【中村天風】『積極(せきぎょく)』キーワードでわかる!中村天風事典
先に、
『運命を拓く』
からの抜粋となります。
第一章 生命の力
(前略)
いつも、
「清く、尊く、強く、正しく」
という
積極的態度で終始しなければならない。
そうすれば、自分でも不思議なほど、
元気というものが湧き出してくる。
そしてその元気
つまり元の気が、
ただちに
「先天の一気」
を呼びよせ、
つまり原動力となり、
健康的にも、
運命的にも、
すべてのことが完全に解決されてくる。
元気という気が出たときに、
人間と宇宙霊とが
完全に結びついたことになるからである。
事実、元気が出たときには、
何ともいえない爽快さを感じるものである。
とにかく、
元気はつらつたる状態で活きることこそ、
最も必要かつ大事なのであるから、
心の置きどころを
常に積極的にするために、
「自分は力だ」
ということを、
断じて忘れてはいけない。
こちらの内容は、
『運命を拓く』
天風瞑想録
発行所 株式会社講談社
著者 中村天風
1994年1月26日 第1刷発行
を引用させて頂いています。
思想17 積極
建設の作用を生み、生命を健全に発展させるプラスのベクトル。
天風の言葉
心の態度が積極的だと、
お互いの命の全体が積極的に運営される。
反対に消極的だと、またそのとおりに
全生命の力が消極的に萎縮せしめられてしまう。
『成功の実現』
天風は、「せきぎょく」と重々しく発音する。
この発音は、講演では強いインパクトを与えた。
実際、「積極」は天風哲学の中核となる概念だ。
そのためか、天風の発音を真似る人がいるが、
我々はふつうに「せっきょく」と言って問題はない。
積極とは、プラスのこと。
天風は、
「プラスが勝っているときは建設の作用が現実に行なわれる。
あの人は丈夫だ、あの人は運がいいというのは、
宇宙エネルギーの受け入れた結果にの多いときである」
(『運命を拓く』)
と語る。
積極(プラス)が勝ると、
宇宙エネルギーの働きは建設的なものになる。
逆に、
消極(マイナス)が勝ると、
破壊的なものになる。
思想18 相対積極
「絶対積極」という最終目標に至るための手段であり、通過点である積極。
天風の言葉
怒ったり、悲しんだり、恐れたり、(中略)消極的な感情です。
そういうものが心の中に起こる。それに対して、
これをこらえようとか、これに負けまいとする気持ち、
これは相対的積極なんです。
『心に成功の炎を』
相対積極(相対的積極ともいう)は、
絶対積極(最終目標)へと向かっていく通過点である。
発展しつつある積極であり、
絶対積極に至るための手段であり、
プロセスだ。
このように、
人が積極の方向へと向かっているとき、
その生命は健全に発展している、
と天風哲学では考える。
では具体的に、相対積極とは何か。
"積極と消極の相克"
という次元の積極である。
消極に対して、
「なにくそ!」「負けるものか!」
と張り合っている。
張り合っている相手は、
自分の心に湧き上がってくる後ろ向きの感情だ。
さらには、
「あいつにだけは負けたくない」
というライパルに対してだ。
こうした努力によって達する境地は、
「恬淡明朗(てんたんめいろう)」
「潑剌颯爽(はつらつさっそう)」
という積極心である。
思想19 絶対積極
"積極と消極の相克"という相対次元を超越した最終地点。
天風の言葉
けっして張りあおうとか、
対抗しようとか、
打ち負かそうとか、
負けまいといったような、
そういう気持ちでない、
もう一段高いところにある気持ち、境地、
これが絶対的な積極なんです。
『心に成功の炎を』
絶対積極は、
積極における終着点であり、究極だ。
天風哲学が目指すところである。
では、絶対積極とは何か。
"積極と消極の相克"を超えた積極。
勝負にこだわらず勝ち負けを超越している。
また、相手と比較することがない。
だから、自分のベストを尽くそうという
虚心幹気な心境で、フルに力を発揮できる。
このとき、生命力は旺盛になり、
どんな荒波にも心が翻弄されることはない。
天風にとって、絶対積極を体現した人物が、
恩師の頭山満であった。
中国の革命家である孫文と密談していた頭山に、
飴屋に変装した刺客が送られた逸話は
別項で紹介した(生涯05)。
銃口を突きつけられると誰だって平静を失うものだ。
が、頭山は平然としていた。
どんなときも普段と態度が変わらない。
「ことがある日もことなき日と同様、
生きてることを楽しむ
(有事が起こった日も、
普段の日と同じように、
生を楽しむ)」
(『信念の奇跡』)
という境地である。
これを絶対積極という。
天風は、
次のような言葉を用いて、
絶対積極を言い換えている。
◎心が尊く、強く、正しく、清らかな状態。
◎虚心平気(きょしんへい)(思想20)
――心に波風を立てない境地。
◎活潑々地(かっぱつぱっち)(思想21)
――自由で生命力に満ちた境地。
◎無我無念(むがむねん)(思想50)
――我執がなく雑念がないという境地。
◎順動仮我境(じゅんどうかがきょう)(思想53)
――五官(目・耳・鼻・舌・皮膚の感覚器官)
にとらわれず、感情や感覚にふり回されない境地。
ちなみに、絶対積極に達するまでのプロセスを、
相対積極(思想18)と呼ぶ。
このプロセスでは、「恬淡明朗」「潑刺颯爽」
という生命力に満ちた境地に達しうる。
ここまで達すると、絶対積極に近いと言えよう。
キーワードでわかる!
中村天風事典
発行所 株式会社PHP研究所
著者 池田 光
2023年6月15日 第1版第1刷
を引用させて頂いています。
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