BAYCの歴史+ApeCoinの戦略分析(前半)
NFTmeijinのナオトです。様々なNFTを分析することを趣味として生活しています。第一回となる今回は2021年の顔として有名な
BAYC(Bored Ape Yacht Club)
です。
2021年最も大きく成長し、定価0.08ETHのNFTが2022年4月5日現在111ETHの値段をつけています。
BAYCはホワイトペーパーがないので、BAYCのdiscordや海外Podcast、海外ブログを読み解くことから始めましょう。
この分析を通じNFTの注目ポイント、情報の読み解き方を学び、自身のNFTにどう活かすのかの参考にして頂ければと思います。前半(本記事)ではBAYCがどうやって今のように巨大化したかについて解説し、後半ではApeCoinの狙いについて解説します。
時系列順のできごと
2021/4/23
BAYCがPresaleで販売されました。しかし、定価0.08ETHにもかかわらず、このとき650/10000個しか売れなかったのはご存知でしょうか?
下記がPresale終了3時間前のDiscordですが、リアクションが7しかありません。
2021/5/1
Honorary Ape(https://opensea.io/collection/bayc-honorary-ape-members-club; BAYCが身内用に作ったNFT)をインフルエンサーのj1mmy.ethが見つけ、BAYCのアートを気に入りました。ここでBAYCを100体、その後追加で320体を購入しました。当時、j1mmyはフォロワー数万人で、Cryptoコミュニティのなかではそこそこの有名人でした。
このフォロワーに対してBAYCのことを繰り返しツイートすることでCryptoコミュニティ内でBAYCの知名度を上げることに成功しました。
その後、DMでPranksy(NBA Topshotコレクター)に連絡し、BAYCの宣伝を行いました。それを受けてPranksyは250体を購入しています。この時点で1250体が売れていました。その後、J1mmyとPranksyが買いを煽るツイートを連発し、12時間で売り切れました。
J1mmyは一見運営側のようにみえますが、運営側とは繋がりが全くなかったことをインタビューで証言しています。つまり、J1mmyの最初の意図としては単にアートが気に入ったというのが着火点になったと考えられます。
その後、J1mmyとPranskyは非公式のマーケティング活動として、Steve AokiやJosh HartなどのセレブにBAYCを売り始めました。
2021/5/26
この時点でAverage Priceは0.6ETHでしたが、6/26には6ETHまで上昇しています。
2021/6/18
BAYCのホルダー向けにBAKC(https://opensea.io/collection/bored-ape-kennel-club)をドロップしました。BAYCのファウンダーによると「継続的な成長と価値創造が重要」と考え、BAKCをリリースしたようです。
これと並行してJ1mmyは自分の所持しているBAYCを100体無料でGiveawayし始めました。仮に1体あたり6ETHだとすると600ETH=1.8億円分の無料提供になります。個人的には、BAYCが大成功した理由はここにあるのではないかと思っています。価格チャートを見ても7月後半から9月初頭にかけて価格は大きく上がっています。
J1mmyはこの動きの理由について、「Why? Because I can hack into people’s brains」(なぜって?それはみんなの脳をハックするためだよ)とYoutubeインタビューで答えています。これはザイオンス効果=「同じものに接する回数が増えるほど、その対象に対して好印象を持つことになる効果」を狙ったということです。
特に有名人・セレブに対してもNFTをGiveawayすることで、彼らがSNSでBAYCを露出させることにより、価値を上げていくという好循環を形成することに成功しました。Justin Bieberもこの流れのなかで購入し、さらに価格の上昇に寄与しています。
2021/8/28
第3弾コレクションとしてMutant Ape Yacht Club(MAYC; https://opensea.io/collection/mutant-ape-yacht-club)がリリースされました。20000体リリースされ、うち10000体はBAYCホルダーにエアドロされています。残り10000体はダッチオークション形式で3ETHから販売されました。
2021/8/29
Steph CurryがBAYCを購入し、更に注目度が上がる。
2021/9/9
サザビーズオークションで101点のBAYCが落札された。合計2440万ドル=約26億円で落札されました。このニュースでBAYCの名前はさらに有名になりましたが、長期的な価格変動には大きな影響を与えていません。
2021/9/22
Roadmap 2.0公開
ここで右上にちらりとApeCoinのもととなるDAOが掲載されています。ApeCoinの狙いについては後半の記事で解説します。
2021/11/12
NFT決済サービスのMoonpayがBAYCとコラボしました。このあたりからリアル世界のサービスとBAYCがコラボする様子がよく見受けられるようになります。
2021/12
BAYCコミュニティのための限定パーティApe Festが主催されました。
最後にOMR.comが作ったBAYCのステークホルダー図を示します。
Take home message
初期において、BAYCの運営以上にインフルエンサーが大きく寄与した
カスケード式の話題提供が必要
ザイオンス効果が極めて重要
謝辞
主に欧米圏のBAYCのインタビュー資料などを多数参考にさせていただきました。ここに謝辞を申し上げます。
また、私はBAYCをリアルタイムで見ていたわけではない部分が多く含まれます。もしも間違い等ございましたら、私のTwitterまでDMなどでご連絡いただけますと幸いです。日本のNFTコミュニティにとって、BAYCの歴史を学ぶことでNFTをより良い方向に持っていけましたらこれ以上に嬉しいことはありません。