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Van Morrison / Moondance (1970)
ヴァン・モリソンの歴史的名盤「アストラル・ウィークス」に続くサード・アルバムは、またもや名盤となった「ムーンダンス」。
アメリカに移り住み自らの音楽的ルーツを辿ったヴァンが、リズム&ブルース、カントリー、フォーク、ソウル、ジャズ、ゴスペルなどを有機的に取り入れた美しく力強く豊穣な10曲が並ぶ圧巻の内容。
前作のスピリチュアルで澄んだ音楽性には崇高な雰囲気が漂っていたが、本作はその気高さはそのままに、新天地アメリカの大地にぐっと腰を落ち着けたような、どっしりと地に足の着いた音が心地良く、これまでになく親密でキャッチーな印象すら与える。
後に「ラスト・ワルツ」でも共演することになるザ・バンドの流れを汲むアーシーでコクのある音楽性を吸収し、ブラック・ミュージックにも自然体で接近し、タイトル曲では(スティングの先駆けのような)洗練されたジャズまで聴かせる。
自らの理想の音楽を求道者の如く真摯に愚直に追い求め、初めてセルフ・プロデュースにも挑戦し、時代とも(おそらく無意識に)共鳴しながら孤高の存在となっていったヴァンは当時未だ25歳。
歌声はミック・ジャガーをアメリカ風に濃厚に煮しめたような旨味と深みを増し、無常感や慕情を綴った楽曲はどれも味わい深く、心に染み渡る。
前作に続き本作もリリース当初は売れなかったものの、徐々にセールスを上げていき、ソロとしては初めてヒット作といえる結果を収めた。
今となっては2作連続でロックの名盤として、そして”アイリッシュが描き出したアメリカン・ロックの理想郷”として、半世紀以上が過ぎた現代でも永く聴き継がれている。
本当に素晴らしいアルバムだなとあらためて感服。
美しい田園風景が頭に浮かぶとともに、そこに生きる人間の心象風景が透けて見えるような、哀しくとも輝かしい音が生き生きと鳴らされている。
全作品を聴き通したわけではないけど、ヴァン・モリソン史上最もポップ・ミュージックとしての強度の高いレコードなのかなと。
(ちなみに「アストラル・ウィークス」は芸術性と精神性が最も高い作品)
ザ・バンドの1〜2作目やニール・ヤングの「アフター・ザ・ゴールドラッシュ」あたりにも比肩するアメリカン・ロックの傑作。
それをアイルランド人のヴァンが成し遂げた功績も大きい。
色々あったけど結果的にとても充実した1月を終え、2月に突入。
今月も充実した月にしよう。体調だけは気をつけよう。