
卒業生インタビュー第9弾!重野由佳さん
はじめに
第9弾は、シンガポールで起業家として活躍中の、第1期生の重野さん!next AOMORIを受講する以前から、ブランディングやマーケティングで手腕を発揮し、現在も新たなチャレンジを続けています。
現在受講中の4期生に向けて、応援メッセージを伺いました!
重野由佳さん<プロフィール>
青森出身シンガポール在住起業家。これまでオーストラリア、日本、シンガポールにて医療・美容・飲食・IT・コンサルティング業界に従事・起業。USAGI SG Pte LtdのCo-founder / Creative Directorとしてシンガポールで日本をテーマにしたカフェを2店舗経営しつつ、インドネシア進出とFoodtech分野での起業を準備中。
↓現在経営中の飲食ブランド
↓株式会社ドウシシャのコンサルティングで企画からブランド開発を担当したブランド
世界のどこにいても、生まれ育った青森で、起業できる
<新しい場所にいたほうが楽しい>
青森県黒石市で出生後、県内外で転居を繰り返す幼少期をお過ごしになった重野さん。どこにいっても、「新しい場所にいたほうが楽しい」と感じていて、場所に対する執着があまりなかったそうです。
中学・高校・専門学校は青森市で過ごされました。
専門学校卒業後、キャリアのスタートは歯科衛生士。将来の可能性に限界を感じ、試行錯誤を繰り返した末、東京での生活を始めます。
2〜3年後、ちょうど東日本大震災(2011年)の時期に大阪に転居。元気で活気のある勢いのある街の雰囲気が好きになり、言いたいことを言ってもいいコミュニケーション文化が肌にあっていたのだそう。
そこでの人との出会いから、大きく環境を変えて、自分を成長させたいという思いが膨らみ、オーストラリアに移住。多くの刺激を受け、重野さん自身も活動を展開していきます。
ケアンズからシドニーに移り、美容サロンで英語とネイルの技術を学びながら仕事を始めました。美容の大会で、チャンピオンを獲得(2014年)。ヨーロッパの医療ネイルのプロダクトや、日本のジェルネイルを販売する事業を始めます。
結婚・出産のタイミングで日本に帰国。
ご主人が飲食の事業を手伝うことになり、重野さんも立ち上げに参画し、2017年そのなかでブランドを立ち上げることにもチャレンジ。会社をわけて事業を立ち上げます。重野さんにとっては、1回目の起業でした。
↓重野さんが一番初めに起業したアジアンスイーツのお店↓
天然色素のみでつくる、カラフルなスイーツが、人気を博しました。
―シンガポールに生活の拠点をおいたのは?
そのブランドをシンガポールにも展開するために家族を連れてシンガポールに移ったのは、2019年。
そのあとコロナ禍を迎えました。シンガポールで立ち上げたお店を営業できなかったりということが続いて、現地のビジネスパートナーの意向もあり、お店を閉店させて、その後日本に残してきた店舗を閉めました。
<コロナ禍で、どこでも起業できると気付いた>
それでもありがたいことに飲食のコンサルティング依頼はずっと続いていたんです。そこで、自分ではなく誰かのブランドを作る、というクライアントワークをしていました。
店を潰したので、これからどうしよう、、、という思いも、実はコロナ禍後半にはありました。
その頃、ブロックチェーンを活用したITスタートアップの経営者たちと会うことが多くて、素晴らしいタイミングでこの人の考えている世界すごいな、かっこいいなという心から尊敬できる先輩に出会えたんです。
彼の会社では世界中に点在している起業家やアーティスト、データサイエンティストやUXUIデザイナーのような人財のコミュニティをDAOで運営しつつ、企業の課題に対して最適なチームをアサインし仕事を進めて行くようなSaaSのサービスを提供していました。毎回アイデアを出してはオンラインで解決していくような働き方は、世界中がつながっている感じがあってすごく画期的で、生きている時間帯もバラバラで一度もリアルで会ったこともない世界中に散らばる方とチームを組みプロジェクトを進めていく、というのがとにかく刺激的で面白かったんですよ。新しいことの連続で、毎日細胞が生き返る感じがしていました。
その会社で働くことで、海外にいながら日本の企業の手伝うなどということが当たり前にできるようになったんだなぁって実感していて、この体験が、海外にいても青森でも起業できるんじゃないか、という気づきにつながりました。
ちょうどその頃に、next AOMORIの第1期生の募集をしていたんです。
実家を売却し家族が県外に移り、生まれ育った地元なのに青森に家も家族もいない状態は私にとってさみしいことだと感じていたから、青森で私にもできることがあるんだったら、という思いで受講を決めました。
起業のアイデアは、受講中に変化
―地元に関わりたいという思い一つで、応募したんですね。
応募の際のビジネスプランは?
<一番関わっている人を幸せにする事業を>
当初は伝統工芸の伝承を、ブロックチェーン使って面白いことができないだろうかと考えていました。「伝統工芸×地域×ブロックチェーン」の組み合わせで、周りに手伝ってくれるエンジニアもいるしなにか面白い取り組みができる確信もあったんです。
ところが、講座を受けるなかでプランは変化していきました。
伝統工芸の地域課題を知るために、青森の伝統工芸の代表的な方にヒアリングをさせていただきました。
特に当事者の方々がデジタルを活用し現在とは別の新しい形でこの伝統工芸を広めたいと思っていないということもわかってきて、わたしがやるべきことはこれじゃないんだろうな、と思いました。
新しい視点で形を変えようとするとしたら、この伝統工芸に一番関わっている人が幸せじゃない、気持ちが乗らないことだとしたらすごく良くないな、進めるべきではないと思ったんです。
<「かわいいし、楽しいだろうな」から生まれたプロダクト>
その他の課題について、青森県庁の方に尋ねると、「フードロス」が挙がりました。
とくに「りんご」のことが挙がりました。「青森といえばりんご」の素材がとてもわかりやすくて訴求しやすく、とてもいいなと思いました。
主人がファッションの業界で長く働いているので、素材のことは身近だったし彼もVeganのデザイナーズブランドを取り扱っていたので近くで見ていました。過去にオーストラリア住んでいた頃からVeganやエシカル・エコフレンドリーな生き方や環境がかなり身近になっており、
オーガニックのもの、環境にいいものを選ぶ、購買で企業に対する支持をすることが当たり前の感覚になっていました。
地元の廃棄されている素材を活用できるエシカルなレザー素材をつくり、そのプロダクトを私自身持てることがとても楽しいものに思えました。わたしにはダイバーシティ豊かな友人たちが世界中にいるので、宗教や動物性を持ちたくない友人たちとおそろいにできることの喜びもありました。
フードロスの解決にもつながるのも、すごく良い。
こんなふうに、とても気軽な感じに考えてたんです。「わたしだったら絶対できるし、かわいいし楽しいだろうな」って。
プレゼンのあとは、ありがたいことにシンガポールから青森へのリモート起業であることや日本でのSDGsの盛り上がりも重なり、メディアからも沢山取り上げていただける機械に恵まれました。起業する前から、「こういうものを作りたい」といろんな方に伝えていたら、具体的にこの事業を助けてくれるような繊維の企業や色々な企業の方とつながりができました。
経営中は基本リモートで関わりながら帰国したりして仕事をすることもあったのですが、現在わたしは完全に経営から退き、別の方が事業を続けてくれております。
飲食業を面白くしていくために
<日本を含めたアジア発・アジアの素材を使った、世界に誇れるブランドを創りたい>
祖母がリンゴ農家で農業が身近だったんですが、実は全然手伝ったことがなくて、若い頃は農業に全く興味がなかったです。それが今になってものすごく興味をもっていて、今農業を勉強しています。自身の商品にも使用しているバニラを育ててみたり、パーマカルチャーをしているレストランに行ってお話を聞かせていただいたり、オンラインで授業を受けたり、農業を学びに実際にインドネシアの農家さんのところへ行ったり。
現在はシンガポールで二人のパートナーと飲食事業の会社を経営していて、日本のカルチャーを打ち出すような抹茶やお餅を提供する和カフェを運営しています。
飲食業をやっている中で、普通に売っている原材料を卸し業者から購入する状態だと、なかなか商品にこだわり切れないところがあって、素材やプロダクトにこだわったサービスを展開するには、自社で農業を含めたところからやっていけるようになるといいなと。
ゆくゆくは自分の事業に関わるものを全部自分で作る・もしくは提携農家を持ちたいと思っています。
今後、もう一度今までずっとやってきている飲食業を面白くしていくためには、店舗展開だけではなく、農業や観光農園など、そういった広げ方をしていきたいんですよ。そのほうがわたしも面白いですし。
来年、インドネシアへの進出を準備しています。人口が伸びていて若い方が元気で、どんどん盛り上がってくる、経済成長していくところをみていたらインドネシアで事業がやりたくなってきたんです。
なにより、そこには農業と素材がしっかりある。インドネシアで現状のブランドの姉妹ブランドを生み出して、自社で50店舗くらい立ち上げるという目標をもっています。
この前知人と話題になったんですが、高級チョコレートのブランドとか、ヨーロッパに多いじゃないですか。わたしたちもチョコレートのクーベルチュールなど使用しているのですが、そこで何が起こっているのかというと、カカオなどアジアで採れる素材をわざわざヨーロッパに輸出し、そちらで製造し、ヨーロッパからまたアジアに輸入して戻して販売している、という流れ。
それで価格も上がるしカーボンフットプリントに関しても、エシカルじゃないですよね。
それだったらアジア発でアジアの素材を使った、かっこいいブランドが作れたらいろいろ解決するよね、という話になりました。とても納得していますし、わたしがやるべきだなと感じています。
欧米で作ったブランドがマーケットのベースになるだけじゃつまらない。日本を含めたアジアから、世界のスタンダードになるブランドを創りたいです。
本気で没頭できる、楽しいことをとにかくしたい。
わたし、ふつうの会社でたぶん働けなくて。お金のために働けないんです。楽しいから仕事しているし、生きていく中でこれ面白い、これがすきという感覚や自分の中では成仏させられない感情など、自分の中にあるものを表現としてアウトプットしたい、という想いで生きています。それが生き甲斐で、わたしの仕事です。
自分の関わったプロダクトで、みんなが幸せになってくれたらいいなって。それに、偶然で奇跡的な人との出会いは、わたしには止められないんです。
その人としか、その瞬間の閃きにしか生み出せないという、奇跡的な感覚を大事にしています。人種や思考を含め、色んなダイバーシティとの化学反応を楽しんでいますし、わたしはそういう場所に飛び込むのがめちゃくちゃ得意なんです。
思考と行動が近く一致しているので、直感に従って生きているんです。やりたいと思ったらやるし、やりたい気持ちと、できるという自信と、時代に合っているか、、、。それが揃っているんだったらやる。
"時代に合っているか"は「1.トレンド感があるビジネスか、その時代が求めているビジネスモデルかということ」に加えて「2.ソーシャルインパクトを出せるビジネスなのか」という意味も含ませております。
企業って利益や雇用もそうだけどソーシャルインパクトを出すことで社会に貢献できますし、最近スタートアップで働きたいという方はその部分を重視して集まってきているように感じています。ここがあると人財、モノ、お金が集まりやすいという体感もあります。
もう一つぐらい付け加えるすると"自分の生き方に合っている/寄り添っている"ビジネスか、ということでしょうか。
社会的に素晴らしいビジネスモデルだったとしても、自分の軸に本当に合っているのか、ということです。自分の生き方や自分なりの哲学に寄り添うビジネスだとやりやすいです。
例えばわたしに当てはめると
#エコフレンドリー
#ダイバーシティ
#ジェンダーイコーリティ
#グローバル
などです。いつも大体ここに当てはまることをして生きています。
一回時間をおいて、現状のビジネスが落ち着くまで待つこともありますが、ビジネスが跳ねる瞬間を、見逃さないようにしています。
お金のことはたぶん、なんとかなるという自信があるかも。
事業やアイディアについて話せる起業家や投資家含めた心強い先輩たちがいっぱいいるという自信が、行動につながっています。
40歳、いま、ちょうどいい
若い人たちと、経営者や投資家の中間にいられるので、間に立てて、とてもいいな、楽しいなって思います。経験値をアウトプットするのも、相手が安心して見てくれる年齢で、やりやすいんですよ。
4期生にメッセージを!!
<ビジネスは難しいものではなく、楽しいもの>
苦しい思いをしなければスタートアップじゃないっていう人がもしかしたらいるかもしれないんですが、そんなことなくて没頭して楽しんで、人を巻き込んで進めていくほうが、みんなが幸せですよ。
つまり、どれだけ楽しく、自分のやりたいことに没頭して行動できるか、ができる人が残っていくということ。
好きなことを思いっきり、楽しく人を巻き込みながら進めていってほしい。
大人になると、考えなければならないことたくさんあるんですけど、そういうことばかり考えていると進められないですし、面白いものはできない、と思います。
地域でも、やりたい人がいないと、始まらない。チャンスや自分の心の動きを見逃さないでほしい。
自分の心に素直にまっすぐ進んでほしいなぁ、と思います。
インタビューには、1〜3期の先輩も駆けつけてくれました!

今でも、すぐに電話して相談し合う関係の三上さん。お互いの得意な部分が違うことやそれについての尊敬があるので、ビジネスに関しても相談し合う友人関係。
シンガポールとも行き来し、共通の知人との交流も広がっているのだとか。
(1期・三上さん)
1年前に、話を聞いてもらって、そこから全然変わってない、パワーアップしているなぁと思って聞いてました!
今でもサラリーマンなんですが、行動力を尖らせていたいな、って思いました!
誰よりも先手に動くようになってありたいなと思います。(3期・三國谷さん)
重野さん、ありがとうございました!
\第4期開講中!/
地域課題の解決につながる創業を目指す10名の受講生が思いのつまった事業をブラッシュアップ中!
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先駆者の伴走を受けながら、課題の解像度の上げ方、解決策の生み出し方、解決策をビジネスアイデアまでブラッシュアップする方法を学び、実践していくプログラムです。
【青森県庁主催】青森県の地域課題から新たなビジネスを創出するプログラム
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<運営:株式会社MAKOTO WILL>
(聞き手:安田美央/next AOMORI 3期生/2024年度事務局)