Galaxie 500 / On Fire (1989)
ボストンにて結成され、1980年代終わりにひっそりと登場し、わずか4年余りでその活動を終えたギャラクシー500。
デビュー作の翌年にリリースされたセカンド・アルバムは、彼らの繊細に揺らぐ”青白い炎”のような音が、脆く儚く、前作以上に美しい結晶となった傑作。
ヴェルヴェット・アンダーグラウンド直系の朧げなサイケの浮遊感や甘美なメロディ、ジーザス&メリー・チェインを彷彿させる彼岸で響くような白昼夢的ノイズの中、決して巧くはない演奏や不安定で調子外れなディーン・ウェアハムのヴォーカル、前作より輪郭を明確にしたデーモン・クルコフスキーのドラムス、ナオミ・ヤンの清涼感のあるコーラスとボトムスを支えるベースが、不恰好だけど”あるべきところにある”ような自然な形で鳴らされている。
本編最後ではジョージ・ハリスンを、ボーナス・トラックではレッド・クレイオラやニュー・オーダー/ジョイ・ディヴィジョンをカヴァーしているが、そのどれも彼らならではの美しい残響を聴かせている。
このどこまでも儚く美しいレコードは、いつまでも聴いていたくなる屹立した魅力を放ち続け、今までもこれからもひっそりと大切に聴き継がれていることだろう。
僕の生まれ年でもある1989年の作品の中でも、ストーン・ローゼズに次ぐお気に入りがこのギャラクシー500のセカンド・アルバム。
ファースト・アルバムからわずか1年で、完成度は高まる一方、このバンドの美学は健在で、おそらく無意識のうちにそれが全編に刻み込まれている。
きっと僕のメンタリティにいちばんフィットする音楽性なんだろうな。聴いていると安心する。