見出し画像

The Libertines / The Libertines (2004)

2000年代UKロックの”救世主”ザ・リバティーンズのセカンド・アルバム。

このバンドはピート・ドハーティ&カール・バラーのソングライター/フロントマン・コンビの公私両面での関係性と悲喜交々のストーリーにおいて語られることが多く、実際本作でもドラッグ禍からの復活と失敗を繰り返し続けるピートと、彼のバンドへの復帰を待ち続けるカールとの間の愛憎入り乱れた感情が渦巻き、2人の心情とストーリーが詞にも如実に描かれている(それを2人が自ら歌っているってのも凄い)。

バンドの看板である2人の激しく熱い掛け合いは、本作に至っては儚さや悲哀までも漂い、それもまたリバティーンズの魅力ではあるのだが、同時にバンドが終焉へと向かっていることも示唆している。

音楽的には"Can't Stand Me Now"やボーナストラックに収録の"Don't Look Back into the Sun"(前年リリースのシングル)など、彼ら2人にしか鳴らせないであろう、狂おしいほどに美しく熱く、刹那的でマジカルなメロディを持った名曲の存在はもちろん、よろけながらつんのめりながら疾走するバンド・サウンドはゲイリー・パウエル&ジョン・ハッサールの尽力もあって厚みと安定感を増し、ファースト・アルバムでのパンク寄りの作風から、古き良きフォークやカントリー、ロックンロール、トラッドまで幅を広げている。

リバティーンズは2枚のアルバムだけでロックの歴史に一つの時代を築き、ピート&カールはビートルズやストーンズ、クラッシュやスミスやローゼズらUKロック伝統のソングライター・ユニットの系譜に刻まれることとなった。





9月。今年も残り3分の1か。

このところオアシスの再結成が話題だけど、この十数年の間に、ストーン・ローゼズもブラーも、そしてこのリバティーンズも奇跡的なリユニオンを果たしている(個人的にはブラーが一番感動的だった)。
さらにブラーとリバティーンズに至ってはニュー・アルバムまで出してくれて、なかなかライヴに行けない身としてはありがたいかぎり。
となると後はスミスだけど、それはさすがにないよね…。あったら泣いちゃうね。

というわけでリリース20周年を迎えるリバティーンズのセカンド・アルバム。
その後10年以上に渡って「ラスト・アルバム」であり続けた本作だけど、その後メンバー4人とも各々の活動を続けたため、リバティーンズ時代よりむしろ音楽的な情報と話題が増えていった印象。
デビュー作での「パンク再興!」や「ロックンロール・リヴァイヴァルがUKからも!」的な扱いから、この2作目ではピートの趣味性を反映してか、より多様な楽曲を取り入れ、それを前よりもかっちりしたサウンドで表現しているように感じる。

上にも書いた"Can't Stand Me Now"や"Don't Look Back into the Sun"もそうだし、"Music When the Lights Go Out"とか"What Katie Did"あたりからも漂うロマンティシズムは極上で、ピート・ドハーティという男の天賦の才にはいつもやられてしまう。

アルバム・ジャケットから分かるように、リバティーンズといえばピート&カールなわけだけど、裏ジャケのゲイリー・パウエルとジョン・ハッサール(このリズム隊2人の上手さが本作の完成度を高めているのも忘れてはいけない)も含めた写真における彼らの表情や服装もまた彼らを象徴していると思う。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?