Mumford & Sons / Sigh No More (2009)
ロンドンのフォーク・シーンから登場した中では最大(そしてフォーク系バンドとしては異例)のセールス(全世界で800万枚、英米チャート共に2位)を上げたマムフォード&サンズのファースト・アルバム。
富裕層の生まれで、名門パブリック・スクール出身で、フロントマンのマーカス・マムフォードはのちに女優のキャリー・マリガンと結婚…と、当代きっての”鼻持ちならない”バンドとして賛否両論を呼ぶ彼らだが、このデビュー・アルバムでは、名手マーカス・ドラヴスをプロデューサーに迎え、彼が手掛けたアーケイド・ファイアのようにアンセミックなスケール感のあるサウンドと骨太で熱いエモーションを爆発させている。
文学的な香りと翳りを感じさせるメロディは繊細だが、気骨溢れる歌唱と自信に満ちた演奏が圧倒的なエネルギーとバイタリティをもたらし、カントリーやブルーグラスに裏打ちされた音楽性がノスタルジックにではなくリアルにモダンに響いている。
2000年代終盤から英米のロック・シーンに大きな旋風を巻き起こしたマムフォード&サンズのデビュー盤。
"Winter Winds"が象徴するように、秋から冬にかけての寒々とした雰囲気の中、温かみのあるサウンドと熱いエモーションが、フォークの繊細さとロックのダイナミズムでもって放出される彼らの音楽性は、当時他にはない新風を吹き込み、彼ら自身にとってもおそらく望外だったであろう大きな反響を得た。
ビッグなサウンドが酷評されることもあるが、狙った音というより、彼らはナチュラルにこういう音楽が好きで、気づいたら勝手に売れてたという感じなんだろうな。
1〜2作目は寒い時期によく似合う力作だと思う。