眠ることができた。夜に眠れるってのは精神的にも重要なんだなと。
ハイリー・センシティヴな要素に気管支まで加わった僕は、現世がさらに生きにくくなったわけだけど、生きにくいのをわかった上で生きるのは案外気が楽なもので、大変だけどしょうがないよねっていう、ある種達観した心持ちで日常に向かうことになる。
あとはその中で「生きててよかった…」と心の底から湧き上がる悦びに浸れる瞬間をいかに味わっていけるか。去年(とはいっても公開はちょっと前だけど)最も感銘を受けた映画の一つ「メランコリック」のラスト・シーンみたいにね。
寒さが和らいだ日曜の昼。日の光が差し込む部屋の中、僕は奇妙な充足感とともに安息を。
ずっと続いていた喉の痛みも倦怠感も気づけばどこかへ行ってしまったようだ。
明日からの仕事の憂鬱も生きにくさの一つの要素でしかない。
自分自身からは一生逃れられないのだから、なんとか乗りこなしていこうっと。