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【VISIONING VOICE Magazine #22】 「無理をしないヘルスケアで誰もが健康になる未来へ」 〜シルタス株式会社 代表取締役 小原 一樹さん〜

NEXs Tokyoが主催する、ローカルおよび国内外の広域展開に挑むスタートアップが”次のステージ”に向かって羽ばたくために、サポートをしてくれる人やファンと繋がる番組VISIONING VOICEをインタビュー記事としてまとめたマガジン「VISIONING VOICE Magazine」📖

「VISIONING VOICE」はNEXs Tokyoと日経グループがコラボし、次のステージを目指すスタートアップ企業の3つの「カクシン(核心・革新・確信)」に迫り、起業家の想いを深堀りします。
パーソナリティは、長年スタートアップを取材している日本経済新聞社・上田敬さんとNEXs Tokyoコミュニティスタッフ・閏野が務め、番組をお届けしています。

ゲストはJUMPコース(東京発)のスタートアップ、シルタス株式会社 代表取締役 小原 一樹(おはら かずき)さんです!

バナーデータ(ゲスト)

<登壇者プロフィール>
小原 一樹(シルタス株式会社 代表取締役)
大学卒業後、特殊冷凍を扱うベンチャー企業でフードテック事業に従事。食の領域に携わる中で、「食を自由に選択すること」と「健康リスクの可視化」に課題を感じるようになり、個人の栄養バランスが自動で分かるシステムの開発に着手。
2016年11月、シルタス株式会社を設立。創業初年度から5年連続で、経産省や総務省の「データ利活用における実証実験」に参画。
2019年3月、買い物データを自動で栄養分析し、個人に最適な買い物を提案するアプリ「SIRU+(シルタス)」をリリース。神戸市、福岡市などの自治体と連携して、市内スーパーでの試験導入を行いながら全国展開を進めている。
シルタス株式会社公式サイト: https://corp.sirutasu.com/

自由とリスクを見える化する

買い物を見える化し、栄養バランスの整う買い方をレコメンドしてくれるアプリを開発しているシルタス株式会社の小原 一樹さん。みんなが健康を保つことができるように、テクノロジーの力を駆使した無理のないヘルスケアを提案しています。

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小原さん:今は食を自由に選択できる時代です。コンビニでも、デリバリーでも好きなものが買えます。これは良いことだと思いますが、自由に選んでいった結果、国民の半分くらいが生活習慣病になっているという状況は、実は自由ではないのだとも思います。自由に選べるのであれば、同時にリスクも見えていることが大切だと思い、買い物情報と自動連携した栄養管理アプリ「SIRU+(シルタス)」を開発しました。

スクショ(事業紹介2) (1)

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小原さん:普段使用しているポイントカードやクレジットカードとアプリを連携させれば、買い物をした翌日には購入結果がアプリで見られ、それを栄養素に変換することができます。また、ネットスーパーでの買い物では、買い物かごに商品を入れるたびにリアルタイムで栄養素に変換してくれます。そして買い物の購入履歴の中から足りない栄養素があれば指摘し、食材やレシピのアドバイスも表示してくれるという、電子取引自体をヘルスケアにすることができるサービスなのです。実際おすすめしたものを買ってくれる確率は20%と高い数字をたたき出しています。

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小原さん:シルタスというサービスは需要と供給で見ると、需要を作るサービスです。しかし、そのためには供給側を最適化しなくてはいけないという任務も担っています。消費者がお勧めされた商品を買いに行っても、スーパーに売っていなければ機会損失になってしまいます。私たちは、「SIRU+Biz(シルタスビズ)」を通してスーパーやコンビニに顧客が興味を持っているデータの提供を行っています。実際に、ある商品をお勧め表示した際、その商品の売り上げが1.7倍に伸びた、という実績もあります。ここで大切なのは、買った人も買わされたのではなく「いい買い物をした」という満足感があることです。メーカー、スーパーも、購入した人の家族構成や年齢がわかるだけでなく、アプリがお勧めしている食材を知ることができるので、売り場でも推していくことができる。お客さまも健康になるし、スーパーとしても売り上げが上がるというwin-winの関係が築けるのです。

【核心】自らを知るための回り道

―― 起業された背景について教えてください。

小原さん:もともとは就職活動をする前に、日本で就職活動をするべきかを考えていたのですが、自分が日本人であるということ以外に日本で働く理由が思い当たりませんでした。他に最適な国があるかもしれないことを知ったうえで就職をしたかったので、バックパッカーとして世界を廻りました。当時は2週間ごとに国を移動していたのですが、そのたびに法律、文化、価値観が変わります。旅の最中は自炊をしていたのですが、ある土地では価値のある食材が、いくつか国境をまたぐとゴミのように扱われている現状を目の当たりにし、食品が適材適所にないということを課題として感じました。しっかりとしたコールドチェーン保存技術を駆使して、流通させれば経済が潤うのでは、と。でも、私は芸術学部の出身で起業に向いているスキルを持っていなかったので、まずはスキルを身に着けるために帰国し、そこで特殊冷凍庫と出会いました。

―― 今のサービスにはどのように行き着いたのでしょうか。

小原さん:私が売っていた特殊冷凍庫は、今でこそIPS細胞を凍結するのに使われていますが、当時は一時海産物を冷凍すると3年前のものが今釣ったものと遜色ないくらいに冷凍できるというものでした。これまでの冷凍庫はいかに早く凍らせるかを売りにしているのに対し、自分たちの売っていたものは、いかにおいしく冷凍できるか。しかし、「おいしく」は食べる人によって評価が違います。営業しようと思っても、食品の価値を伝えるのは難しいと当時の課題として考えていました。そこで、食品の価値のもう一つの側面、生きるための栄養が保たれているかということに着目しました。栄養は定量化できるので、証明することができます。ところが今度は、栄養素で訴求しても、多くの人は自分に栄養が足りているかどうかさえわかっていないという現実を突き付けられたのです。自分の栄養状態がわかること、ちゃんと選べること、供給が最適化すること。これがすべてできるようになると、みんながハッピーになると思い至りました。

【革新】テクノロジーの力で新たな価値を創造する

スクショ(配信中)

―― この事業を通して、小原さんがアップデートさせたい対象はどんなことでしょうか。

小原さん:一つは、ヘルスケアの領域を治療から予防に変えていかなくてはと考えています。でも予防のためには、毎食記録を取るなどの何かしらのアクションをしなければいけないのが現状。まだ病気になっていない人は、なかなかそのモチベーションを保つことができません。この部分を無理して頑張るのではなく、テクノロジーでアラート出せるようになればと考えています。
もう一つは、スーパーマーケットやコンビニのリテールを変えていきたいということです。今、日本の人口は減少しているので、モノを売るビジネスには、何かを付加していかなくてはリテール自体が弱くなってしまいます。それはすなわち、自分たちの食糧庫が先細ってしまうことでもあり、結果的には皆が困ることになるのです。モノを売るだけでなく、何を売るか、何を売ったかというデータが他の領域でも価値を発揮できるようになれば、リテール業界自体がモノを売るだけではなくなるのではないかと考えています。例えば病気のリスクを知らせてくれるなど、スーパーでの購買履歴のデータがヘルスケアやフィットネスに活用できれば、彼らのデータに価値を提供することができます。スーパーマーケットが「買い物をする場所」から「自分の健康状態を知る場所」に、さらに「改善する場所」になる。新たな価値がうまれるリテール側の革新が起こるのではと思っています。

【確信】“頑張らない”をムーブメントに

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―― 小原さんの「欲しい未来」は何ですか?

小原さん:「健康を頑張らない」世の中にしていきたいです。誰もが健康でいたいと思っていますが、健康でいることと楽しい生活をすることが逆ベクトルになってしまうことが多く、「健康のために頑張ろう」となりがちです。しかし、頑張ってしまうと楽しくないことも増えてしまう。もともと健康体であれば、崩れないようにそのバランスを見極められるようなテクノロジーがあることが大切だと思います。食事一つを取ってみても、時には欲望に忠実に選ぶこともあれば、こだわりのない時にはテクノロジーのアドバイスに従ってみる。そのような負担のない頑張り方が実践できるような社会になると、無理する人も減って、みんなが健康でいい未来になると思っています。

―― 今後積極的に取り組んでいきたいことはどんなことでしょうか。

小原さん:現在シルタスは400店舗ほどと連携していますが、スーパーの数が増えないとユーザーも増えません。このサービスは広がっていかないと価値が発揮できないものなので、まずは連携店舗数を増やしていきたいと思っています。スーパーは購買データを外に出すのを渋りがちですが、この活動には社会的価値があるというムーブメントを作っていくことで取り込みやすくなると思っています。この取り組みは皆がハッピーに、社会的にもハッピーになるものなので、スタートアップ1社では難しいことも、自治体、省庁が推進していく流れを作って応援してくれているのが心強いところです。
また、このアプリは現在、買い物するだけで栄養状態がわかる、次何を買うべきかがわかるという2点に特化していますが、今後は営業バランスが整う商品がもらえる機能も付加していきたいと検討中です。個人の健康を、社会や企業が応援してくれる社会をつくりたいと思っています。

地域丸ごと健康体質に

―― 最後に、小原さんが今後さらに広域展開を目指していくにあたって叶えたいことや、どんな人に出会いたいか、教えてください。

小原さん: 自治体と一緒に、地域のスーパーと組んで地域の栄養状態を可視化しながら、地域を健康にしていこうという取り組みを進めています。このサービスを、いいなと思ってくださる自治体やスーパーとさらに広めていきたいです。
また、どういう買い物をしている人がどういう病気になっているのかのエビデンスを作っていくということも大切だと考えています。買い物は食べるまでに距離のあるデータで、買ったけれど食べていない、捨てているなど、食べるまでにノイズが入ります。買い物のデータを単なるマーケティングの材料ではなく、ヘルスケアに生かすために、運動や睡眠などのデータとも連携させながら、かかった病気との相関性を見ていく研究を進めていきたいです。
現在、事業拡大をしていく上で、すべての職種で人材が足りない状態です。このサービスに賛同し、広めたいと思ってくださる方がいれば、ぜひ一緒に未来を語りましょう。

スクショ(当日の写真)

―― 小原さん、ありがとうございました!


番組ではその他にも、マガジンでご紹介しきれなかった、小原さんの事業に対する想いやエピソードを聞くことが出来ます。youtubeアーカイブより視聴可能ですので、併せてぜひご覧ください!

次回はJUMP(東京発)コースのスタートアップ、株式会社ホーン 代表取締役 松本 直樹(まつもと なおき)さんにご出演いただいた#47の記事です!


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