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脳腫瘍手術前にて、メッセージを残します。

1.公平世界仮説の話

 最初に公平世界仮説(又は公平世界誤謬)の話をします。善行は最終的に報われ、悪行は最終的に罰せられるという認知バイアス(人間が陥りがちな非合理的判断傾向)の事です。

 この認知バイアスは、幸福感や未来への希望を提供してくれるものではありますが、犠牲者非難を生むものでもあります。誰にでも理由なく被害が生じる現実を認めたくない為に、犠牲者にその原因を求めてしまう心理です。例えば、新型コロナの犠牲者の話を聞く時に、そういった心理になっていないでしょうか。

 現状、私は犠牲者の立場にあると思われますので、先行してそのような認知バイアスがある事を提示しておきます。

2.現状の話

 現状説明すると、「大きな脳腫瘍が見つかり、延命治療として可能な限り摘出する手術を受ける事にしました。脳を削る手術である以上、リスクが存在します。その為、メッセージを残しておきます」という状況です。

 脳腫瘍(正確には原発性脳腫瘍)には、良性(グレード1)・悪性(グレード2~4)とグレード分けがあるのですが、後者の可能性の高さかつ腫瘍の位置・大きさから難しい状況にあります。

 手術の実施・未実施に関わらず、現状での生存率はお察しの通りだと思います。ただ、手術する場合と手術しない場合の比較実験で後者の予後不良(余命が短い)が証明されているとの事なので、リスクを鑑みても手術して頂く事と致しました。

 私なりに情報を集めて判断する限り、この手術を受けるにあたってのベストプラクティスは「東京女子医科大学」への受診と考えています。最新鋭の設備とそれを前提とした術式を備えており、先進的な自由診療(保険外診療)のオプションも用意されています。それらの好成績も公表されており、2021年情報として、この病気での日本一の手術数を誇ります。
 ※東京女子医科大学では、過去の特定機能病院の承認取り消しや直近の内科医・看護師の大量退職疑惑はありましたが、それを踏まえた上での個人的発言です。

■東京女子医科大学での神経膠腫の治療方針と治療成績説明
 ・脳腫瘍 神経膠腫(グリオーマ) | 東京女子医科大学脳神経外科

■手術数ランキング
 ・脳腫瘍手術 | 2021年 | 手術数でわかるいい病院 | AERA dot. (アエラドット)

 しかし、現在は、別の病院で別の医師の方に手術をお願いする事となりました。一応理屈を付けて言えば、複数病院(救急搬送先の病院とセカンドオピニオン先の病院)の医師の方から名医と評価されていた事や、経歴を踏まえても先の病気やその手術の権威であらせられる事、先の手術数ランキングに病院が掲載されている事などありますが、詰まる所、時間のない中で直接臨床医の方にお会いして信頼できたという感情的理由です。

 さて、現状説明はこれくらいで、ここからはメッセージを残しておきます。もちろん、法律的な意味での遺言書は別に作ってありますし、エンディングノートも記入済みです。

3.応援の話

 そもそもなぜ直接メッセージのやり取りをせず、ブログ形式で一方的に報告しているのかですが、祈られ疲れたという個人的感情によります。異論は大いにあると思いますが、「問題解決の為に時間や費用を使う気はない」か「問題解決の為にできる事が考えつかない」時の最終手段が祈る事だと、私は考えています。悪い言い方をすれば、「何かをしたつもりになれる行為」です。祈ってくれる方がいるだけで十分ぜいたくな話ではありますので、これは私のわがままです。

 ただ、親しい方ががんになった時にできる事は多くあります。その病気について知ってみる事や、それに対するご本人とその家族の価値観を尊重する事、相談が必要なら受ける事を伝えるなどです。

 ・ご家族、まわりの方へ:[国立がん研究センター がん情報サービス 一般の方へ]

 その方と深い関係にあるならば、医療面で言えば、その分野での名病院・名医、先進医療・臨床試験を探してみるのも良いかもしれません。
 特に希少がんの場合は、標準医療(現状でのベストプラクティスとしての医療プロセス)が確立されていなかったり、確立されていても経験の少ない医師の方が担当されるケースもありますので、その重要性は大いにあります。

■病院を探す。
 ・がん種別の診療数で病院を探してもらう:[国立がん研究センター がん情報サービス 一般の方へ]
 ・手術数でわかるいい病院|AERA dot. (アエラドット)

■セカンドオピニオンを受ける。
 ・セカンドオピニオン:[国立がん研究センター がん情報サービス 一般の方へ]

■希少がんを相談する。
 ・希少がんホットライン | 希少がんセンター

■先進医療を探す。
 ・先進医療の概要について
 ・先進医療の各技術の概要|厚生労働省

■新規治療法(臨床試験・治験等)を探す。
 ・がんゲノム医療:[国立がん研究センター がん情報サービス 一般の方へ]
 ・研究段階の医療(臨床試験、治験など) 基礎知識:[国立がん研究センター がん情報サービス 一般の方へ]
 ・がんの臨床試験を探す:[国立がん研究センター がん情報サービス 一般の方へ]
 ・患者様やご家族など一般の方向け臨床・治験情報サイト【臨床研究情報ポータルサイト】
 ・MASTER KEY Project 患者さん向けリーフレット

 事務面で言えば、休職・傷病手当金の申請手続きや保険金請求、限度額適用認定証や医療費控除の申込等、多くの作業がありますので、その手伝いをしても良いかもしれません。

■支援制度全般を知る。
 ・がんの治療費と生活の支援制度|がんを学ぶ ファイザー
 ・制度やサービスを知る:[国立がん研究センター がん情報サービス 一般の方へ]
 ・高次脳機能障害支援に関する制度 | 国立障害者リハビリテーションセンター

■休職する。または退職する。
 ・休職とは? 休職理由、手当受給の条件、手当金期間、申請方法、計算方法について - カオナビ人事用語集
 ・傷病手当金とは~生活の支援制度|がんを学ぶ ファイザー
 ・退職後にやるべきこととは?退職後やるべきことチェックリスト | リーガライフラボ

■公的制度で高額な医療費に対応する。
 ・高額療養費制度とは?~治療費の支援制度|がんを学ぶ ファイザー
 ・高額療養費の支給申請手続き~治療費の支援制度|がんを学ぶ ファイザー
 ・医療費控~治療費の支援制度|がんを学ぶ ファイザー

■民間保険で保険金等を請求する。また、関連サービスを受ける。
 ・民間保険の仕組み:[国立がん研究センター がん情報サービス 一般の方へ]
 ※民間保険は、勤務先の会社が団体保険に入っているかもしれません。会社の福利厚生制度を確認されるのがオススメです。

 精神面で言えば、専門機関が提供するパンフレットを読んだ上で、家族含めての緩和ケアを進めるのが良いかと思います。ただ、私はこの点を失敗しましたので、何が良いのかは専門機関の発信情報(パンフレット含む)を参照してください。

■パンフレットを読む。
 ・身近な人ががんになったとき:[国立がん研究センター がん情報サービス 一般の方へ]
 ・家族ががんになったとき:[国立がん研究センター がん情報サービス 一般の方へ]

■緩和ケアを進める。
 ・緩和ケア:[国立がん研究センター がん情報サービス 一般の方へ]

4.価値観の話

 生きあがき、そして、それが死期が迫った時点で痛みや苦しみを緩和する治療に移行する。これが今の私の価値観による結論となります。

 人はなぜ生きるのかは、「利己的な遺伝子」(著:リチャード・ドーキンス)を代表とする自然科学的観点からすれば、特に意図されたものではなく、そのような現象だからというものになるかと考えます。

 欲求や本能といった自然発生したプログラムに従い、生きてきました。そして、それが不可能と判断された時点で、同じく欲求に従うのが、次善策と私は思っています。延命治療するも良し、痛み・苦しみを緩和する治療をするも良し、延命治療しないも良し。
 ただ、生存本能は痛み・苦しみの中で摩耗していきます。その本能自体も失われる事が見込まれます。ならば、その時には痛みや苦しみを緩和する選択が、私の今の価値観です。

5.物語の話

 直近の手術への不安に対しては、今までの話と矛盾するようですが、不安を解消する手段として認知バイアスを用います。

 正常性バイアス(不都合な事実を日常の延長として過小評価する判断傾向)を持って手術のリスクを過小評価し、ハロー効果(目立つ特徴に引きずられて他の評価項目も同様に評価する判断傾向)やバンドワゴン効果(多くの方が支持する選択をより支持する判断傾向)、確証バイアス(自分にとって都合の良い情報を集める判断傾向)を持って医師の方を信頼し、コントロール幻想(客観的にコントロール不可と考えられる事象に対しても自身が影響を与えられると考える判断傾向)を持って手術が上手くいくと楽観視します。

 楽観視するかしないかにおいて、楽観視する方が脳外科手術では有用と考えるからです。

 祈るのではなく、備える。
 これを持って、祈らない今の私の祈りとします。



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nezuq
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