Prince / Prince (1979)
”天才少年”のデビュー作だった前作が、セールス的には芳しくなかったプリンスだが、自身の名を冠したこのセカンド・アルバムで勝負をかけ、見事に売り上げとレーベルの信頼を勝ち取った。
ヒット狙いの楽曲を、一人だけで、わずか6週間で制作してきっちり結果を出し、プリンスの破格の才能を示した本作は、前作の延長のディスコ/ソウル/ファンク/ロックを内包したプリンスの音(即ちミネアポリス・サウンド)が、洗練されて確立された印象。
のちのエレクトロ/ハウス勢への影響源ともなったリズムとグルーヴ、シンセ・サウンド、ソフトでエッジのあるギターが心地良く、バラードも柔らかく美しい。
完成度では当然まだスティーヴィー・ワンダーやマイケル・ジャクソンの域には達していないが、21才にしてセルフ・プロデュースで完全自作する自由を得て、それを最大限に活かして結果を残したプリンス。
これがアーティストとしての真のスタート地点といえる。
プリンスといえばその天才的な創造性やポップ・センスと、圧倒的なセクシュアリティ、そしてジャケットのいかがわしさ…。
この2作目は彼のセクシュアルで変態っぽさが露出した最初の作品かもしれない。
そして内容はこの時点でもうプリンスそのもの。基本的にはこのスタイルに、スケール感やダイナミズム、ストーリー性やコンセプトを増していく感じか。
プリンス印の官能的なファルセット・ヴォーカルに、シルキーでウェットなメロディと艶やかなシンセを響かせ、たまにハード・ロックばりのギター・ソロをかましながら、自分だけの表現を磨き続けていく。