#ボカロ曲10年10選

選出基準は「今現在もことあるごとに聞いてる曲」です。つまり2017/8/30現在の、私のニコニコの視聴履歴や、iPhoneに入ってる曲リストやツイッターなんかに貼ったりしてる曲の中から、投稿時期それぞれの年から1曲ずつ。1曲に絞るのに最も苦労したのが2008年と2014年でした。なるほどなあ…
ボカロの歴史を辿るという意図は殆どない、というか無理だな!とだいぶ早い時点で気づきました。自分史でもあり、私の好きな音楽はずっと主流ではないかもしれないけど最初からずっと存在してたんだ、と確認するかのような10選になりました。あと当然ミク発売10周年ではあるのだけど、ミクだけでもボカロだけでもない感じ。

2007
初音ミク オリジナル曲「Frogging Dance」(いきなりまとも歌詞Ver.)
http://nico.ms/sm1771019 

今見るとあまりに多くの分岐を含んでいる…3DCGへの、ニコニコ技術部への、自己言及的な世界観への、さらに、KAITOのラップなど音楽的な実験も。示唆的、あまりに示唆的であり予言的で…だって2007年ですでに「醜い楽園で カエルだけのダンス」を踊っている、という世界観はあったんだよ。再生数に翻弄される作り手の姿はもうここにある…

2008
【初音ミク】 HAL 39000 【オリジナル】 
http://nico.ms/nm4703215
 
私自身がどっぷりハマれる、大好きな世界観のひとつ。この曲を見つけたときはどんなに嬉しかったか。仲間がいる、ここには私と同じようなツボを持つ人もいるんだ、と強く確信できた嬉しさをよく覚えている。この音域の、あんまり高くない、地声っぽい声で歌うミクの可愛らしさと凄みとツクリモノっぽさとか全部好き。あとミクに「人間風情が」って言われたい一派は今も確実にいると思うんですけど割と早い段階で実現してたよっていう証言を提出するみたいな気持ちで選びました。

2009
【初音ミクオリジナル曲】*ハロー、プラネット。【ドットPV】http://nico.ms/sm7138245
 
ささくれさんも多くの分岐を作った人だろうなあ、連作楽曲によって構成される世界観とストーリー、ChipTuneやニューウェイブを踏襲した後のEDMへの萌芽…オハヨーハヨーという朝の挨拶は今もボカロクラスタの一部では定番である。

2010
【重音初音】BitCrushe【オリジナル】
 http://nico.ms/sm10913882
私自身がボカロに多少慣れはじめたというか、俯瞰の欲求が強くなって色々見てみたい聞きたいと広さに貪欲になっていた時期と記憶している。でもやっぱりベース基地というか住処は「好きなところ」で、その好きなところにいる人たちが元気で楽しかった。というか、後から思うと結局私はこういうのが好きなんだな!と再確認してた時期かもしれない。

2011
【SF-A2開発コードmiki・KAITO】iNSaNiTY【VOCALOIDオリジナル曲】
http://nico.ms/sm14137534
まだ広さに貪欲な時期が続いています。が、多分ニコニコ動画に少し疲れて?きていたのか、コメントオフにして聴くのが普通になっていたり、YouTubeと行ったり来たりしていて「ニコニコっぽくないボカロ曲」をより強く求めていた時期だったのかな、という感じ。

2012
【PV付き】初音ミクオリジナル『憂鬱のスキッツォイドマン』【PELIE】
http://nico.ms/sm16799739
もうボカロっぽいとかそういうことはかなりどうでも良くなっているっぽい(私が)。ボカロ、ボカロキャラに「託す」ものがどんどん深化分化していって、超ソリッドでピンポイントなヒリヒリするようなスリリングな曲が多くなって(きたように私には思えた)いて、いいぞいいぞそういうのもっとくれ!

2013
【初音ミク】 アワオドリ 【オリジナル】
http://nico.ms/sm21691232

ボカロに初めて触れた時に近い、「これはなんだ?」「これすげえものじゃないのか?」「これに似たものはもう出てこないけど、これがなかったらこの先存在しないものがいっぱいあるのでは?」「これを今よく噛まないと私に必要なのにとりこぼすものがあまりに多いのでは?」みたいな衝撃を伴った予感。個人的にはこの感じ全部正解だった。予感あってた。あと爆音でなんかこう色々洗い流したいみたいな時あるじゃないですか、そういう時いつも聞く曲。

2014
【神威がくぽ】 Alphard 【オリジナル曲】
http://nico.ms/sm24129871 

初めてこのボカロPのアルバムが欲しい!と思って買いに行ったのはすずきPです。なのでこの曲は私にとっての「王の凱旋」なんですよね。2年ほどですけども間が空いてて、忙しいのかなもう曲作ってらっしゃらないのかしらと思っていたところに突然の100%すずきPな曲が来て、そりゃもう大喜びしたものです。王ー、こういうのもっと聞きたいです王ー(馴れ馴れしい

2015
【オリジナル曲PV】ゴッドオブマリー【初音ミク・GUMI】
 http://nico.ms/sm25598618

えっこれですか!大好きですけど!!このリストの選出条件に照らすと2015年はこの曲です。いや最高でしょ、あったまわるい感じに吹っ切れて下品で刺激的で、メンタルよりフィジカルに効くことだけを目指したようなドスケベ曲ですよ。恥じらいとか萌えとかを突き抜けたやつ。セックスドラッグロックンロール!勿論これは今や絶対に主流になりえる流れではないけど、音楽、特にダンスミュージックの存在理由のひとつではあるからさ、スケベって。いやもうほんとボカロの主流とかどうでもいいとこでボカロを愛好しすぎだ私。まささんのこの不潔な曲シリーズ大好きです、新曲たのしみ。

2016
【MV】煙の殺意
http://nico.ms/sm28119367

ていうか松傘さん。松傘さんのにゃむにゃむミク。にゃむにゃむミクは私が言ってるだけですけど、この人独特のこのミクのラップが、アートワークと相まってすごく可愛いと思う。可愛い。すき。Tシャツとか欲しい。でもにゃむにゃむミクのビジュアルじゃなくてなんかこう、脱いだ靴とか舌先だけとかのやつがいい。キャラ萌えが下手な自分だけど、にゃむにゃむミクは、なんかこう、存在に萌えている。音楽としてもすごく刺激的なんだけど、なんていうか、その刺激に負けない感じでにゃむミクがつよい。小説の登場人物が見た夢の話の登場人物、くらいにすごく遠い次元の住人なのに確固。この時期にこんな風にキャラ萌えともなんとも自分でも判別付けにくいものと出会えるなんて思ってもいなかった。

2017
【UTAUオリジナル曲】 シニカルスワイプ 【逆音セシル】
http://nico.ms/sm30872809 

8/30現在でこの曲です。この曲もセシルのクオリティもすごいんだけど、ボカロとずっと並行していたと思われるUTAUが、だからこそなのかボカロとは全く違う流れを作り上げている現在。すごいなあ、10年か、ほんとに10年経ったんだなあ…


改めてこの10年を俯瞰できる人なんているんだろうか、という話。
どうなんでしょうか、語りきれる人はいるんでしょうか。初音ミクが発売されて10年、何が起きたのかそれはどんな意味を持っているのか、語り始めたら尽きないけれどそれ故にすべてを語れる人はいないんじゃないか、と思います。当然、自分も語れる気はしません。

なんでそんなふうに思うかを少し。

ボカクリや聴き専ラジオや、色んなとこで何度も言ってきたことですが、私自身はボカロの歴史というものは、段階的成長でも単なる拡散でもなく、多面的で螺旋の成長をするものだと思っています。

イメージとしては、南米の巨大な密林の中を流れるアマゾン川(ドットコムじゃないほう)みたいな、無数の支流を持つ大河のような。
だってそうでしょう、ニコニコ最古のミクオリジナル曲とされる「迷惑なあなた」から、いったいどれだけの分岐を経たら今の状況があるというのか!誰が予想できると!!
最初期からいる人でも後から知った人でも、初めて知って初めて好きになった楽曲や要素は色々で、そこから様々な経過を経て、10年たった今、むしろやっとおぼろげに「主流」と「それ以外」のようなものが見えてきた、というところじゃないかなと。
このある意味、見通しの悪さみたいなものが、密林を流れる大河のようだなあ、と。自分が何かの流れに乗っていることも他の流れが存在することもわかるけれど、森は深く見通しは効かず、それ以前に今いるこの流れを追い続けるのが(楽しいから)精一杯、みたいな状況が、正直なところ私の実感です。(このへんはボカクリ1号にて『地図を読むかのように』と題してまとめました)あと自分がいる流れがいつのまにかどこかから違う流れが合流したりしてることも、あとからでないとわかんないんじゃないでしょうか。私多分それかなり後までわかんなかったと思います。

それでもまあ、私はその「いろんな流れ」があることに気づいてからは、他のとこも!他のとこも見たい!と無理矢理木に登って自分の知らない支流を見ようとした時期もありますが、なんつーかやっぱり、その支流の住人にならないとその支流を深く思い入れて、深く知ることはできないのかもなーみたいな結論になりました。

だってアマゾン川の上を飛ぶ鳥は、アマゾン川の全貌を見ることは出来るけど、各支流の水の勢いや、匂いや、聞こえる物音や、住む魚は、その支流に降りてその流れに浸らなければ知りようがない。川の流れに泳ぐ魚は、その流れを知り尽くしていてもその川の全容を空から見ることはできない。

初音ミク発売10周年、おめでとうございます。ありがとうございます。10年泳ぎ続けて思うことはそんなとこです。きっと明日も明後日も来週も来月も来年もこの大河は流れ続け、願わくば、次の10年まで。


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