【NEXUM CRESTOR'S INTERVIEW】イギリスで活躍する日本人ヘアアーティストShunsuke Meguroの挑戦とは
今回はイギリスで活躍するヘア・ウィッグアーティスト、Shunsuke Meguro氏にオンラインでインタビューをさせて頂いた。彼の大胆なアートワークの発想はどこから来るのか、また、言語の壁を超えてどのように海外で仕事を獲得したのか。クリエイティブの本質、そして海外での活動の秘訣を探っていく。
Shunsuke Meguro
美容専門学校卒業後、サロンに美容師として就職。退職、日本でアシスタント経験の後、2016年渡英。現在はロンドンの事務所Future Repに所属。大胆やカラーやウィッグ作成を得意とする。Issey Miyake, Alexander Wang, Gucciなど数々の著名ブランドの撮影やショーに携わる。
Instagram:https://www.instagram.com/shun_hairhead/
◾️Shunsukeさんの現在の活動を教えてください。
今はロンドンの事務所「Future Rep」に所属し、ファッションショーや雑誌、時々コマーシャルの仕事をしています。最近は趣味で彫刻など、アートワークにも挑戦しています。
◾️ヘアスタイリストという職業に興味を持ったきっかけを教えてもらえますか?
元々、自分で髪をセットするのが楽しかったんですが、高校生の頃、友達のお父さんの紹介でヘアコンテストを観に行ったことが大きな転機でした。プロの美容師たちがステージ上で作品を作る姿を見て衝撃を受け、「これだ!」と感じたんです。
その後、新潟美容専門学校に進学し、技術だけでなくアートにも触れる機会がありました。特に「芸術論」という授業が印象深く、今の自分に大きな影響を与えた先生と出会いました。
◾️サロンワークからファッション業界へシフトした理由は?
サロンで働き始めた当初は、ヘアコンテストに出ることを目指していたんですが、売り上げが高い美容師しか出られないことを知り、少しずつ違和感を感じるようになりました。結果、サロンワークへのモチベーションが下がってしまいました。
ただ、作品撮りは続けていて、ある時モデルさんから「ファッションの道に進んだら?」とアドバイスをもらいました。そこからファッション業界でのヘアスタイリングに興味を持ち、特にコムデギャルソンのジュリアン・ディスのヘアスタイルに強い影響を受けました。それを学びたいと感じ、日本でアシスタントとして経験を積むことにしました。
◾️専門学校の「芸術論」の先生について教えてください。
「芸術論」の授業で出会った先生が、個人的にアートを教えてくれたことが今の仕事に繋がっています。授業はヘアデッサンがメインだったんですが、僕は従順なタイプではなく(笑)、皆が髪型を描いている間に3Dの四角形を描いたりしていました。
普通なら怒られるところですが、その先生は逆に僕の絵を褒めてくれて、それがきっかけで信頼関係が生まれました。授業時間外で先生の控え室にお邪魔し、個人的にデッサンを教えてくださいとお願いをしてみました。先生は受け入れてくださいましたが、実際には「センス」を鍛えるトレーニングを受けました。
◾️具体的にはどんなトレーニングを受けたんですか?
先生は、センスとは直感であり、五感を鍛えることが重要だと教えてくれました。例えば、白い立方体に光を当てて影を観察し、影の濃淡を描くトレーニングや、10秒で物をデッサンする訓練をしました。また、触覚のトレーニングもあり、トゲのあるおもちゃを触り、その感覚を言葉にして表現する練習を行いました。
◾️そのトレーニングにはどんな効果がありましたか?
先生曰く、多くの人がインプットはできてもアウトプットができない。美容師やヘアスタイリストの仕事は、常にアウトプットが求められますが、普段からどうそれを鍛えるかが重要だと教わりました。見たものをただ見るだけで終わらせず、脳に伝達し、それを描写や言葉にすることでアウトプットの力を鍛えるんです。
◾️印象に残っている先生の言葉はありますか?
「自分の常識で作品を作るな」という言葉が印象的でした。人はそれぞれ異なる環境で育ち、当たり前だと感じることが違います。その「当たり前」に頼ると、作品が浅くなる。また、ポジティブな感情だけでは良い作品は作れないという教えも心に残っています。人間はネガティブな要素に惹かれる傾向があるため、作品にもそういった要素が必要だと教わりました。
◾️海外の中でもなぜイギリスを選んだのですか?
当時、ヘッドピースの制作に興味があり、世界的に有名な帽子デザイナーのフィリップ・トレイシーの元で学びたいと思いました。
彼はエリザベス女王や多くのセレブリティのために帽子をデザインし、ファッションショーでも斬新なヘッドピースを手掛けていました。特に彼の作品は彫刻的なデザインが特徴で、それが自分のアートとヘアの融合というビジョンと合致していたんです。しかし、連絡したときには彼はすでにそういったアート活動をしておらず、その夢は叶いませんでした。それでも「せっかくイギリスに来たのだから」と思い、クリエイターに片っ端から連絡を取り、作品撮りを続けました。
◾️イギリスに渡ってから、どのように最初の事務所と契約しましたか?
英語が全く話せなかったため、すべて翻訳機に頼っていましたが、それでもクリエイターたちとなんとかコミュニケーションを取り、作品を作り続けました。
1年ほど経った頃、事務所にダメ元で連絡を取り、作品を見せる機会を得て、無事契約が決まりました。
◾️最初の事務所の面接はどんな感じでしたか?
ロンドンで作った作品をiPadに入れ、気に入った作品はプリントしてブックに入れました。さらに、光るヘッドピースを段ボールに入れて持って行ったんですが、事務所に着いた瞬間、デリバリーと勘違いされました(笑)。でも、逆にそれを面白いと思っていただけ、ちゃんと作品を見てもらい、無事面接を終えることができました。
そこからアンダー(HPに名前が載らないが実際は所属している状態)として契約が決まりました。
◾️オリジナリティやテイストについて、どのように考えていますか?
僕はテイストやセンスに固執しないようにしています。自分の好みにこだわりすぎると、クライアントの求めるものを見失う可能性があると僕は思います。
僕はこの仕事は芸術家としてのアーティストというより、デザイナーの仕事だと考えているので、常に柔軟でいることが重要だと思っています。トレンドを理解しつつ、自分をアップデートすることが大事です。
◾️常にアップデートし続けるために心がけていることは何ですか?
今はスマホで多くの作品にアクセスできますが、ただ見るだけでは不十分だと考えています。作品を見るときに、情報を「知識」や「教養」に変換し、背景や技術を理解しようとしています。表面的に見るだけではなく、その背景を掘り下げることで、自分の理解が深まります。
◾️最後に、読者にメッセージをお願いします。
海外に興味があるなら、是非行動に移してみてください。経験がなくても飛び込んでみれば、多くの学びがあります。迷っている時間があれば、その分行動した方が多くを得られます。また、海外に興味がない人でも、違う文化に触れることで新たな視点が得られます。考えすぎずに動いてみることが、新しい道を開く鍵だと僕は考えています。
是非今どうしたらいいかわからないと思っている方は考えすぎずにまずは行動をしてみるといいんじゃないかな。
Interview &Text Marino Asahi
Assistant Nao Sanada
All Photos: Hair by Shunsuke Meguro
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