Beach House / Teen Dream (2010)
’00年代から’10年代初頭にかけてのドリーム・ポップ・ブームの決定打となったビーチ・ハウスのサード・アルバム「ティーン・ドリーム」。
タイトルがもうドリーム・ポップそのものだし、内容も本当に決定版的で、音の浮遊感や”白昼夢感”が素晴らしく、じっくりと浸れて現実逃避できる逸品。
ヴィクトリア・ルグランの高低音を使い分けるハスキーで透明感のある歌声はサウンドのリヴァーブに埋もれることなく、その存在感は際立っている。
数多くのUSインディ・バンドを手掛けてきた同郷のクリス・コーディーとの共同プロデュースの下、夢見心地だがどこか陰影のある音像は全編で統一されているが、どの曲もメロディ・ラインがうっとりするほど美しく、ヴィクトリアと相方アレックス・スカリーが弾くギターやオルガンなどの音色もリヴァーブの中で溶け合い、本作から多用されるようになったドラムスによる推進力も追い風に、メランコリックなだけではない、ポップ・ミュージックとしての強力な求心力が感じられる。
各媒体の2010年ベスト・アルバムに軒並み選出された、ビーチ・ハウスの”グレイテスト・ヒッツ”さながらの傑作。
これこそがこの時代の心象風景だったのだろう。
一時期のブームは去っても、ファッションではない”真の”ドリーム・ポップだけは、その残響が心地良い倦怠感とともに漂い続ける。
精神的に不安定だった20代(今だって安定はしていないけど)に、不安定に揺らいだまま聴いていたこのアルバムは、抵抗なくスッと腑に落ちる感覚があった愛聴盤で、思い出の1枚。
ひっそりと泣きながら、そのうち自分でもなぜ泣いているのかわからなくなり、いつの間にかすっきりしてるような、そんな感覚。
1月最後の日曜日。今月もたっぷり休んだな。来月もたっぷり休もうっと。
気力を充実させて、少しでも前へ。