The Sundays / Reading, Writing and Arithmetic (1990)
”ザ・スミスの後継者”として期待されたザ・サンデイズのラフ・トレードからのファースト・アルバム。
ヴォーカルのハリエット・ウィーラーの伸びやかで透き通った歌声が美しく力強く可憐に響き、デヴィッド・ガヴリンのジョニー・マー直系のギター・プレイや、2人が生み出す透徹したメロディ、「スミス×コクトー・ツインズ」の如く繊細で静謐な音、キレの良いリズム・セクションと絡むことで、ギター・ポップの上澄み部分を凝縮したような、どこまでも透明感のある音像が広がる。
”本家”のギター・ポップが下火になった90年代、シューゲイザーやマッドチェスター、そしてグランジへとロック・シーンが移ろいゆく中、商業的成功には目もくれずに自らの音だけを求め、アマチュアリズムのまま差し出されたサンデイズの最初の傑作は、結果的にUKチャートで4位を記録するなど、リスナーの支持も得ることになった。
”インディの良心”を感じられ、モリッシーも愛したこのレコードは、35年が経った今でもエヴァーグリーンな輝きを放ち続けている。
今日は90年代最初の名盤を。
スミス解散の衝撃の後、圧倒的な欠落感に苛まれてきたスミス・ファンにとって、同じラフ・トレードからデビューしたサンデイズの存在は救いになったのではないか。
スミス直系のギター・ポップと、スミスに負けないくらいに美しいメロディに、モリッシーとの比較をしなくて済む(←これが案外大きかったのかも)可憐な女性ヴォーカルがよく映える。
ハリエットの可憐さと力強さと美しさと艶やかさが共存した歌声は、近年だとチャーチズのローレン・メイベリーにかなり近い雰囲気がある。
ポップ・ミュージックとして聴きやすい上に、聴き込みに耐えうる芸術性とポップスとしての強度も持ち合わせている、永遠の愛聴盤。