【VISIONING VOICE Magazine #9】 「街ぐるみで後継者課題を解決する」 〜ココホレジャパン 浅井克俊さん~
NEXs Tokyoが主催する、ローカルおよび国内外の広域展開に挑むスタートアップが”次のステージ”に向かって羽ばたくために、サポートをしてくれる人やファンと繋がる番組VISIONING VOICEをインタビュー記事としてまとめたマガジン「VISIONING VOICE Magazine」 📖
「VISIONING VOICE」は日経グループとコラボし、次のステージを目指すスタートアップ企業の3つの「カクシン(核心・革新・確信)」に迫り、起業家の想いを深堀りします。
今回はDIVEコース(地域発)のスタートアップ、ココホレジャパン株式会社 代表取締役 浅井克俊(あさいかつとし)さんにインタビューさせていただきました!
<登壇者プロフィール>
浅井克俊(ココホレジャパン株式会社 代表取締役)
横浜生まれ。広告代理店経て、タワーレコードに入社。コーポレイトボイス「NO MUSIC, NO LIFE.」の制作のほか、マーケティング、CSR、SP、タイアップ、イベント制作等に携わる。販促企画部長、ライブ事業部長を務め、2012年退職。縁もゆかりもない岡山県に移住。2013年ココホレジャパンを設立。2020年ニホン継業バンクをローンチ。
ニホン継業バンク公式サイト:https://keigyo.jp/
4年後に迫る大廃業時代
地方で後継ぎに悩む小規模事業者と、地方に移住し事業継承を希望する人を繋ぐプラットフォーム「ニホン継業バンク」を運営するココホレジャパン株式会社代表の浅井克俊さん。
――事業継承にはどんな課題があるのでしょうか。
浅井さん:まもなく「大廃業時代」が来ると言われているのはご存じですか? 2025年に経営者の約6割が70歳以上になり、そのうち約半数には後継者がいないと言われています。ということは、簡単に言うと約3割の企業が高齢化を背景に自然廃業する可能性があるということ。これが大廃業時代です。一方で、私も岡山に移住していますが、都市に住む人の約3割が移住したいと考えているというデータがあります。つまり、移住したい人はいるのに、地方の仕事はどんどん減っていっているのです。
事業継承のもう一つの課題は、手段がM&Aしかないこと。銀行がM&Aの案件として扱うのは、少なくとも手数料が500万円以上発生する5000万円から1億円以上の企業です。それ以下の企業は相手にしてくれません。M&Aのマッチングサイトもありますが、高齢のネットが苦手な経営者が使いこなすことは難しい。地方の小規模事業者には事業承継の機会が得られにくいのが現状です。
浅井さん:このような状況で、私たちが提供しているのが、「ニホン継業バンク」です。街ごとに後継ぎを探している企業が掲載されており、ユーザーは住みたい街を選んで事業を探します。継業バンクは、サブスクリプション型で市町村や商工会が費用を負担しており、企業が掲載費用を払っているわけではありません。また、事業承継したい経営者は、ネットを使わなくても、今までと同じように役場や商工会に行ってくださればいい。すべての企業を制作プロダクションである弊社が取材し、事業内容や経営者の思いがしっかりと伝わるよう記事化します。掲載件数の上限はありません。そのようなエコシステムを、街と一緒につくろうというプロジェクトです。
事業継承の方法も、M&Aのような事業譲渡だけではなく、いったん社員になって技術を継承してから事業を継いだり、弟子になったりするというような選択肢もあります。
――サイトの規模はどのようになっていますか?
浅井さん:会員数は約1300人で、3大都市圏に住む30代から40代で農業や飲食業を希望している人が多いです。また、現在は5つの地域に導入され、10数件ずつ掲載されています。2020年にサービスを開始し、1個3000円のシイタケの栽培や川魚の養殖業など5件の継業が決まりました。
――5件も継業が決まったのですね!
浅井さん:地方の高齢の経営者の多くは「事業を継ぎたい人なんていない」と考えています。実際は継ぎたい人はたくさんいるのですが、そこを繋ぐ仕組みが今まではありませんでした。継ぎ手希望の人を現地に案内すると、みなさん嬉しそうに話をしてくださいます。経営者の自己肯定感にも繋がるようです。
【核心】震災をきっかけに長年の夢にチャレンジ
浅井さん:移住前はタワーレコードで販促企画部の部長をしていたのですが、2011年の震災をきっかけに、「いつか社会起業をしてみたい。地方に住んでみたい」という自分の夢を真剣に考えるようになりました。「ここでシフトチェンジしなければ、一生この夢にチャレンジすることはない」と思うに至り、1年半考えた末に岡山に移住しました。岡山を選んだのは、せとうち国際芸術祭に観光客として行ったことがきっかけです。瀬戸内海に惹かれて移住先を探していた時に、岡山で地域おこし協力隊の募集を見つけて応募し、任期1年目で広告制作の会社を起業しました。
――そこからどうして、後継者問題に取り組むことになったのですか?
画像引用元:地域の「新しいおみやげづくりのバトン」をつなぐ、ままかRe: Project(二ホン継業バンク)
浅井さん:岡山の特産であるママカリの可能性を掘り下げようと、ママカリをアンチョビ風にアレンジした「ままチョビ」という商品を開発し、その事業を地元の人に譲りたいと思ったのですが、なかなか譲り先が見つかりませんでした。そもそも譲り先を探す手段がないのです。また、地方創生がテーマの雑誌で事業承継の特集を組んだ際に、相談することもなく廃業してしまうことや、技術継承の問題があることにも気づきました。そこで、当事者である私たちが後継者問題を解決できないかと考えたのが最初のスタートです。
【革新】後継者問題の新しい解決手段
――浅井さんがアップデートしたい課題はなんですか?
浅井さん:M&Aの構造的課題です。M&Aは経済合理性を優先し、高い取引をして高い手数料をとるというビジネスモデルです。ですが、地方のスモールビジネスには経済合理性では語れない価値があります。スモールビジネスを残していくには、手数料の考え方を捨てないといけません。そこで出てきたのが、サブスクリプション型にし、地域で費用を負担するという考え方です。今までM&A一択だった事業承継の手段を、別のものに変えるというゲームチェンジをしていきたいです。
――サブスクリプション型ではスケールしづらい面もありませんか?
浅井さん:確かに急速に事業を拡大できるようなビジネスモデルではありませんが、先ほど述べたような大廃業時代はもうすぐそこまで来ており、この課題に対して街としてどう取り組むのかというアイデアが求められているのは事実です。もし仮に1000件の自治体が10件ずつ案件を載せれば、1万件の案件が掲載されることになります。そうすれば、日本の後継者問題が次のステージに進めます。まずはその機会をつくりたいです。
【確信】小さな企業が街の多様性をつくる
――浅井さんが欲しい未来について教えてください。
浅井さん:「継業を、就職や起業と同じように自己実現の選択肢にしたい」と思っています。旅先や自分の住む街に、小さなお店が並んでいたり、その街ならではの食べ物があったりすると楽しいですよね。私はそうした地域の多様性を残していきたいのです。それを実現していくには、地域の事業を残していくことが大切です。私たちの時代には、家業を継ぐことをネガティブに捉える方も多かったですが、継ぐことがもっと当たり前になり、地域の魅力的な仕事を引き継いでいくことが自己実現になってほしい。それが地域の多様性に繋がると考えています。
地方創生実現に向けて
――最後に、浅井さんがこれから出会いたい人について教えてください。
浅井さん:地域の小規模事業を残したい、後継者問題を解決したいという自治体の方はもちろんのこと、金融機関や地方を持続可能にする取り組みに参加されているみなさんと繋がれたら嬉しいです。
――浅井さん、ありがとうございました!
番組ではその他にも、社名の由来のお話や今後の展開について、より詳しいエピソードを聞くことが出来ます。youtubeアーカイブより視聴可能ですので、併せてぜひご覧ください!
次回はJUMP(東京発)コースのスタートアップ、株式会社LX DESIGN 代表取締役 金谷智(かなたにさとし)さんにご出演いただいた#31の記事です!
※7月14日(水)17:00〜配信を予定しておりました「VISIONING VOICE#31」の配信は予定を変更し、8月25日(水)16:00〜で開催いたしました。
■浅井さん、ココホレジャパンさんに話を聞いてみたい、また、興味のあるみなさんは、コミュニティマネージャー・スタッフにご連絡いただくか、下記メールアドレスへお問い合わせください。コミュニティマネージャー・スタッフより繋がせていただきます◎
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