見出し画像

家づくりのお金は詰まるところ3つだけ抑えていれば良いということ

住宅会社でもなく、不動産屋さんでもなく、純粋に第三者として家づくりの相談、アドバイスをしている福田の本音の家づくりシリーズ。

今回はお金の話。
果たして家の予算ってどのくらいが良いんだろうか。家のお金の失敗ってどんなことだろうか。
そんなことを考えてみます。

ーーー

まず典型的な失敗例としては、
1. 人生全体のスパンでお金を考えられていない
2. 分割払いの感覚が分かっていない
3. 家族としての価値観が固まっていない
この3つが家づくりのお金の失敗だと僕は思っている。
逆を言えばこの3つさえきちんと抑えられていれば、住宅のお金で失敗ということはないでしょう。

ーーー

まず、1の人生全体のスパンでのお金の考え方ということ。

年収500万円の家庭の場合、20歳から60歳の40年間働くとしたら、単純計算で2億円の収入となる。
さて、そういう家庭が、土地と家とその他の諸費用を合わせて5000万円で家を建てたとしたら、人生の4分の1を家に使うことになる。
つまり、1日8時間働くとしたら、毎日2時間は家のために働いているということになる。

これが自分たちにとって適正かどうかという視点で考えられているかというのが問題になる。

別にこれに普遍的な答えはない。
ただ、そういう視点で金額を捉えられているかというのが問題だ。

ーーー

住宅会社と話していると、こんな話がほぼ必ず出てくる。順に考察していく。

「最近は奥さんと共働きの家庭の方が圧倒的に多くて普通ですから」
これは確かにそうなのだが。
実際には、子育てなんかも考えると、奥さんが働くのが難しい期間というのが出て来る。
その期間のことも考慮する必要がある。
さらに、今は正社員でバリバリの女性も、産休、育休と取ったあとに元通り復帰できる人もいるが、パートになる人も少なくない。
夫婦共働きで、二人ともバリバリの正社員という収入で想定すると、将来的に破綻する可能性が高くなる。
破綻とまで言わなくても、将来の選択肢を自分たちで狭めてしまう。
働くだけが人生じゃない。

すごく極端な話だけど、住宅会社のトップセールスだけどウツになって辞めてしまうということありうるわけだ。
まあ、僕がそうなんですけどね。
そんな時に、限界ギリギリで住宅ローンを組んでいたら、もう選択肢はほとんどない。自分を追い込んででも、また住宅会社でハードな営業に復帰して、精神を削ってお金を稼ぐという生き方か、あるいは家を手放すという選択肢か。
僕の場合は、住宅ローンはかなり安く余裕を持って組んでいるので、無理はせず、自分のやりたい仕事、大工の道を進みながら、フリーで家の相談を受けるという選択肢が取れました。

夫婦がバリバリの正社員で、元気に働き続けられるというのも良い人生ですが。
それ以外の選択肢もある人生を残しておくって、僕は大事だと思います。

ーーー

「今の収入だけで考えてしまうと、特に若い人はまだ昇進していないので安過ぎる予算になりがちです」
「若いうちに建てれば、アパートの家賃の分、ロスが少ないですから」

この2つは、確かに間違ってはいない面もある。

ただ、将来的に収入が増えても、支出も増えるかもしれない。
アパートの家賃を払わなくても良くなったって、若いうちに建てたら修繕のお金は多くかかる。
例えば20代前半の人が建てると、定年の頃には家は築40年だ。人生百年時代、築80年まで住む必要がある。
昨今の家は、100年耐えられるように長期優良住宅という仕組みも出て来ている。長期優良住宅として認定を取るには手続きが煩雑だったり、10年ごとの点検、修理が義務になるので、実際に取得する家は多くはないが、手続きなどさえしたら長期優良住宅が取れるように今の家の大半は作られている。
そのくらい今の家は、どこの住宅会社で建ててもそれなりにきちんとしていると考えて良いと思う。
もちろん、大なり小なり違いはあれど、最低基準はきちんとしている会社が圧倒的多数派だ。

それでも、100年耐えられるのは、定期的な点検修理できちんとお金をかけているという前提ありきだ。
車だってそうだけど、車検やメンテナンスをしていなかったら、長持ちしない。
不思議と家は建てたら、あとのメンテナンスなんかってしない人が多数派だし、国も特に義務なんかを設定していない。

まあ、とにかく長く住めば、あれこれ修理するところも出て来る。
早く建てれば得になるとか、将来的に収入が増えるとか、そういうことは、確かに事実の面もあるけれど、都合の良い方にばかり取ると良いことにならない。

ーーー

本当の意味で、人生全体というスパンでお金を考える必要がある。

一昔前は、家と車のローンのために生きるって多かった気もする。
立派な家に良い車。
時代ダナー、と正直思う。

でも、昨今はそうでもないだろう。
車にそんなにこだわる人も少なくなった。
家についても、昔は大手ハウスメーカーで高いところで建てることが、安心感という面もあったし、よく分からない小さい地方の会社で安い家を建てるなんてみっともないなんて価値観があった気もする。

もう一昔前になるとバブルなんかで、とにかく無駄に派手な家って多かったみたいだけど。

人生全体のお金の考え方っていうのも時代とともに変わりつつある気がする。

ーーー
ーーー

2の分割払いの感覚が分かっていないということ。

これは、年配の方も失敗しやすい。
年配の方の場合、住宅ローンは使わない、あるいは部分的に使うということも多い。

ただ、何千万円という金額を月々の金額に換算した考え方、あるいは月々の金額を総額の金額に換算するという考え方が苦手な人は多い。

ーーー

たとえば、分かりやすいのがスマホ、携帯電話のお金だ。

家のすべての床を無垢にするのに、プラスで50万円かかりますっていう話になったとする。
「え、50万円は高いな」
と感じる。
でも、使っている電話はドコモで毎月一万円くらい支払っていたりする。

別にドコモが悪いとは言わないけれど、昨今の格安スマホなら月に2000〜3000円程度でも運用できる。
つまり毎月7000円くらいは差が付く。
年間で84000円。10年で84万円だ。
夫婦でドコモに毎月一万円払っているとしたら、168万円になる。
まあ、あくまで単純計算なんですが。

ーーー

逆の話も然りで。
「150万円っていうと、大きな金額のように聞こえるかもしれませんが、35年でわったら、年に43000円、月に3500円ほどです。ずっと住む家だから、毎月そのくらいの金額の差だったら、気に入ったことをした方が後悔は少ないですよ」
っていう論法もできる。

ただ、これもなんとも怪しい。

家の話に限らず、Amazonのプライム会員や、音楽の聴き放題サービス、YouTubeプレミアムなど。毎月支払うサブスクのサービスは、一見すると小さい金額でも、長期的に見るとかなり大きい金額になることも多い。
(完全に余談ですが、音楽は下手に聴き放題のサービスを使うよりも、本当に気に入ったアルバムは購入してしまう方が良いと僕は個人的には考えています。購入するほど気に入っているわけでもない曲は無料のYouTubeで十分と)

ーーー

やっぱりこれも正解、間違いということはないんだけど。

大きい金額で、使う期間も長いので、普通の買い物なんかとは少しお金の考え方の感覚が違う。
分割払いに換算して、それが適正かどうか判断できる感覚は重要になります。

ーーー
ーーー

さて、話が長くなってますが。
3の家族の価値観が固まっていないという問題。

ここまでの話も含めてそうなのですが。

「家と土地を含めて5000万円って、高いと思いますか?」
と聞かれても、答えはないんです。

当人たちの価値観に合っているかどうかというのが全てなのです。

たとえば、話をわかりやすくすると、
「フェラーリって高いから、買ったら損かな?」
という話を考えてみましょう。

本当にフェラーリが好きで、高い金額を出して、他のことがカツカツになったとしても、満足できるなら、決して損な買い物じゃないでしょう。
仮に、収入が少ない人で、フェラーリのせいでその他の生活がかなり厳しくなったとしても、当人が満足できるなら、それはアリなんです。

まあ、フェラーリだと金額が高すぎて、さすがにそこまではカツカツどころか、借金地獄で破綻するって話になっちゃいますけど。

百万円の自転車なんかの方が分かりやすいかもしれないですね。
当人にとって価値があるなら良い買い物。
逆に当人にとってそんなに価値がないなら、仮にお金持ちで百万円くらいならさほど気にならない人でも、あんまり良い買い物とは言えない。

ーーー

家の場合、住む家族の価値観に合うかどうかっていうのが難しい。
個人の価値観なら、
「自転車が好き、フェラーリを愛している、そのせいで貧乏になったって良い」
と考えることもできる。

ただ、家の場合、
「3畳のランドリールームを作るかどうか。家が1.5坪大きくなるから130万円高くなる」
というのをどう考えるか。

「洗濯物なんか、リビングに干せば良いじゃないか。あるいは寝室でもどこでも良いじゃないか」
「いやいや、リビングなんかに干したらかっこ悪いし、寝室まで干しに行くのも大変だから。ランドリールームを作って、そこで干したら、片付けるのも楽でしょ。130万円の価値はあるよ」
なんて具合に意見が分かれる。

意見が分かれて、口論になるなら良い。
だけど、現実には、
「リビングに干せばいいけど、そんなこと言うとケンカになるしなぁ。まあ、最近の家ではランドリールームを作るのも一般的になりつつあるって聞くし、まあ、必要経費ってやつか」
なんて具合で心の中で思って口に出さない。

ランドリールームに限らず、土地にしても、
「車で生活したら、10分も変わらないくらいの立地なのに、そこで何百万円も高い土地はつらいなー」
「老後、車の運転が大変になるかもしれないんだから、何百万円か高くてもやっぱりあの土地が良いな」
と言った具合で、価値観の揺れが出て来る。

ーーー

若い人の場合、家を作るタイミングは家族の価値観を作るタイミングの一つとも言える。

ここまで出てきた、人生全体というスパンで考えること、分割払いの感覚を理解することを踏まえた上で、本当に自分たち家族にとって、その金額は適正なのかということを考える良い機会とも言える。

年配の人の場合、それまでの人生を振り返って家族の価値観を確かめるタイミングとも言える。

どちらにもそれぞれ難しさがある。
若い人なら未来の予測という難しさがあるし、年配の人なら夫婦の落とし所みたいなものを探っていくような難しさがある。

ーーー
ーーー

昨今は物価の上昇や住宅の高性能化もあって、ここ数年で家の金額も随分と高くなった。
住宅会社のチラシなんかを見ると、オススメプランの坪数なんかが数年前よりも5坪くらい小さくなっている。
数年で一般人の年収が何百万円も増えるわけがないので、買える家の金額だって大幅に増えるわけもない。家の金額が高くなった分、坪数を小さくして、金額を調整しているというわけだ。

だから、一昔前の常識で家の広さを考えると、大抵の場合、予算が大きく膨らむ。
一昔前は、寝室は8畳、子供部屋6畳だったけれど、今は主寝室6畳、子ども部屋4.5畳が普通だ。
さらには、クローゼットの扉なしも増えた。
扉も一箇所で何万円もするので、その分、コストを削減しているわけだ。

言うなれば家つくりの常識は随分と変わっている。
数年前に建築した人のアドバイスを聞いても、全く通用しないどころか、マイナスになる可能性さえある。

ーーー

NISAの緩和で投資も随分と浸透したり。
昔みたいな終身雇用と昇給も揺らいでいる。良い企業に務めているから、年収がこのくらいだから、住宅はいくらぐらいで建てるのが妥当という考え方も怪しくなりつつある。
過度に断熱を気にし過ぎたり、一昔前じゃ普通じゃありえなかったような巨大なリビングやランドリールームが普通になったり、家づくりで悩む要素は増えている。

家づくりに限らずお金の知識というか、判断基準を自分の中に持つっていうのがますます重要になりつつある時代なのかもしれない。

自分たち家族の価値観をしっかり持って、人生全体というスパンで、分割払いの感覚を持って判断する。
つまるところ、そこが出来るかどうかこそが家づくりのお金で上手く行くかどうかの分かれ目になると思います。

いいなと思ったら応援しよう!