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過去を振り返ることは学びになる
【自信】
いつものように、何気なくSNSを見ていると、
こんな言葉に出会った。
『自分との約束を守った数が自信になる』
色々なことを経験してきた私の中に、すごく腑に落ちる言葉だった。
【充実】
2011年の秋
とある大会
準決勝
0-2の劣勢から2点を取って振り出しに戻すと、
PK戦ではキーパーとして相手のシュートを止めて勝利
決勝戦
またしても0-1という劣勢から、
ドリブルでまさかの4人抜きからの豪快なシュートを突き刺し同点。
その後のPK戦でまたもシュートを止めて見事に優勝。
九州の大分県という地で、坊主頭がトレードマークの背番号9は、ピッチを縦横無尽に駆け回り、【自信】に満ち溢れていた。
お察しのとおり、その坊主頭の背番号9こそ、私である。
当時の私は、決して天狗になっていたわけではなかったが、
間違いなく【自信】をもってサッカーをしていた。
その【自信】は、もうすぐに失うことになるとも知らずに。
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時は少し流れ2012年1月。
坊主頭の少年は、熊本県にいた。
もともと大分県自体も父親の仕事の都合で移住していたのだが、父の転勤に伴い新しく熊本県に移住することになった。
全校集会のとき、全校生徒の前に出て挨拶をする時間があったのだが、目の前にいたのは約1300人の生徒。
規模が違いすぎて、さすがに足がすくんだ記憶があるが、それでも新しい地での生活にワクワクしていた。
(余談だが、クラスに移動して早々、女の子に「どっから来たと?」と聞かれ、九州の方言の破壊力をド直球に感じたのはここだけの話にしておこう)
※大分県はあんまりなまりがなかった
【ソレッソ熊本】
新生活に落ち着かない坊主頭の少年が最初の練習参加に選んだのは、ソレッソ熊本という街クラブのチーム。
ご存知の方もいることでしょう。
JFA 第47回全日本U-12サッカー選手権大会(2023年)で全国初優勝を果たし、U-15も全国準優勝。
最近は世代別代表も出し続け、今最も熱い街クラブといっても過言ではない。
そんなことになるとはつゆ知らず、坊主頭の少年はソレッソ熊本の練習に参加したのである。
そこには、大分県にいる時よりも、
うまくて、はやくて、でかくて、
何より負けず嫌いな人が多かった。
だが、坊主頭の少年もそれなりの【自信】をもっていたため、それなりにやれる感覚があった。
バチバチの練習、面白いコーチの熱すぎる指導。
「練習」とは何かを考えさせられる環境が、間違いなくそこにはあった。
ソレッソ以外にもう1チーム練習参加予定だったが、初回の練習後にソレッソ熊本へ入ることを即決した記憶がある。
それくらい衝撃を受け、同時にワクワクした気持ちになった。
それと同時に、坊主頭の少年が【自信】を失い続ける日々が静かに始まった。
【井の中の蛙】
ソレッソに入ってから毎日、強度が高く、頭も使う練習を日々こなしていた。
特にその中でもソレッソは、「対人」の練習は「絶対に負けたらダメ」というスタンスなので、対人の練習は年齢関係なくバチバチである。
坊主頭の少年は、初めこそバチバチにやり合えていたが、途中からだんだん勝てなくなっていった。
すると、最後に行うゲーム練習でも、自分のところでボールを奪われたくないからか、消極的なプレーをすることが増えた気がした。
今までの自分では出したことのないバックパスの数
負けたことのない球際の数
そこには間違いなく、
「驚き」と「焦り」があった。
何度も言うが、決して天狗になっていたわけではない。
ただ、大きな【自信】をもってサッカーをしていた。
それが今となってはボロボロと崩れさり、
【自信】を失った、ただの坊主頭の転校生が誕生していた。
大分ではできたのに熊本ではできない。
完全に井の中の蛙だった。
何もかも周りの方がレベルが高く、自分の良さが何か全くわからなくなっていた。
「自信をもってプレーしろ」
当時のコーチや父親からそう言われた気もするが、今振り返れば、全くと言っていいほど意味がわからなかった。
【苦痛】
それからというもの、毎日必死に食らいつく日々の連続だった。
今まで積み上げてきた自信は0になり、泥臭くやるしかなかった。
週末の試合も、Aチームのスタメンになるのはおろか、サブ組でも出場できるか危うい立場にいた時もある。
半年前までチームの中心で活き活きしていた坊主頭の少年は、
チームのレベルに必死について行くのがやっとの、もがき苦しむ少年になっていた。
当時を嘘偽りなく表現しよう。
「サッカーは楽しいはずなのに、試合が怖い」
今考えても訳の分からない状態である。
さらにここにひとつ付け加えるならば、
「自分のプレーに【自信】がなかった」
同級生が上級生の試合に絡み、下級生が自分たちのカテゴリーに上がってくる。
そんな焦りと苦しみを抱える日々だったが、かつての坊主頭の少年は、
とある遠征をきっかけに、【自信】を身につけるためのコツを掴み始める。
【琵琶湖カップ】
2012年の8月
日本一大きな湖で有名な琵琶湖。
その琵琶湖のすぐそばで行われ、全国の強豪が集う琵琶湖カップに、ソレッソも参加することになった。
当然私も遠征に行きたかったのだが、遠征に参加できる人数はわずかに12人。
同級生だけで25人くらいいたチームにとって、
ましてや自分のプレーに自信がない少年にとって、12人というのはかなり狭い門に感じた。
遠征参加メンバー発表まで一か月をきっており、チーム内の競争も激化していた。
当時の私は、平日のサッカーがない日も必ずと言ってよいほどボールを蹴っており、自分が少しでもうまくなるために必死だった。
それでも、なかなか埋まらない周りとの差に、もやもやした気持ちでいっぱいだった。
「このままではだめだ」
ずっと心の中ではわかっていた。
【自分を変える】
なにがきっかけかは覚えていないし、単純に遠征メンバーに入りたかっただけのような気がする。
坊主頭だった頃から、ソフトモヒカンくらいまで髪を伸ばした少年は、唐突に母親に宣言した。
「今日から遠征メンバー発表までの間、毎朝5:30に起きて走るわ。」
それから遠征メンバー発表までの期間、毎日5:30に起きて、
まだ静かな住宅街を息を切らしながら走り、公園でステップワークの練習を重ねた。
朝からボールの音を立てるのは近所迷惑で訴えられる可能性があることも考慮するあたり、変に賢い少年だなと思う。
早朝とはいえ、真夏の朝は普通に暑い。
汗だくで帰宅し、シャワーを浴び、朝食を食べて学校へ行く。
1300人いる小学生の中で、
毎朝シャワー浴びて登校する奴はたぶん私だけだっただろう(笑)
学校が終わると、いつものように激しい練習をするし、練習がない日も変わらず自主練をした。
ただでさえついていくのに必死な奴が、早起きして走っているとなると、練習でも体力面でかなり苦労した。
最初の一週間で「朝ランやめようかな」とも思った気もするが、「遠征メンバーに入りたい」という気持ちが強く、自分の中の自分に打ち勝った。
そうしてなんとか続けているうちに、時は過ぎ、メンバー発表の日。
遠征メンバーが書かれたメールの中に、
私の名前があった。
つい先日までもがき苦しんでいた少年が、12人という狭き門を突破したのである。
当時の私のプレーは、当時のコーチに聞いてみないとわからない。
客観的に自分のプレーを振り返っても、劇的に何かが変わったわけではない。
そもそも、毎朝走ることを日々の生活に付け加えただけで、その生活も1か月弱しか続けていない。
能力が上がるといっても、せいぜい少し体力が向上して、少し俊敏になるくらいだろう。
そんなものでは、周りとの差を逆転できないことくらい自分が一番わかっている。
では、いったいなぜ選ばれたのか。
ソフトモヒカンの少年は何が変わったのか。
答えはそう、
【自信】である。
「毎朝早起きして走るという自分との約束を守り続けたからこそ手に入れた【自信】」
別に早起きしなくても怒られないし、たまたま宣言した母親に対しても迷惑はかからない。
それどころか、走ることで練習がさらにきつくなって、逆に評価が下がる可能性だってある。
それでも私は、自分との約束を守り続けた。
どれだけきつくても、
「やったこと」 「やり続けたこと」 が【自信】になった。
自分では気づいてないが、おそらく活き活きとしたプレーができていたのだろう。
かつての坊主頭の9番のように、試合を恐れず、ピッチを縦横無尽に駆け回る姿勢が戻っていたのだろう。
能力が劇的に向上したのではない。
【自信】を手に入れたのである。
遠征先では思うように活躍できなかったが、心が折れることはなかった。
自らの力で【自信】を取り戻し、自らの力でつかんだ舞台に、失敗という概念は存在しなかった。
自分の力で【自信】を得ると、見える世界が飛躍的に変わる。
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またまた1番右。
【学び】
『自分との約束を守った数が自信になる』
冒頭で紹介した言葉は、つい最近私の耳に入り、妙に納得した言葉である。
それは、上記で述べた経験があったからかもしれない。
誰だって自信を失う時はあると思う。
他の人にはわからない、わかってもらえない苦しみがあると思う。
そういう時こそ、自分と約束して、約束を守り続ける。
そうすることで、自分のことを信頼でき、それが【自信】となって表面に現れ、やがて結果につながる。
もう12年以上前の話ではあるが、新しい学びを得ることができた。
これからも、自分で設定した目標に対して、守るべき約束を自分自身と交わそうと思う。
そして私はそれを必ず守る。
今よりももっと自信がみなぎるだろう。
楽しみだ。