Moonbirdsの戦略分析

NFTmeijinのナオトです。様々なNFTを分析することを趣味として生活しています。第2回となる今回は現時点で2022年において最も成功しているNFTの一つである

Moonbirds
です。

TL;TR

  • NFTの分野ではすでに確立されたチームが成功しやすい

  • Moonbirdsはスタートアップがファンドを獲得する手段として、NFTが十分機能することを(BAYCに続いて)再証明した

Moonbirdsとは?

Moonbirdsは4/16にリリースされたジェネラティブNFTです。合計で10,000体がリリースされ、ダッチオークション形式で2.5ETHで発売しました。ダッチオークションは時間経過とともに価格が徐々に下がっていくのですが、Moonbirdsの場合は価格が下る前に2.5ETHで売り切れています。つまり、人気が非常に高かったということです。

記事を執筆している4/20時点ではFloor priceは19.9ETHとなっており、ほとんどのNFTが20ETH以上=750万円以上で取引されています。Openseaの過去30日間のNFTランキングでも他の超有名プロジェクトを抑えて1位を獲得しています。

Openseaより引用

NFTとしてのMoonbirdsの特徴

ではMoonbirdsはどういったNFTなのでしょうか?

Moonbirdsのユーティリティ(機能)としては、後述するPROOFという限定Discordに加入することができる点です。また、Moonbirdsホルダー限定のドロップや対面イベント、PROOFプロジェクトイベントなども予定されています。

また、MoonbirdをNesting(ステーキングの彼らの呼び方)することで時間の経過とともにレベルが上がり、より良い特典を得ることができるようです。このあたりは以前のトケノミクスの記事で説明したように、いかにしてNFTをロックさせるかという部分の仕組みとなっています。NFTをロックするインセンティブを与えると、(流動性は減るものの)NFTの希少性が高まり、Moonbirdsの価格は高まります。

Credit: Kevin Rose

最後に長期のビジョンとして、「Project Highrise」というメタバースを開発する予定となっています。

ただし、これだけでは大したユーティリティではありません。ではなぜMoonbirdsがここまで注目され、高値になったのでしょうか?

Moonbirdsが注目される理由

運営が(とてつもなく)高い実績を持っている

MoonbirdsのファウンダーCEOはKevin Roseです。Kevin Roseは起業家、VC投資家、ポッドキャスター、プロデューサー、NFTコレクターなどの複数の顔を持っていますが、特に起業家として非常に優秀です。2000年初頭にはソーシャルニュースサイト「DIGG」を設立しました。断食アプリ「ZERO」や瞑想アプリ「OAK」のファウンダーでもあります。

Kevin Roseが最初に発売したPROOFというNFTコレクティブは、すでにFloor Priceが80ETHを上回っています。このNFTのホルダーは、ホルダーのみが参加できる限定Discordに加入することができます。

Openseaより引用

Kevin Roseはトップ起業家、芸術家、NFTコレクターに絶大な信頼があるため、誰もがこのDiscordに加入してKevin Roseの話を聞きたいと考えています。その結果、このDiscordに集まった1000人のメンバーのブルーチップ(CryptoPunks, BAYC, Meebitsのような高価なNFT)の総数は、なんと全部で15万体以上になったそうです。ここに集まったメンバーがどれだけ強力なメンバーか理解しやすいでしょう

Credit: Kevin Rose

そして優秀なのはCEOだけではありません。近年のNFTはもはや一人では開発できないほど労働集約産業となっています。

Kevin RoseはJustin Mezzell と Ryan Carson をクリエイターおよび運営チームとしてに加えています。Mezzellはアーティストとして非常に経験豊富であり、Google、Twitter、Facebook、Paypalなど数え切れないほどの有名顧客を抱えています。CarsonはTreehouseというオンラインクラスプラットフォームの元CEOです。

このように単純にCEOだけでなく、チームメンバーも優秀かつWeb2およびWeb3で有名なスタッフで固めているところがポイントです。このようなスタッフと交流できたり、このようなスタッフから最新のNFT情報を聞くことができるということであれば、限定Discordにも高い価値を感じる人が現れるのも理解できるでしょう。

「CEOとチームメンバーが優秀かつ有名だと資金を獲得しやすい」ということですが、どこかでこのようなフレーズを聞いたことがないでしょうか?そうです!スタートアップと似た構造となっています。

スタートアップのファンド獲得機能

BAYC+ApeCoinの記事でも説明したようにNFTはスタートアップがファンドを獲得する手段として機能しつつあります(日本国内では成功例が多くありませんが海外ではBAYCを皮切りに着実に事例が増えつつあります。個人的には日本国内で成功例が少ないのには明らかな理由があると考えています)。

これまではスタートアップがファンドを獲得する手段としてはVCから投資を受けるというのが主流でした。しかしながらBAYCが実現したのは資金調達プラットフォームとしてNFTを活用するという方法です。なにか革新的なビジネスが思いつけば、それをNFTとして整理することで資金を得ることが可能となりました。

Moonbirdsの場合でいうと「Project Highrise」というメタバースが長期的なプロジェクトの展望ということになります。あなたがスタートアップとしてなにか良いアイデアを思いつけば、それをNFT化することで資金を得ることができるのです。

この点においてMoonbirdsが他と違うのは、起業家としての成熟度が他と比べて非常に高いという点です。この点でファンドを獲得しやすかったと考えられます。

最近ではNFTクリエーターが資金獲得手段としてNFTを利用することも多いですが、成熟度の高い起業家がファンド獲得手段としてNFTを利用することで大きな可能性を再証明することができたのは非常に大きい事件です。今後もMoonbirdsのように起業家がNFTを利用して資金調達をするケースは増えてくるでしょう。

Take-Home Message

  • NFTの分野ではすでに確立されたチームが成功しやすい

  • Moonbirdsはスタートアップがファンドを獲得する手段として、NFTが十分機能することを(BAYCに続いて)再証明した

謝辞

主に欧米圏のインタビュー資料などを多数参考にさせていただきました。ここに謝辞を申し上げます。
また、私はMoonbirdsをリアルタイムで見ていたわけではない部分が多く含まれます。もしも間違い等ございましたら、私のTwitterまでDMなどでご連絡いただけますと幸いです。日本のNFTコミュニティにとって、過去の歴史を学ぶことでNFTをより良い方向に持っていけましたらこれ以上に嬉しいことはありません。

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