【ニンジャ自由研究】アマクダリ"再定義"の謎
この記事はダイハードテイルズが開催するニンジャソン2023夏への応募作です。
ニンジャスレイヤーのトリロジー最終章におけるクライマックスを担った、アマクダリ・セクトの再定義。これまでコメンタリーなどで断片的に情報が明かされ、アマクダリが何をしようとしていたのか、漠然とした全体像と目的は見えてきたものの、具体的にどの様な手段で「再定義」を成し遂げようとしていたのかはトリロジー本編を読むだけでは把握するのが実際困難です。
かねてからその仕組を謎に思っていところに「インタビュー・ウィズ・ニンジャ PLUS版(49)」で新情報が明かされ、混乱し始めた頭を整理しようとこっそりと書き溜めていた考察メモ。この記事ではそのメモの内容を再編する形で、再定義に関連する情報を原作/資料集/コメンタリーから収集し考察をおこなっています(ながいです)。
前提情報
Y2K前後の出来事は情報が分散しており、全体像を捉えるのがなかなか大変であるため、ここではまず全ての大前提となる「インターネットとはなにか」と「Y2Kで何が起きたのか」について、原作の描写や設定資料/コメンタリー(N-FILES、シャード)から読み解ける背景事実を要素ごとに整理する。
どうしても公式に明言されていない要素については、既存の情報から推測できる内容で仮定することで紐解きを行う。
インターネットとは
※インターネット/電子インターネット/電子ネットワーク/IRC電脳空間はそれぞれ同じものを示していると考える。
電子インターネットはオヒガン(≒コトダマ空間)のネットワーク構造を模倣して、メガトリイ社によって作られている。7階層からなるOSI参照モデルは、オヒガンの7つの門と対応していることが語られている。
その構造の近似性からか、誰も予想しなかったことに、誕生した電子インターネットとオヒガンの重なり(オーバーラップ)が発生し始めてしまう。
これによって、オーバーラップした電子ネットワークを通じて、オヒガンからエテルがUNIXに流れ込むようになった。あるいは流れ込む経路ができてしまったと考えられる。
Y2Kで何が起きたのか
Y2Kカタストロフィにおいては、2000年問題(Y2K問題)によるUNIX機器の演算オーバーフローが連鎖爆発を引き起こした。このとき、UNIX機器に流入していたエテルが行き場をなくし爆発を起こしたものと考えられる(これはニンジャの爆発四散と類似した現象ではないかと思われる)。
別の可能性として、物理世界とオヒガンがオーバーラップした(ないし過剰リンク状態になった)ことを理由に、最終的な物理世界へのエテル流入口であったUNIXを着火点として、「オヒガン・ボム」のような反物質化と対消滅が起きたとも考えられる。
ただしニンジャスレイヤーのトリロジー世界(1~3部)ではエメツ結晶の産出などは全く見られず、技術もアマクダリが限定的に用いるのみに留まっていたことを考慮すると、この説は弱い。オーバーラップ状態が深まったのもY2Kカタストロフィ以降の話だ。
同様の現象は、茶器を用いたチャドー儀式によるエテルの取り込み(あるいはジツ、カラテの一時的な強化)においても見られる。
茶器≒UNIXであると考えられるならば、Y2KカタストロフィによるUNIXの連鎖爆発は「Y2K問題によりUNIX機器が誤動作を起こした(≒配置のバランスを失した)」ことで「際限のないエテル流入やループ現象」が起き「爆発現象」が引き起こされたとするのが自然である。
世界中すべてのUNIXが爆発現象を引き起こしたわけではないことも、爆発現象が「最悪の場合」の事象であることを考慮すると辻褄が合う。
Y2Kが生み出した超自然の傷
Y2Kカタストロフィによる連鎖爆発により、物理世界(=電子インターネット)とオヒガンの大規模なオーバーラップが発生。さらにメガトリイ・アンテナの上空に2つの世界を繋ぐ超常的な〈傷〉が生まれたことで、物理世界に流入するエテル量が増大。ニンジャソウルのディセンション増加にも繋がった。
これらを読み解いてゆくと、Y2Kカタストロフィに伴う一連の事象は次の順番で発生したと考えられる:
〈傷〉とは何か
「エテルが収束したメガトリイ・アンテナの上空に生まれた」「出現でオヒガンとの論理的距離が縮まった」という事実を考慮すると、〈傷〉は「物理世界とオヒガンのオーバーラップが極めて強い場所」であるものと考えられる。
しかし、メガトリイ・アンテナそのものはY2Kで半壊しており、現状の電子インターネットの通信網には既に接続されていないものと思われる。
ただし超自然領域とIRCネットワークとの間に生まれたのが〈傷〉であるならば、〈傷〉は超自然のインターネット・トラフィックの経由地点として、メガトリイ・アンテナなしに従来のネットワーク網に接続している可能性がある。
つまり、少なくとも、従来メガトリイ・アンテナにトラフィックを送信していた通信基地群(UNIXサーバー群)が形成する電子インターネット領域が、メガトリイ・アンテナ上空でオーバーラップを起こしているものと思われる。
▶ここまでのポイント
用語を噛み砕く
念のため、上記の各所で登場したが説明のなかったキーワードについて内容をおさらいする。
〈鷲の一族〉:世界経済を支配していたモータルの一族。アガメムノンとラオモト・チバはその末裔。アガメムノンは〈鷲の一族〉として、Y2Kで絶たれた野望を成就させようとしている。
メガトリイ社:〈鷲の一族〉のためインターネットを始めとした先端技術の開発をしていた。月からエメツを回収しており、人工知能A.R.G.O.S.のメインフレームなどレリック級のテックを生み出している。Y2K後、暗黒メガコーポ連合により〈鷲の一族〉ごと滅ぼされた。
ポールシフト:自転軸や磁極などが何らかの原因でズレてしまうこと。ニンジャスレイヤー世界ではY2Kの物理的な連鎖爆発が原因で発生したと思われる。これが原因でY2K以降は地球環境が大きく変化してしまっている。
磁気嵐:何らかの原因で地磁気に乱れが生じること(あるいはその状態のこと)。衛星の故障や通信障害などを引き起こすことがある。現実では太陽フレアの放出などが大規模な磁気嵐の原因だが、ニンジャスレイヤー世界ではY2K以降、この磁気嵐(地磁気の乱れ)がネオサイタマを覆っている。
この局所的な磁気嵐の原因は、Y2Kによるオヒガンと電子ネットワークのオーバラップであると考えられる。
オヒガン:未だ明確に「どのようなものである」と断言されたことはない(はず)だが、テキストの端々から、物質世界と重なり合って存在する非物質的な精神的世界・霊的世界であることが窺える。物質世界との"近さ"は論理的距離と表現される。またコトダマ空間=オヒガンと考えて良いと思われる。
エテル:オヒガンから物質世界に流れ込む、力の源のようなもの。ニンジャはこれを燃料のようにして、自身のカラテやジツとしている。オヒガンとの論理的距離が遠くなると、流入量は少なくなり、ニンジャは弱体化する。
鷲の翼:メガトリイ社が新たに開発していた、無線通信ネットワーク用の人口衛星リレイ網のこと。
UNIX:ニンジャスレイヤー世界で使われているコンピューター端末全般のこと。あるいはそのOSのこと。世界的に32ビット版のUNIX系OSが使用されていると思われる。
2000年問題(Y2K):コンピューターの日付処理の仕様が原因で、西暦2000年になると誤動作を起こすとされる問題。当時は大多数のコンピューターが西暦を下2桁でしか認識しない仕様になっていた。
月面基地および鷲の翼を建造した後に、メガトリイはY2Kが到来し世界中のUNIXが誤動作を起こすこと自体は予期していた。
OSI参照モデル:インターネット通信における国際的な共通規格。コンピューターはこの規格に従い、インターネット通信用にデータを01変換したり、01データを文字データなどに再変換したりする。
2038年問題とは何か
Y2Kに続いて、アマクダリ・セクトの「再定義」において重要になってくるのが「2038年問題」と呼ばれる事象である。
ここでは後の再定義に関する考察の前段階として「2038年問題とは何か」と「何故ニンジャスレイヤー世界で起こってしまうのか」の2つを整理する。
Y2Kの事例からは、ニンジャスレイヤー世界においても、Y2Kまでは、コンピュータはおおよそ我々が知る歴史と同様の進歩を遂げていると推測できる。
一方でY2KによってUNIX機器が演算オーバーフローを起こしたということは、32bitのOSが使われていたにも関わらず、本来1990年代末に行われたコンピュータシステムの修正は世界規模で行われなかったと考えられる(詳細後述)。
これはすなわち、Y2K以降もブラックボックス化した32bitのUNIXベースOSが世界中で使い続けられていることを意味している。
そもそも2038年問題とは、次のような現象である:
UNIXシステムにおいては、基準となる1970年1月1日の午前零時を基準時間(エポックタイム)として、そこから経過した秒数をカウントし、基準日時に加算することで現在の日時を算出している。
つまり「1970年1月1日0時0分0秒 + 経過した秒数 = 現在の日時」という処理が行われている。
この経過した秒数を格納(≒カウント)しているのが、『time_t』と呼ばれるシステム変数(≒数値データの入れ物。保存領域)となる。
『time_t』は仕様上、21億4748万3647より大きな数値は保管できない。
UNIXシステム上で21億4748万3648秒が経過すると何が起こるかというと、限界に達した『time_t』のカウントは負の値になる(-21億4748万3647秒)。これが算術オーバーフロー(オーバーフロー)である。
1970年1月1日の午前零時 + 21億4748万3647秒は、2038年1月19日午前3時14分7秒となる。
すなわち、2038年1月19日午前3時14分8秒になった瞬間、UNIXは算術オーバーフローを起こし、システム上の時刻は1901年12月13日20時45分52秒となる。
これはオーバーフローによって時刻カウントが負の値になり、基準となる1970年1月1日の午前零時から現在日時をマイナスして算出してしまう為である(1970年1月1日00時00分00秒 ー 21億4748万3647秒 = 1901年12月13日20時45分52秒)。
この現象により、正しい現在日時を取得できることを前提としたソフトウェアなどは誤動作を起こす。ただしそれによってどの程度の規模で問題が発生するかは分からない、というのが2038年問題である。
2038年問題への対策
ニンジャスレイヤー世界において、技術者の多くはY2KカタストロフィにおけるUNIX連鎖爆発によって死亡した(ないしコトダマ空間に飲み込まれ消息不明になった)ことも理由に、一部は動作原理がブラックボックス化しており、コンピュータシステムや通信プロトコルの根本的な改修(それも全世界的な)は難しい状況であると考えられる。
現実には「2038年までに32ビット変数の『time_t』を64ビット変数に定義し直して、すべてのプログラムをコンパイルし直す」など幾つかの手段で対策を取られているが、上記の理由からニンジャスレイヤーの世界では極一部の例外を除いて2038年問題に対策は行われていないとするのが自然である。
ニンジャスレイヤー世界において、どの程度UNIX技術者が生存していて、その内の何割がUNIXのOSを扱えるのかはまだ明らかになっていない。伴って、どの程度が「一部の例外」として2038年問題に気が付き、対策できていたかも不明確だ。
いずれにせよ、電子ネットワークを生み出したメガトリイの遺児であるピグマリオン社の見解として「Y2Kが再来する」とされているのであれば、少なくとも世界規模で2038年問題は発生する(連鎖爆発などの有無はさておき)状況にある、と考えても間違いではないはずだ。
"再定義"とは何か
続いて、ここまでの前提情報が正しいものと仮定して、アマクダリ・セクトが実行しようとしていた「再定義」に関する情報を読み解いてゆく。
再定義の目的
アマクダリによる再定義の目的は、大別して次の2つであることが窺い知れる。
オヒガンと電子インターネットのオーバーラップ状態を破壊し、両者を切り離す。
電子インターネットを新型ネットワークリレイである「鷲の翼」で再統合し、支配する。
そしてこれは、Y2Kによるオヒガンとのオーバーラップ状態を解消する必要がある点を除けば、おおよそY2K以前に〈鷲の一族〉が目論んでいた計画と同じゴールに辿り着くものであることが分かる。
ここで上記の目的をさらに分解すると、〈鷲の一族〉ないしアマクダリによる再定義のゴールは、具体的には次のような計画による人類支配であることが見えてくる。
オヒガンを模倣した電子的なインターネットを生み出すことで、本来のインターネットであるオヒガンの存在を人々から覆い隠し、切断する。
これにより、オヒガンのケオスがもたらす夢やイマジネーションといった不確定要素を排除する。
オヒガンに成り代わった電子的インターネットを管理・支配することで、そこに繋がる人々をも管理・支配する。
再定義はどのように成されるのか
ニンジャスレイヤー本編において、なんとなくふわっと進行していた再定義だが、インタビュー・ウィズ・ニンジャの新情報によって、本編における現象が「どのように」引き起こされていたのか(引き起こされようとしていたのか)のコア部分が明かされた。それが上記だ(一部抜粋)。
断片的な情報をつなぎ合わせると、まず大前提として、アマクダリ・セクトはアルゴスの論理タイプ能力を用いて、すなわちハッキングによって再定義(ネットワーク再定義)を進めようとしていると推察できる。「電子的な魔術」と呼ばれるのも、それに由来するものだろう。
その上で「ハッキングでどのようにして」「オヒガンと重なってしまっていた電子ネットワーク領域を破壊する」のかと考えると、次の2つの作業が行われる可能性を検討することができる。
7つの門をハッキングする:アルゴスは電子ネットワークから地続きとなったオヒガン(=コトダマ空間)に対してハッキングを仕掛け、オヒガンへと繋がる7つの門をプログラムとして制御し、開閉状態(稼働状態)に干渉した。
トラフィック制御による爆発エネルギーの操作:アルゴスは再定義において、論理タイプにより2038年問題の爆発エネルギーの指向性を操作しようとしている。これによって、オヒガンと電子ネットワークのオーバーラップ箇所(物理UNIXサーバー)を吹き飛ばすつもりだ。
▶7つの門をハッキングする
仮説①については直接的なのか間接的なのか、手段こそ不明確だが、原作中やコメンタリーでの「門」に関する言及を見る限り、アルゴスは論理タイプ≒ハッキングによりオヒガンの門に干渉できる、とするのが自然に思われる。
オヒガン・シナプスにおける対話を見ても、コトダマ空間認識者の「タイピング」がキンカクなどオヒガン由来の存在へジツのように影響を及ぼせる、あるいはそうしたジツのリソースとして用いることが可能であることが分かる。
メインフレームにオヒガンとの繋がりを齎すエメツを含有し、ニンジャソウルを宿したアルゴスが同様にその演算力をジツのように用いることができてもおかしくはない(コトダマ空間における、一種のジツの行使と考えられる)。
▶トラフィック制御による爆発エネルギーの操作
仮説②については、部分的に正であると考えられる。まず「Y2Kでオヒガンと重なってしまっていた電子ネットワーク領域を破壊する」ことは、機器の破壊や通信の遮断によって物理世界における電子ネットワークそのものに干渉しなければ成し遂げられない。
それを「2038年問題」、「電子ネットワーク領域の破壊」、「IRCネットワークで傷を塞ぐ」、「論理タイプ能力で制御」といったキーワードと結びつけると、論理タイプによりエテルの流れを操り、オーバーフローに伴う連鎖爆発の指向性を制御しようとしていたのではないか、という仮説が立てられる。
Y2Kで起きた現象を考慮すると、電子ネットワークを流れるエテルはその通信トラフィックを伝わっていると思われる。つまり、逆に通信トラフィックを制御すれば、自ずとエテルの流れも制御できるのではないか、ということだ。これが可能ならば、アルゴスは特定のUNIXのみが2038年問題によるオーバーフローとエテル流入で連鎖爆発を引き起こすように仕組むこともできるはずだ。
またアマクダリが2038年問題による爆発現象をある程度制御したがる理由としては、次のような背景が考慮できる。
アマクダリが破壊したいのは、あくまでも〈傷〉を始めとするオヒガンと重なる電子ネットワーク領域や、Y2K以降のオーバーテックのみ。地上におけるUNIX機器や既存のインターネットの全てを破壊する必要は(少なくとも計画の目的としては)ない。
仮に既存の電子ネットワークをすべて破壊しても、ジグラットやメガトリイの通信基地が存在すれば鷲の翼によって代替することは可能だと思われるが、そこに人々がアクセスするための端末が失われ、普及のフェーズが再び必要となるため非効率(電子ネットワークを介して人々を管理支配する〈鷲の一族〉の計画に根本から反する)。
Y2Kないし2038年問題は元来〈鷲の一族〉の計画に組み込まれたものではないため、アマクダリとしても本来のインターネット再定義に影響が出ない範囲で、あくまでもオーバーラップ状態の破壊にのみ利用したいと考えるのが自然。
結局起こったUNIXの連鎖爆発
オヒガン・シナプスにおける描写を見ると、少なくともアルゴスが爆発四散した後、ネオサイタマにおけるUNIXについては連鎖爆発が起き始めているらしきことが分かる。
しかし各所で言及される、「未曾有の大災害」や「UNIXの連鎖爆発」について情報を読み解いてゆくと『2038年問題に起因する既存UNIXの爆発』、『再定義によるコトダマ空間とのリンク途絶によるオーバーテックと接続UNIXの爆発』、『キンカク・テンプルの異常接近によるUNIXの爆発』この3つの事象がそれぞれ主語として混在していることが分かる。
これを考慮すると、なぜUNIXの連鎖爆発が起こり、あるいは最終的に押し留めることができたのか、ある程度説明をつけることができる。
再定義のプロセス//何故オヒガンの影響が深まったのか
アルゴスが論理タイプでオヒガンの門に直接干渉できたと仮定して、次に考えなくてはならない謎は「なぜ再定義の第三段階まではオヒガンの影響が深まったのか」と「なぜアルゴスは第三の門を修復する必要があったのか」の2つだ。
ここで重要になってくるのは、オヒガンのネットワーク構造を模倣して作られたという、電子ネットワーク構造の設計「OSI参照モデル」である。OSI参照モデルとは、一言で表すと、インターネットを介したデータ通信の規格のことだ。
例えばUNIXからメッセージを送信するとき、「OSI参照モデル」では上記の7階層に従ってレイヤ7から段階を踏んでデータの変換を行い、最終的に01データ(2進数のビットデータ)にしてからインターネットに送り出す。逆にインターネットから送られてきた01データを受信する場合は、レイヤ1から順番にデータの変換を行い、メッセージデータにしてからUNIXで表示する。
上記「OSI参照モデルのイメージ」で言うと、データ送信時は下から上、データ受信時は上から下に処理が行われると考えると良い。
UNIXは国際標準規格として、この「OSI参照モデル」を元にしてインターネット通信機能が実装されている。そのため、インターネットを介して相互的にデータをやり取りすることが可能なのだ。
これをオヒガンと物理世界との関係性に置き換えたものが上記の図となる。「魂がオヒガンやキンカクへと至るまでの門」と聞くと、物理世界からの視点で『最初に通る門が第一の門』と思い込んでしまいがちだが、OSI参照モデルに基づいて考えると実際は真逆なのである。
ヤマト・ニンジャの軌跡
オヒガン・シナプスにおける描写に基づくと、アマクダリの再定義は第三段階において「第三の門を機能修復し、開いて」いる。機能修復が必要ということは、当然第三の門は壊れていたということになる。エシオがもたらした情報が真実だとすれば、その原因はヤマト・ニンジャのカラテである。
ここでOSI参照モデルに基づき、物理世界とオヒガンの間に存在する「第三の門」の位置を見てみると、ヤマト・ニンジャは物理世界から見て少なくとも5つの門を通過していると考えるのが自然だ。
さらに「"次に"機能修復される」というエシオの発言から推測すると、ヤマト・ニンジャのヤリとカラテによって破壊・突破されたのは第三の門だけではない可能性がある。
ここまでの情報から包括的に判断すると、アマクダリはまず全ての門を閉鎖可能な状態とし、なおかつ物理世界からオヒガンまでの経路(≒第一の門までの経路)すべてにアクセスする必要があった。これに伴い、再定義におけるフェイズ1~3では「破壊された門の修復と開放」を行った、と考えられる。
再定義の初期段階においては、破損していた門がアルゴスの論理タイプなどにより補完・修復された、あるいは超常的なトラフィックを阻害していた原因が取り除かれたことにより、オヒガンと現世の間に障害が存在しなくなった≒データの欠損や遅延が解消され、結果として論理的距離が縮まった=最も「近い」状態になったのだ、と推測できる。
プロセスから見る再定義
ここでは原作で描写された再定義の「波」による影響をもとに、実際に何が起こっていたのかを考察する。
まず描写によって確定している事象は次のとおりだ。
これを見ると、確固たる根拠には欠けるものの、順序としてはフェーズ1で第一の門(物理層)が、フェーズ2で第二の門(データリンク層)が干渉を受けた、と考えるのが自然である。
またフェーズ3まではオヒガンとの論理距離が縮まったことを考慮すると、いずれのフェーズでもオヒガンの門の機能が補完された可能性が極めて高い。
続いて、フェーズ毎の描写を順番に紐解いてゆく。
第一波
第一波では続く第二波、第三波よりも強烈な影響が現世に及んでいるようにも読み取れる。一見してオーバーラップ状態が部分的に破壊されたかのようにも思える描写だが、実際にはオヒガンとの論理距離が縮まっているのか、現世との境界線が朧になっていると語られている。
つまり、何か別種の異常が引き起こされている事がわかる。
第二波
第一波よりも影響が軽微に読み取れる。一瞬、オヒガンとの接続が途切れたような描写があるものの、すべてに影響が及んでいないことを考えると、第二波では精神衝撃波が奔った一瞬、オヒガンから送信されてくるデータが部分的に欠損した可能性が考えられる。
そして、上記のようなオヒガンとの接続の不具合が描かれているにも関わらず、再定義のプロセスがこの段階においてもオヒガンとの論理距離を縮めていることが明言されている。
第三波
第三段階において「切断が始まる」ということは、逆にここまでのプロセスで"オヒガンの門の閉鎖"は行われていなかったと考えてまず間違いないだろう。
また、ここで初めて登場した「メガトリイ・ネット」という単語は、メガトリイの名を冠する、既存の電子インターネットと区別が必要なネットワークという点から推測すると、「鷲の翼」による無線通信ネットワーク網を指していると思われる。
つまり、再定義の1~3フェーズにおいては、「鷲の翼」を経由するように既存のインターネット・インフラの切り替えが進められていた可能性がある。これを正とすれば、ここまでに描写された現象にもある程度の説明がつく。
なおトリロジーにおける描写から、磁気嵐が存在しないエリアでは衛星通信が使用されていることが分かる。つまり、Y2Kによって実質的に使用不可になっていたとしても、Y2K以前から各地のデータセンターなど通信基地には衛星通信用のアンテナなどの設備が元々設けられている可能性がある。
第四波
明確に第四の門(トランスポート層)が閉ざされたことが書かれている。電子インターネットであれば、1層でも不具合を起こせば通信ができなくなる場合もあるが、どうやらオヒガンはそうではないようだ。
発生した事象から推測すると、門の閉鎖では単純にオヒガンとの論理距離が遠くなり、それによって流れ込むエテル量や情報量(≒情報の粒度)が減衰してゆくと言うようなイメージの認識が正しいように思われる。
インタビュー・ウィズ・ニンジャによると、少なくともアマクダリはロービットレベルではキンカクの機能をエミュレートすることができるようだ。
おそらく、アルゴスは門の閉鎖により生じる情報欠損を事前に計算しており、ロービットのキンカクとしてオヒガンからのデータに欠損情報を補完することで、アマクダリ・ニンジャが受ける影響を最小限に抑えているのではないだろうか。
第五波
具体的に何が起こったのかは描かれていない。しかし、第四波による影響と照らし合わせると、このフェーズでもオヒガンの門が閉じられたであろうことが推測できる。
第六波
第五波と同様であり、このフェーズでもオヒガンの門が閉じられたであろうことが推測できる。
推測される再定義の各フェーズの役割(まとめ)
ここまでの情報を整理すると、再定義の各フェーズでは次のような処理が行われていると推測できる。
どのようにして〈傷〉を塞ごうとしたのか
再定義の最終フェーズで行われると考えられるのが、〈傷〉の封鎖である。冒頭に述べたように〈傷〉はフジサン≒メガトリイ・アンテナの上空座標に生成された「物理世界とオヒガンのオーバーラップが極めて強い場所」である。
つまりこれは、従来メガトリイ・アンテナにトラフィックを送信していた通信基地群が形成する電子インターネットが形成するものと思われる。アルゴスが爆発を起こすUNIXを選別できるとすれば、上記の通信基地群や、場合によってはそこに直接接続するUNIX群に集中して爆破することで〈傷〉とオーバーラップした電子インターネット網は消滅し、コトダマ空間としてアクセスする手段は失われることだろう。
これにより欠損した電子インターネット領域は鷲の翼による新たなインターネット領域が補完し、実質的に〈傷〉は塞がれることになる。
残された謎
現状、第一から第三の門がいつ閉じられるのか、あるいは閉じられるのかは明言されていないため、謎のままとなっている。しかしながら、第六波の後に著しく力を失っているのは半コトダマ存在であるザイバツ・ニンジャたちのみで、(アルゴス爆発後の描写ではあるものの)強力なアーチ級憑依者であるアナイアレイターなどが直前まで力を極端に減じていたかのような描写は見られない。
ここから推測するに、アルゴスが一部の機能を補完する第一から第三の門は、再定義のフェーズ7で封鎖される(あるいはアルゴスが完全に機能を置換する)予定だったのではないだろうか。
最終的に2038年問題のエネルギーで〈傷〉を吹き飛ばすためには、一定以上のエテルが流れ込む状態を保っておく必要があるはずであり、制御下においた門を最後まで閉じずに残しておくのは合理的な選択に思われる。
とはいえ、実際にどのようなプロセスで進行する計画だったのかは、未だ謎のままだ。
まとめ
これらの考察は、ニンジャスレイヤーにおけるオヒガン//コトダマ空間//キンカクについて断片的に情報を拾い上げておこなわれたもので、インターネット通信などについても専門的な知識が十分に盛り込まれているわけではない。
そのため、オヒガンやインターネットについて精通したニンジャ研究者の方がいらっしゃれば、ぜひさらなる謎の究明に取り組んで頂きたい。
参考資料まとめ
◆以上です◆