「UNCHAIN」を合同会社スキームを利用して運用してみる
初めまして、Nextmergeの飯島です。
Nextmergeでは、TIPWAVEというウォレットを運営しており、
ウォレットを持っていない相手にも、SNSのIDを宛先として、コミュニティの独自トークン(オフチェーンも可)も送付することができます。
DiscordやTwitterをやっていればユーザがウォレットを作るという行為をしなくても自動的にトークンを受け取ることができます。
トークンとして発行しながら、Discord上でやり取りできるポイントとしてTIPし合えるようなサービスです。
日本DAO協会のREPホルダーもやらせていただいております。
はじめに
今回はエンジニアコミュニティである「UNCHAIN」に合同会社型のトークン会社としての仕組みを導入すると、どのような形になるのかを検証していきたいと思います。
以下の内容は全てシミュレーションであるため、現実に起こっているものではありません。
UNCAINの運営である、HARUKIさんありがとうございました。
私は、士業の人間でもありませんので、曖昧な部分や誤りがあることがあります。
ご指摘いただけますと幸いです。
「STEP」は下準備のようなイメージで、単純な仕組みを構築します
「Practice」では、変数を増やした仮説を立てて、どのようなことができるか応用例を考えています。(面白いのはPracticeだと思います)
ご自分の知りたい部分から読んでいただけますと幸いです。
費用に関しては、簡単に数字を当てているだけです。税金なども加味しておりません。
STEP1:ビジネスモデルの確認
このような状態であるため、
マネタイズポイントは特に作ってはいないが、コミュニティと教材は存在しており、特に初期投資は必要なさそうです。
経費なども初期でかかるものはWEBサイトくらいなので、そちらは自費で持つような形で負担します。
社員権による資金調達は一旦実施しないパターンで考えていきます。
STEP2:組織(ロール)の整理
既存のコミュニティのロールが存在し、それとは別に登記上の合同会社型のロール(社員や業務執行社員など)を対応させます。
資金調達は必要なさそうなので、社員は現在のアドミンメンバーやコアメンバーのみで良さそうです。
投資家である「社員」のロールは0人です。
STEP3:コミュニティ内での貢献洗い出し
社員権を発行したので、リワードトークンを発行していきます。
まずは、このビジネスモデルで、どの部分を伸ばすとコミュニティを伸ばすことができるのかを考えます。
コミュニティメンバーのできる貢献はこの部分になりそうです。
教材に関しては、既存のものからさらにアップデートしたり、新たなものを作っていくような貢献になります。
コミュニティの質を上げるためには、質問などに返答してくれたり、情報を共有してくれるなど様々な要因が考えられます。
コミュニティの参加人数はハッカソンを開いたり、イベントで声をかけるなど様々考えられます。
事業を伸ばせるリソースとしてはこの部分かと考えられます。
定量的に判断できる基準を設けるとすると、わからないことを教えてくれたり、経験を共有してくれるなどが考えられます。
そして、今回はリワードトークンとはまた別の評価指標を持ったトークンを複数発行してみたいと思います。
STEP4:複数トークンの発行
今回は、こちらのトークンを発行します。
この二つを使っていきます。
ユーティリティトークン(CHAI)
ユーティリティトークンはこのような形で利用します
こちらは初期のモデルなので、社員やコミュニティの提案により変更できます。
FTのような形で発行します。
ユーティリティトークンの名前は社員で決議をとったところ、「CHAI」というトークン名になりました。
こちらはコミュニティで話したり、挨拶したり、専門的な質問に答えることで獲得できます。
手動では面倒なので、自動で配布できるBOTなどを開発します。
発言を吸い上げ、DIscord上でトークン(ポイント)を付与します。
こちらはトランザクション数が必然的に多くなるので、ポイントで発行します。
使い方にある質問板には、質問や教えて欲しいことなどの内容が、ユーティリティトークンを報酬として、発行することができます。
知恵袋のように、ベストアンサーの人に報酬であるユーティリティトークンが支払われます。
コミュニティ内で、ユーティリティトークンは循環していきます。
レベルトークン(LvT)
レベルトークンは、消費されないトークンであり、主に実績を証明するトークンです。
ゲームの経験値のような役割をします。
ユーティリティトークンを稼いだ量を記録します。
こちらはユーティリティトークンの総獲得量であり、全体でどれだけ貢献したかがわかります。
レベルトークンの使い方は、以下のようになります
CHAIのように消費することはできませんが、ゲームのレベルのように溜まっていきます。
今回では、レベルトークンを一定量貯めることで、コミュニティ宛にきた案件を受けることができるようになります。
このような設計にした理由は、
コミュニティに貢献してくれていて、信頼がある人に仕事を振りたいと考えました。
STEP5:トークンの活用とエコノミクス
それでは前章で発行したUTとLvTを活用していきましょう。
CHAIのシンプルなエコノミクス
CHAIは、コミュニティの活性化のために利用していきたいので、挨拶や自己紹介、勉強会への参加などをすることで、CHAIを貯めることができます。
そして、貯めたCHAIを利用して、コミュニティの知恵袋に質問などを投稿することで循環しています。
それぞれの「トークンの予算」をどのように決定すれば良いのかについては、詳細はこちらの記事をご覧ください
URL:執筆中(トークンの分配量の決め方)
CHAIとLvT、実際の案件を組み合わせたエコノミクス
次に外部からUNCHAINへ依頼された案件を捌いていきましょう。
外部から「独自コントラクトでのNFT発行」という案件が来たとします。
簡単に案件をこなす流れはこのように進めようと思います。
1.発注元と要件定義
2.要件定義と開発費の確定
3.開発
4.技術的監査(コミュニティ内の第三者にしてもらう)
5.納品
案件を進めるにあたって、必要な人材をチーム化する(一人で実施することも可能)必要があります。
チームにはPMやデザイナーなどロールを決めて、人を集めることができるのが、コミュニティの強みであるため、メンバーを集めチームを結成し、案件を捌きます。
チームを選定する際に、LvTを利用することができます。
今回は、応募があった人の中でロールが被っていたため、LvTの高い人を優先的にチームに参加してもらうことにします。
このケースでのLvTの使われ方は、
意思決定の優先順位として使われました。
このような複数のトークンを利用することで、ユーティリティをそれぞれ分け、状況に応じてユーティリティをつけることが可能になります。
Practice:社員権ホルダーでトレジャリーの使い方を決める
今まで、ユーティリティが特になかった社員権にユーティリティを追加していきます。
現状では議決権以外は特にユーティリティはありませんでした。
前項のように案件を捌くことで、コミュニティは手数料として発注額の5%をトレジャリーに貯めてきました。
そのトレジャリーの使徒を社員権ホルダーで決めていきたいと思います。
現在の会社の状態としては、
コミュニティの誰でも予算の使い方の提案ができるように、告知し、一定期間で提案を募集しました。
その結果以下のような提案が集まりました。
これらを社員権ホルダーやコミュニティで協議し、投票して予算の使い方を決めていきます。
予備費含めて250万円ほどの使途を確定しました。
今回、社員権ホルダーへの分配が選ばれなかった理由としては、現状ではトレジャリーを分配する必要はなく、コミュニティの資産として残しておく方が良いという意見があり、分配は無くなりました。
Practice:UNCHAINハッカソンの開催
投票で承認されたハッカソンを開催していこうと思います。
提案をあげたメンバーをリーダーに運営メンバーを集めていきます。
今回のハッカソンで準備すること
・テーマ
・スケジュール
・会場
・審査員/審査方法
・スポンサー営業
・賞金
大まかにこのような事柄を決めれば、ハッカソンが開催できそうです。
このような内容にすることを運営チームで議論して決めました。
ハッカソン予算の中には、イベント運営の人件費なども含むことができ、
結果的にコミュニティメンバーがトレジャリーから報酬をもらうと考えることもできます。
ハッカソンの内容によっては、スポンサーを集めて、集金することで効率よく、質の高いイベントを開催することができます。
トークンを利用した非中央集権的ハッカソン審査
今回の審査員には、UNCHAINコミュニティが含まれています。
ハッカソンの成果物をコミュニティで評価し、CHAIトークンを利用することで、投票することができます。
そうすることにより、コミュニティが良いと思ったものや審査員のポジションに影響されづらい審査をすることができます。
ただの投票だと、CHAIを多く持っているメンバーの影響を受けやすいので、Quadratic Votingの仕組みを利用して、投票を実施します。
こうすることにより、多くのコミュニティメンバーが選択したハッカソンの成果物を選ぶことができます。
このように、コミュニティのトークンを利用することもできる面白い例と考えられます。
まとめ
今回は実際のWEB3プロジェクトであるUNCHAINさんにご協力いただき、合同会社型で実践するととのようなことができるのかについて考えました。
基本的に合同会社型でやるメリットは、コントラクトである投票による予算分配や社員の任命などを定款に記載できる点です。
今回の内容は、トークン式の会社としてこのようなことが設計できるのではないか考えてみました。
合同会社型からトークン式の会社へ遷移していくことは、確定未来だと考えていますので、その辺りも意識していきたいと思います。
用語集
トークン→ブロックチェーン上のトークン
ポイント→DB上のポイント
TIPWAVE→弊社が開発しているオンチェーンとオフチェーンで同じトークンを扱えるアプリケーション