SoD, 第9章、『トロル係の日記』
<ボアレスキール・ブリッジ、十字軍キャンプにて。キャンプの箱から一冊のヘタクソな字の日記らしきものが見つかる>
***便宜上、全文いっぺんに訳す***
(使った後のメモや皮の切れ端を寄せ集めて誰かがこの日記をこしらえた。書き手は軍需品や軍団の移動についての記録の上に×印をつけ、ほとんど判読できないような下手な手書きの字をつらねている)
その1
ニンゲンがほかのニンゲン殺したらミフに金やる言う。それいいこと、オレ思う。このキャンプ、ミフに神さま教えたいマホウのニンゲンいっぱい。イーノグ*のほかオレどうでもいい、でもニンゲン話させる。背高いオフィサー”モー・エイル”いう名前、ミフに紙の上字作る教える。ミフもうタクサン書いた。今からミフ自分とバカなニンゲンのこと書く。ほかのニンゲン殺して金いっぱいもらう、そしたら金持って群れ帰る。
その6
ニンゲンのリーダー、お日様みたいにキラキラ。彼女の名前ケイラー。ケイラー、トロルと話したい、オレにトロル取ってきて言う。ミフ言う、ダメ!トロル、オレたちみんな食う!ケイラー、ミフの肩に手おく。みんな、ノールとバカなニンゲンとトロル、ケイラーの光に仕えられる言う。ケイラーいい声、でも言ってること意味ない。ミフ光ない。トロルみんな食う。
その8
ミフ正しかった、そしてケイラー正しかった。なぜ両方正しいできるか?トロルはみんな食べようと洞窟出てきた。それからケイラー彼女の光について話した。金と食べ物約束した。何匹かのトロル、これいいと思った、前のミフみたいに。たくさん金もらって群れに持って帰った。そしたら他のトロル怒鳴って、ダメ、バカ、言った。ケイラーの罠だ、言った。トロル、互いに戦いあった。オレたち食おうとした。ケイラー、止めようとして言った、待って、私の言うこと聞いて。トロルは聞かない、ただ戦う。ミフ、トロル殺して燃やすの手伝った(でも腕一本盗んで食べた。筋だらけ)。ケイラーと他のニンゲン、トロルに網かけて鎖でしばった。いまはヤツらキャンプに閉じ込められた。ケイラー、ブラザー・へファーナンに悲しい言った。「私のゴーマンがたくさんのツミナキ死のもとになった」言った。ブラザー、それはケイラーのせいじゃない言ったが、でもミフ、ケイラーのせいだ思う。
その20
”ライトニング”言われる大きなセレモニーが今夜あったが、でもカミナリはなかった。ただ大きな火があって、オレたちみんな歌った。ブラザーが始めて、オレたち彼の言うとおり言った。みんな、光が見えた叫んだ。ミフは光見なかった。でも体の中に光あった。ミフの胸の中に火が燃えた。熱くて強い感じ。ケイラーが出てきて、その目は炎みたい。トロルは金のため働くと言ったほうがよかった思う。
その24
ケイラー、オレたちを古い城に行進させた。彼女はミフの所来てまた手を肩においた。彼女いい匂い、でも獲物の匂いとは違う。強い。彼女言った、ミフ、トロルを一列に並ばせて、頼りにしてる、と。中の火がまた燃えた、”ライトニング”の夜みたいに。オレ、気をつけてトロルをまっすぐ一直線に歩かせた。誰もオレたちを食わなかった。キャンプの時に止まったら、ケイラーが言った、よくやった、ミフ。群れのやつは誰も、よくやった、ミフ、言わない。
その30
城に行く道の途中、ミフのふるさとを通り過ぎた。群れは丘に隠れてる。ポケットは金でいっぱいだけど、オレは群れに戻らない。あいつらは中に火がないし、もしミフが出てったらケイラーが悲しむだろう。トロルの面倒は誰が見る?ミフにはここで大事な仕事がある。ミフはケイラーをガッカリさせない。
*イーノグは二足歩行の狼人間じみたデーモン。デーモンの中でも強力で、デーモンロードのひとり。殺戮と破壊しか念頭にない悪魔。ノール(二足歩行のハイエナ人間じみたモンスター)に厚く信仰されている。すなわち、この日記の書き手は十字軍内のノール。