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【司馬遼太郎】人間というもの③

心に響いたものの抜粋となります。


「喫茶は作法どおりにするがよい」
「なぜ、作法どおりにせねばならぬ」
「遊戯じゃ。人には欲望がある。
欲望というのは、もともと生死につながっている。
めしを食い、女を抱き、憎い者を殺し、
金をもうけ、土地をひろげ、
人はその生死の欲望から
片ときも離れ去るわけにはいかぬ。
遊戯とは、
生死の欲望から、人を
わずかでも離れさせるための方術じゃ。
遊戯には、
さまざまなとりきめがあり、
いずれも生死の大事と関係(かかわり)がない。
茶の作法も、男女の遊びの作法も、
遊戯にすぎぬが、
遊戯のとりきめにおのれを縛りつけるときのみ、
人は生死の欲望から離れることができる。
作法どおりにするがよい」
  『戦雲の夢』

「人間はな」
 言ってから、劉邦は言葉をとぎらせた。
人が悲しんでいるときに顔をすり寄せてきて、
お悲しいことでございましょう、
とおっかぶせてくる奴ほどこまった手合はない、
と言いたかった。
「こういうときにはな」
 劉邦はまた黙った。
何をいっていいのか、言葉がない。
 風が、帆をゆさぶって鳴った。
「唄だ」
 唄はこういうときのためにあるのだ、
と劉邦はいった。
嬰よ、うたえ。
 嬰は、風にむかってうたった。
  『項羽と劉邦 下』


こちらの内容は、

『人間というもの』

発行所 株式会社PHP研究所
訳者 司馬遼太郎
2004年4月19日 第1版第1刷発行

を引用させて頂いています。




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