The Clash / Give 'Em Enough Rope (1978)
ザ・クラッシュのセカンド・アルバムは、前作から1年半以上の空白期間を経てリリースされた。
アメリカ市場を意識して制作されたこともあり、バンド・サウンドは大幅に強度を上げ、前作の鋭さや粗さよりも、ハード・ロック的な力強さと音の厚みをアルバム全体にもたらした。
初期の彼らを象徴するレゲエ調の曲こそほとんどないものの、パンクの疾走感は健在。
楽曲の根幹にあるキャッチーなメロディは紛れもなくブリティッシュ・ロックの伝統を継いでおり、パンクの衝動性や攻撃性だけでなく、パブ・ロックにルーツを持つジョー・ストラマーとミック・ジョーンズのポップ・センスが光る。
歳を重ねることを意識した”Stay Free”や未来に目を向けた"All the Young Punks"など、若さだけではない成熟の跡も。
ファースト・アルバムからの音楽性の変化によって、”狭義の”パンク・ファンからは否定的に捉えられもしたが、彼らのパンクスとしてのアティテュードは変わることなく、2作目にして早くも彼らはパンク・ムーヴメントの範疇に留まることなく”次”へと向かっていた。
パンクの代名詞といえる前作とロックの金字塔となる次作を繋ぐ過渡期の作品ながら、”後退”と取られることをも恐れぬ姿勢で闘ったことで、彼らはパンクの衰退とともに散っていった多くのパンク・バンドが見られなかった”その先”を見ることになる。
今年の年末は「ロンドン・コーリング」でいこうと思ったら、その前のセカンドをまだ取り上げていないことに気づいたので慌てて取り掛かる。
この2作目はバンド・サウンドの厚みと明瞭さでは前作を上回りつつ、パンクとしてのエッジや楽曲の良さでは前作に及んでいない印象が強い。
その意味では確かに過渡期の佳作といった印象だが、翌年にロックの歴史に名を残す大傑作を作り上げる前段階として、本作での「ロック化」は正しい進化の途中だったのだろう。
このあたりはザ・ジャムのアルバムごとの変遷と似ている。