【ニンジャ自由研究】鍾乳石を高速移動させる
この記事はダイハードテイルズが開催するニンジャソン2023夏への応募作です。
私はローカルグループでニンジャスレイヤーTRPGをプレイしており、毎日すごい量のニンジャを生成しています。大抵の場合、特徴的な(しかし大して強くない)要素をいかに活用するかに焦点があてられており、謎めいた挙動のニンジャが生まれることもそう少なくはありません。
要するに、下記の記事で言う「ケビン行為」を行っているわけです。
そんな環境において、周囲のニンジャけんきゅうしゃの中で一時期話題となったのが『スタラグマイト・ジツ』の活用方法でした。この記事では、その『スタラグマイト・ジツ』に関する奇妙なけんきゅうレポートをお届けします。
スタラグマイト・ジツとは
そもそも『スタラグマイト・ジツ』とは以下のような、ドトンに類する変身系のジツです。ニンジャスレイヤーTRPGのデータ・テキストによると、「自身の体を鍾乳石に変化させつつ、周囲にも複数の鍾乳石を発生させ擬態する」ジツとのことです。
ちょっとセコい印象もありますが、周囲にまで影響を及ぼしフーリンカザンを強引に構築する、かなり強力なジツのようです。
TRPGのデータによると……
ニンジャスレイヤーTRPGのデータ上、『スタラグマイト・ジツ』はキャラクターが高い【ジツ】ステータスを持たないと取得できない上位級のジツとなっています。なかなかの強ポジションです。
そして実際の効果はというと『ムテキ・アティチュードと同等のダメージ軽減能力を得る』かつ『擬態効果で常に敵の不意打ちができる』というもの。
すごくパワフルにも思えますが、実際には効果発動中『攻撃を回避できなくなる』『移動力が強制的に1となる』という癖の強いペナルティがついてきます。そりゃそうです。鍾乳石が機敏に動き回るなんて奇妙な話ですからね。
しかし、ニンジャけんきゅうしゃたちは『移動力が強制的に1となる』というペナルティに着目し、これをなんとか克服できないかと試行錯誤を始めます。この記事の本題はこれです。
弱点を克服する:スタラグマイト学派の誕生
『スタラグマイト・ジツ』は強力な効果を持ちますが、近接格闘型のニンジャがこれを活かすには敵に近づくことが必須条件です。射撃型のニンジャでも、相手が物陰に隠れると射撃ポジションを変えなくてはなりません。
そんな理由から 『効果発動中は移動力が強制的に1となる』 という弱点をこくふくする方策を、ニンジャけんきゅうしゃたちは頭を捻って考え始めます。そして最終的に枝分かれして誕生したのが「ジェット鍾乳石学派」「サモン鍾乳石学派」「スレンダー鍾乳石学派」の3流派です。
◆ジェット鍾乳石学派
この学派の基本りろんは「スタラグマイト・ジツによる移動力ペナルティの影響を受けない方法で移動をすればよい」というものです。
具体的に何を用いるのか?
それはジェットパックです。ニンジャスレイヤーTRPGには胴体用の高額なサイバネティクスとしてジェットパックが存在しており、これは「使用者の移動力を無視した長距離の飛行移動」を可能とします。
つまり、この学派では「鍾乳石を飛行させる」ことに主眼を置いているのです。他のバリエーションとして、バイオサイバネによって胴体から翼を生やしたり、脚部サイバネティクスに飛行用バーニアを大量積載したりすることもあります。とにかく、彼らは鍾乳石を飛ばすのです。
鍾乳石に擬態した本人だけが飛ぶのでしょうか。それともジツは意外と融通が利き、本人と共に生成した鍾乳石も追随して空を飛ぶのでしょうか。ちょっとよくわかりません。
◆サモン鍾乳石学派
モーター鍾乳石学派とも呼ばれます。この学派の基本りろんは「他人に運んでもらうことでスタラグマイト・ジツの移動ペナルティを無視すればよい」というものです。
具体的に何を用いるのか?
それはモーターサイクルです。ニンジャスレイヤーTRPGにはインテリジェント・モーターサイクルやサイバー馬を召喚し騎乗するスキルが存在しており、これは「使用者の移動力を無視した長距離の轢殺移動」を可能とします。
つまり、この学派では「鍾乳石を爆走させる」ことに主眼を置いているのです。伸びしろがないという問題はありますが、モーターサイクル騎乗とスタラグマイトのペナルティを相互に相殺するのがポイントです。とにかく、彼らは鍾乳石を爆走させるのです。
座席から鍾乳石を生やしたモーターサイクルが爆走します。生成した他の鍾乳石も地面を高速移動してついてくるのでしょうか。モーターサイクルが鍾乳石でトゲトゲになっている可能性もあります。もはや呪いの石かなにかです。ちょっとよくわかりません。
◆スレンダー鍾乳石学派
この学派の基本りろんは「スタラグマイト・ジツによる移動力ペナルティの影響を受けない方法で移動可能距離を伸ばせばよいのでは」というものです。ジェット鍾乳石学派と比較すると真っ当に思えます。
では具体的にどうするのか?
脚を死ぬほど長くします。ニンジャスレイヤーTRPGには脚部用のサイバネティクスとして、最大伸長2mの延長脚やニトロ加速装置付きのローラーブレードが存在しており、これらは「移動力ではなく移動可能マスを直接増加させる」という効果を持ちます。
つまり、この学派では「鍾乳石の歩行効率を上げる」ことに主眼を置いているのです。脚部にローラーブレードとニトロを増設し、それを2mに延長、さらに条件付きで移動可能マスが増えるスキルをひたすら掛け合わせます。とにかく、彼らは鍾乳石の歩行効率をあげるのです。
鍾乳石から2mのサイバネ脚が生えているのでしょうか。見た目は完全に細長いキノコです。ドトンの系譜としては正常な気もしてきます。ちょっとよくわかりません。
実際どれぐらい高速移動できるのか
気になりますよね?実際に調べてみました。
標準的なジェット鍾乳石ビルドです。ジェットパックによって飛行移動を行います。サイバネティクスにそこそこのコストが必要ですが、『◉空中制動』によって斜め移動も可能で、手堅く長距離移動ができます。
NPC用スキルの『◉◉タツジン:エアロカラテ』を組み込んだ鍾乳石ビルドです。エアロカラテはオムラ社のクラウドバスター=サンなどが用いる、空中戦に特化した戦闘スタイルです。
他の移動スキルをジェットパックの飛行移動に組み合わせられるので、さらに移動距離を伸ばすことが可能です。さらに『急降下攻撃』を使用すれば20マスの移動に加え着弾ダメージを与えられます。もはやミサイルです。
ジェットパックだけではなく、脚部に飛行用のバーニアを増設する鍾乳石ビルドです。とんでもない距離を飛行できるようになりますが、サイバネの購入コストがとてつもなく重たいのが弱点です。ロマンはあります。
ジェットパック+バーニア+タツジン。これはとんでもない鍾乳石です。擬態した鍾乳石群が19マスを縦横斜めと自由自在に飛び回ります。もはや擬態による不意打ちというより、鍾乳石が高速ジェット飛行してくる事態に動揺を誘っているに違いありません。
バイオサイバネと鍾乳石の相性はあまり良くないようです。無機物と有機物の相性の問題でしょうか。どうしてもこれ以上、移動距離を伸ばすことはできません。やはり部分的に鍾乳石に変身しつつ羽を動かすというのは困難なのでしょう。
再びバイオサイバネを組み合わせた鍾乳石ビルドです。『ネコ科の下半身』は3マス以内にジャンプして移動できるという特殊な効果を持っており、移動先に敵がいるとダメージを与えて強制的に押し出せます。
移動距離は3マスと物足りないですが、追加効果のお陰でユニークな仕上がりになっています。鍾乳石の50%がネコチャンとなりカワイイのも見逃せません。
脚を長くするスレンダー鍾乳石ビルドです。ひたすら移動可能距離を伸ばす要素を詰め込み、地上をノシノシと大股で歩行させます。ニトロターボには追加コストが必要ですが、全長3メートル超の鍾乳石を歩行させたい人にとっては些細な問題でしょう。
動きが鈍くなるならタツジンのワザで補えば良い。そんなスレンダー鍾乳石ビルドの亜種です。タツジン:イアイドーでは、カタナで防御構えを取りながら高速で駆ける『カスミ』という特殊な歩法が使えるようになります。
これによる移動距離のUP効果に従来のスレンダー鍾乳石をかけ合わせることで、カタナによる戦闘スタイルと防御性能、そして移動力を確保できるなかなか実践的なビルドがこれです。
鍾乳石が2m超の長脚でカタナを構えて高速で迫ってくるのですから、相手もなかなか動揺せずにはいられないでしょう。
モーターサイクルを召喚して自身を運んでもらう鍾乳石ビルドです。召喚スキルはハッカー系スキルなので、基本的にはLAN端子の埋め込みなどが必要になります。ほぼWi-Fi像です。
召喚できるバイク//サイバー馬は14マスも移動可能で、移動中に通過した敵を轢殺することもできます。さらに、バイクに乗ることで発生するペナルティ(例えば攻撃難易度UP)をスタラグマイト・ジツの不意打ち効果などで相殺できるため、シンプルながらそれなりに強力な仕上がりとなっています。
移動距離のまとめ
ここまでの鍾乳石ビルドの移動距離をリストで見ると、次のような順位付けとなります。興味深いけっかです。
しかしながら、移動距離だけをひたすらに伸ばしてもどうしようもないため、実用性の面では「手軽に移動距離を伸ばせること」と「付加価値があること」も考慮して、手軽さ強さとの両立を図るのがベターです。
これをコストが安い順(手軽な順)に並べ替えてみると、次のようになります。最上位層と最下位層がほぼ逆転しました。
では費用対効果の面ではどうでしょうか。ここでは単純化のため、キャラクターに要求される能力値(カラテなど)を考慮せず、必要なサイバネとスキルの数からSIAK( Stalagmite no Idouryoku wo Ageru Kouka sisu)を算出し、昇順で並べ替えてみます。
SIAKが高いビルドほど、コストに対して得られる移動距離+効果が高いということになります。たいへん興味深いけっかです。
初めての鍾乳石
もし貴方が鍾乳石ニュービーとしてこの世に生を受けたのであれば、SIAKにこだわらず、まずは次のような最低限の構成からスタートするのがオススメです。サイバネが2個、スキルが1個と手軽ながら、鍾乳石を7マスも移動させることができてしまいます。
スタラグマイト・ジツの強み
ここまでは弱点を補う話ばかりをしてきましたが、最後にスタラグマイト・ジツの強みとそれを活かす方法についても少し触れたいと思います(TRPGのデータ寄りの話になります)。
スタラグマイト・ジツの強み/弱みを簡単に整理すると次のようになります。
1つ目の強みは非常にわかりやすいですね。攻撃判定の成功率が低い大型武器の攻撃や、連打系のワザが命中しやすくなる効果があります。敵が崩れ状態(≒不意打ちなどで体勢を崩している状態)で発動する追加効果の仕込みにも使用できます。
しかし、重要なのは2つ目の強みです。『ダメージ軽減』効果を持ったまま行動できる要素は極めて限定的であり、それも『ダメージ軽減2』となるとスタラグマイト・ジツの他にはムテキ系のアーチ級のジツしか存在しないのです。
これはたいへんなことです。
何ができるのか
残念ながらすごく頑丈な状態で行動できるからといって、すごく強いかと言うとそこまで強くありません。
ですがニンジャスレイヤーTRPGには、極めて強力な効果を発揮する代わりに、その捨て身の行動によって回避やジツの発動が一切できなくなる攻撃が存在しています。つまり、捨て身の攻撃の後にムテキ・アティチュードを発動して防御!という戦術が取れないわけです。
もうお分かりでしょう。スタラグマイト・ジツはじっしつ最上位の『ダメージ軽減2』を発動しながら攻撃できるため、捨て身の攻撃によるリスクを最小限に抑えることが可能なのです。
ではここで、ジツの処理について簡単に見ていきましょう。
ムテキは敵の攻撃に対する防御などで発動可能ですが、自分の行動の順番が回ってくると強制的に解除されてしまいます。つまり、『ダメージ軽減』効果を持ったまま攻撃することが基本的にできません。
一方のスタラグマイトは、自分の行動の順番が回ってきたとき、追加でコストを支払うことで『ダメージ軽減2』の効果時間をさらに延長することができるのです。
組み合わせられるもの
スタラグマイト・ジツによるリスクヘッジ効果と相性が良い「捨て身の攻撃」には以下のようなものがあります。
もし貴方が鍾乳石ニュービーとしてこの世に生を受けたのであれば、これらの採用を一度検討してみてください。
◇サンプルNPCデータ:カッレンフェルト/Karrenfeld
このニンジャは「スレンダー鍾乳石」のコンセプトを元にした、シンプルに強力な中堅級のスタラグマイト使いです。28ptスクラッチで作成したキャラクターを1~2段階強化した程度の強さでしょうか。
比較的高い水準の攻撃ダイスと回避ダイス、体力を持ち、さらにスタラグマイト・ジツにより並の攻撃は無効化してしまうという頑強な設計になっています。サイバネにより鍾乳石状態でも最低4マス、最大6マス移動でき、重機アームによって敵を轢き殺すこともできる油断ならないニンジャ・エージェントがカッレンフェルトです。
◆カッレンフェルト (種別:ニンジャ/重サイバネ)
カラテ 9 体力 11
ニューロン 2 精神力 6
ワザマエ 4 脚力 5/UH
ジツ 4 万札 -
近接D:11、射撃D:-、回避D:13、発動D:6
◇装備や特記事項
サイバネ:『▶生体LAN端子Lv1』、『▶▶テッコLv2』、『▷▷重機アーム』
『▶▶ヒキャクLv2』、『▷ローラーブレード・ユニット』、『▷スレンダーレッグ』
防具 :『ブードゥー』
スキル :『●連続攻撃2』、『●疾駆』、『●脆弱性:電磁(1)』、『◉重サイバネ化』
『◉◉◉忠誠心:オナタカミ』
『☆ドトン・ジツLv3』、『★スタラグマイト・ジツ』
『重機アーム』:
近接武器、ダメージ3、攻撃難易度:HARD、連続攻撃上限2、装甲貫通1、ターゲット1体固定
『●大雑把な破壊』:
「サツバツ!」が発生したとき、本来の効果の代わりに「痛打+D3」を得ても良い。
「ナムアミダブツ!」の場合、これは「痛打+D3+1」となる。
『●重機の轢殺』:
このニンジャは通常移動時、敵のマスを通過して移動できる。
移動終了後、通過した敵2体までに轢殺による1ダメージを与える(回避NORMAL)。
◇サンプルNPCデータ:ショール/Schorl
このニンジャは「サモン鍾乳石」のコンセプトを元にした、シンプルに強力な中堅級のスタラグマイト使いです。カッレンフェルトとおおよそ同じぐらいのレベル帯の強さですが、かなり堅実な性能をしています。
モーターサイクルを召喚し、敵を轢殺しながら電磁クローアームで敵を引き裂くのが基本戦術で、常時スタラグマイト・ジツを発動しておくことを想定しています。ジツの行使はダメージを受け始めてからにするのも有効でしょう。格上相手にもスタラグマイト・ジツでリスクを最小限に抑え、電磁ショック発生ユニットと一瞬の勝機で果敢に切り込めるのが面白い構成となっています。
◆ショール (種別:ニンジャ)
カラテ 10 体力 10
ニューロン 6 精神力 9
ワザマエ 5 脚力 5/N
ジツ 4 万札 -
近接D:12、射撃D:5、回避D:12、発動D:10
◇装備や特記事項
サイバネ:『▶生体LAN端子Lv1』、『▶▶テッコLv2』
『▷電磁クローアーム』、『▷電磁ショック発生ユニット』
スキル :『●連続攻撃2』、『◉◉グレーター級ソウルの力』、『◉一瞬の勝機』
『◉電子デジャヴの読み取り』、『◉サモン・モーターサイクル』
『☆ドトン・ジツLv3』、『★スタラグマイト・ジツ』
『◉サモン・モーターサイクル』:
手番開始フェイズに「瞬時行動」として【精神力】1を消費して使用(ハッキングHARD)。
判定に成功すると「バイク/サイバー馬」が出現し、即座に騎乗状態となる。
『▷電磁ショック発生ユニット』:
攻撃フェイズ開始時に使用を宣言。シナリオ中1回までの使用。リチャージ1。
電磁クローアームの『電磁属性ダメージ』を2に強化するが、攻撃難易度が+1されてしまう。
さいごに
謎めいたスタラグマイト・ジツを玩具にした胡乱な自由研究ではありますが、本稿でも触れているように、「ニンジャスレイヤーTRPG」は原作小説内で語られなかった様々な情報テキストがひっそりと、ときにはデータ形式で収録された、読み物としても楽しめるコンテンツとなっています。
この記事からTRPGコンテンツに興味を引かれた方がいらっしゃれば、まずは読み物として一度触れていただければ新鮮な体験が得られることかと思います。
そして我々ニンジャけんきゅうしゃは、貴方が新たなスタラグマイティストとして学会の門戸を叩く日を心待ちにしています。
◆以上です◆