残りものには懺悔がある

僕が目を開けると、そこには同世代の男女がいた。
皆一様に、なぜ自分がここにいるかわかっていないようだった。
部屋の壁にかけた液晶に画面の男が映った。

「これから獣を放つ。逃げるがいい」

悲鳴が上がった。
人々は、他人を押し除けて部屋から出ていく。飛び交う怒号、床に倒れる人たち。
そこで僕は彼女を見つけた。

美しかった。肌はぬけるように白く、目鼻立ちが整っている。そんな彼女は混乱したこの状況を理解できていないのか、きょとんとした表情を浮かべていた。

「逃げなきゃ!」
僕は衝動的に手を取った。
彼女は首をゆっくりと振った。
その時、僕は気がついた。


「よく、彼女の正体が分かりましたね。彼女は逃げるものを襲う習性があるのですよ」

液晶からの声もどこか遠く感じられる。先ほどまで、この部屋の外で響いていた断末魔が耳にこびりついていた。

僕は彼女の首が徐々に鱗に覆われ始めていたことに気がついたのだ。そして、彼女は完全に化け物へと変化を遂げ、部屋の外へ逃げていった人々を襲ったのだ。

僕が彼女の正体を告げていれば、助かった人はいたのだろうか。
部屋に1人残った僕は、無意識のうちに誰かに許しを得ようとしていた。



むりやり、裏テーマの
「可愛い子には変化させよ」に触れてみましたw

#毎週ショートショートnote

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?