ついに動き出した欧州のデータスペース構想~European Health Data Spaceの設立~
こんにちは、NFI理事の加藤です。
日本では大型連休中の5月3日、データ利活用に関する政策について非常に重要な情報が公開されました。
欧州委員会が以前から予告していたとおり、European Health Data Space (EHDS)の設立について、その具体的な内容を公表しました。私はこの公表を「ついに欧州のデータ戦略が具体的に動き出した」と捉えています。EHDSを単なるヘルスデータの一活用と切り捨ててしまうのは早計です。
上記のプレスでも欧州委員会副委員長のMargaritis Schinas氏は以下のようにコメントをしています。
このコメントには、いくつかの重要な要素が含まれていると思いますが、特に、欧州における最初のデータスペースであること、は見逃せません。また、ある記事ではEHDSに関して以下のようなな説明がされています。
GDPRだけでなく、データガバナンス法やデータ法、それからNIS指令まで併記されています。これはどうしてなのでしょうか。実は、日本では、その制度単体で紹介されがちなGDPRをはじめとした諸制度ですが、欧州委員会はこれらの制度を非常に戦略的に整備してきています。
データガバナンス法、データ法については、欧州委員会の現委員長が進めるデジタル戦略において重要な施策と位置づけられています。また、GDPRは前委員長が進めたデジタルシングルマーケット(DSM)戦略における重要な要素と位置づけられていました。
EHDSは欧州委員会におけるこれらの活動の一つの集大成とも呼べるかも知れません。EUはこれまで、ヒト・モノ・カネ、そしてサービスに関する単一市場を目指してきました。それらに加えて、DSM戦略が目指してきたことは、デジタルの単一市場、つまりデータに関する単一市場でした。
この単一市場の作り上げるために、データ保護に関する制度を整え、データ利活用のための制度を整えてきたのです。そして、データスペース構想につながります。EHDSが動き出すにはまだもう少し時間がかかるかも知れませんし、様々な議論があるかも知れません。しかしながら、欧州が共通したデータスペースを目指していることは紛れもない事実です。
NFIではこれらの動きを見越して、特別WGを設置し活動をして参りました。欧州委員会は2021年2月に「Assessment of the EU Member States’ rules on health data in the light of GDPR」を公開しており、特別WGではこの分析を行って参りました。同報告書はEHDSを理解する上で重要な要素を含んでいます。以下の資料でそのほんのさわりの部分のみですが公開させていただきます。(欧州特別WGは会員の皆様のご負担により原則非公開で運営しております。)
また、NFIが2022年3月に公開した提言は特別WGでの研究成果を基礎の一つとしています。
NFIでは、今後の活動として、
①欧州におけるデータ関連政策の分析(データ戦略、データ法、データガバナンス法の分析)
②欧州を中心としたヘルスデータ活用事例の調査(2022年度欧州調査特別WG)
を新たに開始します。個人的には、上記の①、②に関連した動きは、これまでのGDPRの影響を遙かに超えるものになる可能性があると思っています。
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