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Buddy Holly / The Best of Buddy Holly : From The Original Master Tapes (1985)
22歳で悲劇の死を遂げるまで、活動期間はわずか2年余りでありながら、ビートルズやストーンズをはじめ、その後のロックの歴史に多大な影響を与えたバディ・ホリー。
独特のしゃくりあげる歌声と躍動するビート、キレの良いギター、キャッチーなメロディ、ザ・クリケッツ(このバンド名はビートルズの命名の元になった)との一体感のあるバンド・サウンドは、後のロックンロール・バンドの礎となっている。
そして黒縁眼鏡にスーツという当時としては斬新なスタイルは、”普通”の青年でもこんなにも刺激的で昂揚感に満ちたロックンロールができるのだと身をもって示すとともに、視力の悪かったジョン・レノン少年に眼鏡をかけてもロックをやれるという勇気を与えた(ちなみにビートルズの前身バンド、クオリーメン時代に最初に録音したのが本作の1曲目”That'll Be The Day”らしい)。
セクシーでもワイルドでもゴージャスでもないけれど、シンプルなロックンロールにスマートな創意工夫と自然な独自色を付け足し、クールなひねりを加え、オリジナリティと魅力溢れるポップ・ミュージックとして生まれ変わらせたバディは、ロックンロールのオリジネーターの中でも異彩を放ち、夭逝の天才として後世に名を残した。
「音楽が死んだ日」とも称される1959年2月3日から66年。
当時人気絶頂だったミュージシャン達の死は大きな哀しみと喪失だったことだろう。
しかし、実際には音楽は死ぬどころか、彼らの遺志を受け継いで60年代以降さらに成長し、やがてロック・ミュージックは20世紀最大のカルチャーにまで発展していくことになる。
原点の50年代の音楽をもっと深掘りしたいとあらためて思う。
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ロックンロールに希望の音(=ポップなメロディ)をもたらしたバディ・ホリーは個人的には偉大なロック創始者達の中でも一番好き。
中でも”That'll Be The Day"で軽快に始まり"True Love Ways"でしっとりと締めるこのベスト盤は言うことなし。
ビートルズやストーンズらのカヴァーでもお馴染みの曲から、もはやスタンダードといえる普遍的な名曲まで、とにかく曲がいい。
立て続けに飛行機事故のニュースが目立つ時期だけに少し気が引けたけど、バディ・ホリーの穏やかな声を聴いていたら月曜からなんだか幸せな気分になれたよ。ありがとう。
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