日本におけるNFT市場規模と、海外展開の困難さと解決策
NFTmeijinのナオトです。様々なNFTを分析することを趣味として生活しています。第3回となる今回は特定のNFTではなく、ジェネラティブNFTの全体像について解説します。特に
日本のNFT市場規模
最近良く見られる日本発のNFTの海外展開の困難さと、その解決策
について解説します
TL;TR
日本のNFT市場規模はグローバルの高々3パーセント程度。日本人をメインターゲットに設定すると、市場全体の95%以上を見捨てることになる
初期に国内をターゲットにし、その後海外展開をするというのは最近のNFTマーケット戦略から考えて無理筋。最初から海外を狙う以外にない
NFT運営側に求められる要件として、3種類のスキル x ビジネスレベル以上の英語能力(AMAに対応できるレベル)が必須
日本の市場規模
OpenSeaなどで国別の市場規模のデータは公開されていませんが、Metamaskの月別アクティブユーザー数(MAU)は非公式データがsimilarwebから公開されています。
これによるとMetamaskはMAUが1000万を超えており、トラフィックベースでのデスクトップユーザーのトップ5カ国は
アメリカ 16.9%
インド 5.3%
ロシア 4.5%
ブラジル 3.9%
インドネシア 2.9%
となっています。日本のユーザーが世界に占める割合はたった0.7%です。日本は比較的裕福な国ではありますが、仮に他の国の5倍のSales Per Customerだと仮定しても(この仮定もだいぶ大きく見積もっていると思いますが)、たかだか3.5%となります。そのため日本の市場規模はグローバル市場の数パーセント程度とみておいて良いでしょう。以下ではグローバル市場の3%と仮定して話を進めます。
OpenSeaのグローバル全体での情報はいくつか公開されています。Openseaのグローバル全体の市場規模は170億ドル規模とされており、2022年1月には月間50億ドルの取引量を記録しています。単純に上記と合わせて考えると、日本人の取引量はおよそ月間1.5億ドル=180億円程度ということになります。
グローバル市場の3%以下であることをサポートする例としてNeo Tokyo Punks(以下NTP)が挙げられます。NTPは日本発でOpenseaのトレンド入りを果たした2022年において素晴らしい成果を挙げたNFTです。現在はフロア価格が0.295ETHとなっていますが、ピーク値のフロア価格は1ETH前後をつけました。実はこの価格は日本の市場規模を考えると非常に合理的な数値になっています。現在世界で最も人気の高いNFTであるBAYCのフロア価格は140ETHです。
市場規模とフロア価格に線形関係があると仮定すると
(日本で成功したNFTのフロア価格)=(海外で成功したNFTのフロア価格)x(日本の市場規模)/(海外の市場規模)
という数式が成り立ちます。
この数値から考えてみると、日本の市場規模は全体の3%以下なので140*0.03 = 4ETHとなります。この数字はNTPのピークフロア価格と一致してはいませんが、おおよそ桁数は同じです。そのためNTPが今後日本市場にこだわっている限りピークフロア価格が4ETHを上回る可能性は低いです(もちろんこのレベルになると海外投資家が入ってくるためそこまで単純ではないです)。もしも日本のマーケット規模を0.7%で推計するのであれば140*0.007=0.91ETHと非常によく一致しています。
このように日本の市場規模はグローバル市場のたかだか数パーセントしかないため、日本人だけを狙う戦略を選択すると、それ以外の95%以上を取りこぼすことになります。経済的な成功を重視するNFTであれば、このような戦略はありえません。このような背景から最近は海外市場を狙う日本のNFTが増えています。
日本から始めるか海外から始めるか
では、海外を狙うにはどういう戦略を取るべきでしょうか?
よくある戦略としては2パターンに切り分けができます。
まず日本人を対象にしてNFTを成功させ、その後海外へ進出する
最初から海外を狙う
前者の代表例がNTPで、後者の代表例がMurakami.FlowersやGalverseになるでしょう(Galverseが日本発NFTではないという指摘はありますが)。
しかしながら最近のNFTマーケット戦略とDiscord運営を考えると、2の戦略のみが正しく、1は誤った戦略です。以下ではその代表的な理由を2つ説明します。
理由1:WLなしにマーケティングをすることは難しい
1つ目はマーケティング上の理由です。
まず大前提として、近年のNFTマーケ戦略ではWL配布によるマーケティングを欠かすことができません。有名NFTやインフルエンサーにWLを提供することで宣伝や購入をしてもらう必要があるからです。
まず日本人向けにNFTを成功させるという戦略をとる場合、その段階でそのNFTの大部分を販売することになります。TreasuryにNFTトークンが残っていたとしてもせいぜい全体の10-20%でしょう。そして日本人向けに販売する場合、完売を狙うために、たいていボリュームを少なく設定しがちです。
この状況では十分なWLを用意することはできないので、海外展開をするために必要なWLを提供することができません。WLは実弾のようなものです。実弾がない状態で戦争に勝利することはできません。
海外展開向けを最初から考えて「海外用のWL分を確保しておく」ということも可能ではありますが、それをするなら最初から海外展開をしたほうが良いでしょう。
第二弾のNFTをリリースして、そのNFTを元に海外展開をすると考える方もいるかもしれません。しかし、この場合もうまくいきません。なぜならほぼすべてのNFTは第一弾より第二弾のほうが価格と注目度が下がるからです。
理由2:日本語話者が多いコミュニティから英語話者が多いコミュニティに変化することは難しい
2つ目はDiscord運営上の問題です。
NFTを運営するうえでDiscordを欠かすことはできません。そしてDiscordの命はホルダーを含めた参加者です。日本人をメインターゲットにしている場合、Discordでの会話のほとんどが日本語で行われることになります。もしかするとアナウンスも日本語で行われているかもしれませんし、チャンネル名も日本語だったりするかもしれません。
たいていの購入者は購入前にコミュニティを下見しますが、日本語ばかりでコミュニティが行われているDiscordは英語話者にとってはわけがわからず、購入するモチベーションを下げる方向に働きがちです。みなさんもペルシャ語ばかりが飛び交うDiscordにいたらどうでしょうか?Discordで積極的にコミュニケーションをとろうと思わなくなるのではないでしょうか?このような理由でコミュニティの共通言語を変えることは極めて難易度が高いです。
繰り返しますが、Discord運営の命はホルダーを含めた参加者です。参加者の構成を変えるというのは非常に難易度が高く、成功確率は極めて低いです。
海外を狙う戦略
上記の理由から、日本人が作るNFTであったとしても最初から海外を狙う以外の戦略はありません。
いわゆる既存のビジネスにおいては日本人が日本語しか話せないことはプラスに働く面もあります。しかし、NFTの日本市場が極めて小さいという前提に立つと、日本人向けにサービスをすることは経済的な成功を目指すのであれば無理筋としか言いようがありません。最初から海外を目指しましょう
では海外を狙うためには具体的にどうするべきでしょうか。ヒントはNFTは労働集約産業であるという点です。必要なのは高いレベルで英語ができる優秀な人材以外にありません。細かいスキルセットの議論はあるものの、大枠では下記のような人材が必要です
海外のNFTトレンドに精通した戦略家
英語に堪能なマーケター
海外Discordの文化を理解したMod
海外を目指すのであれば当たり前の内容ですね。特に英語能力が求められるのが2です。最低でもAMAをこなせる能力が必要です。1, 3も同様です。「DeepLを使えるから英語が読み書きできます」というレベルでは全く十分ではありません。NFTが成功するかどうかはチームメンバー次第です。チームメンバー選びに最大限労力をかけましょう。
まとめ
日本のNFT市場規模はグローバルの高々3パーセント程度。日本人をメインターゲットに設定すると、市場全体の95%以上を見捨てることになる
初期に国内をターゲットにし、その後海外展開をするというのは最近のNFTマーケット戦略から考えて無理筋。最初から海外を狙う以外にない
NFT運営側に求められる要件として、3種類のスキル x ビジネスレベル以上の英語能力(AMAに対応できるレベル)が必須
最後に
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