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Tom Waits / The Heart of Saturday Night (1974)
都会の喧騒を通して人間の業を描くトム・ウェイツが、シンガー・ソングライターとしてのブレイク・スルーを果たしたセカンド・アルバム「土曜日の夜」。
本作からタッグを組むプロデューサーのボーンズ・ハウとともに前作で不足していたジャズ要素を強め、トムが求める音楽性を獲得した重要作にして傑作。
場末のバー、街角の娼婦、路地裏の酔っ払い。終夜営業のダイナーの常連客とウェイトレス。よれよれのジャケットと煙草の煙とウイスキーのグラス。
トムの嗄れた濁声と、ときにレイ・チャールズやディランやスプリングスティーンをも思わせる歌い回し、ピアノとギター/ベース/ドラムスに加えてサックスの流麗で哀しげな音色、そして街ゆく人々の土曜の夜の日常を優しく見つめた詞によって、アルバム・ジャケットのイメージそのままの世界観が立ち上がる。
前作の延長線上にある哀愁に満ちた美しいバラードやスポークン・ワード、ジャジーな演奏を交えながら、虚ろで寂れた人生を温かく淡々と切り取り、その中に鈍く光る人間の業を活写するトム・ウェイツ。
これからも多くの人々のサタデイ・ナイトに切なくも親密に寄り添い続けるだろう。
この如何ともしがたい人生を通してトム・ウェイツをこよなく愛している僕にとって、デビュー・アルバム「クロージング・タイム」は人生でトップ・クラスに好きなアルバムだし、このセカンド・アルバムほど土曜日の夜にぴったりの音楽はないと思う。
ここで聴ける音楽と市井の人々の物語は、業の肯定そのもの。
こういう作品があるおかげで僕もなんとか生きていける。
今年のKOCも終わり、土曜の深夜にかけてウイスキーを飲みながらトム・ウェイツを聴き、そして眠る。
ラブレターズの優勝は嬉しい。
笑いの量も設定の斬新さも豊富な展開も大事だけど、それにも増してエモーションの乗り方が一番だったように感じたし、何より楽しそうだった。
それと10年以上愛用してきたCDコンポが壊れたっぽいな…。
悲しい。