神無月のセミ #我思ふ
昨日まで半袖を着ていたのに、ひやっと頬をなぞる風に驚き、思わず長袖を引っ張り出してきた10月の初め。
ミーン、ミンミンミンー・・・・ー・・・ミーン・ジージー・・
まさかのツクツクボウシのナク声が聞こえた。
庭に佇むその木は、初夏の青々とした勢いはすでになく、茶色くチリチリに乾いた葉っぱが、そこらじゅうに散らばっている。
「あなたは、悲しくて泣いているの?
それとも・・・やっと地上に出られて、嬉しくて鳴いているの?」
どこにいるのか分からなくて、そのセミの姿を探しているうちに、
流れ着いた枝先を見ると、
グレーの空と枯れ葉の間に紛れて、季節外れにボケ咲きした、小さな白いすももの花を見つけた。
40間近にもなって、なかなか大輪を咲かせられない自分。
やっと歩み始めた自分の遅すぎる成長期に重なって、なんだか、少し寂しいような、ちょっと、滑稽な気持ちにもなった。
神無月のセミ。
ここがあなたの、人生のハイライト。
真っ暗闇の土の中で、長い間”その時”を待ったあなたは偉い。
笑われたって良い。
肌寒い神無月、三十九の秋。
負けるな。踏ん張れ。
腐るな自分!
さあ、私もこれから、遅咲きの人生のハイライトを飾ろうじゃないか!
作者:flyhigh(ふら)
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