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NYC Fashion 業界で働く - Technical Designer (テクニカル・デザイナー)
女性が洋服を着ていて、真っ先に目が行く所、どこだと思いますか?
胸もと、そしてウエストです。
誰が見るかによるのですが、大抵この2カ所です。正面から見たとして。
Technical Knit Designer (テクニカル・ニット・デザイナー)
これが、私の仕事。日本のファッション業界では、クリエイティブ・デザイナーが兼任するらしく、多分、アメリカ特有のものらしいです。
ニューヨークのファッション大学 (Fashion Institute of Technology)卒業後、最初の就職活動を始めた時に、このことを知りました。
それって何するの?
洋服のエンジニアって感じでしょうか。大きく分けてふたつあります。
1. Development (試作過程)
デザイナーが、デザインをしてデザイン画を起こした後に、縫製・ニット工場が、サンプルを作れる様に、Spec Sheet (=仕様書)を作ります。
Spec Sheetには、こんな事書き込んでます(もちろん全部、コンピューター処理です) -->寸法、糸の種類、縫い代のしまつ、編み始め・終わりの方法、編み具合の強度、ボタン・ファスナー・スナップなどの付属品の詳細。
2. Fitting - Development / Production (製造過程)
工場からのサンプルを、実際のモデルに着せて、デザイナーと一緒に細かくチェックしていきます。Fittingの後に、直して欲しい所、変更したい事、継続してOKな項目などを、Fit Comment (フィット・コメント)として、Spec Sheetに加え、それに基づいて、修正された全ての寸法(Revised Spec)も書き足します。
試作過程でも、製造過程でも、Fittingに大差はありません。
試作過程では、セールスマン・サンプルとかショールーム・サンプルを工場に発注するのが目的で、それが実際に製造にまわるかどうか(買い注文が入るかどうか)未定です。でも、製造過程では、最終承認されたサンプルを基に、工場が実際に買い手に、出荷される商品を作るので、ミスは絶対にあってはダメです。
SEXYに仕上げてね!
ちょっと、前置き長すぎましたね。
では、その「胸もと」の話なんですが、胸の谷間を見せるほどに下げるフィットがとても多いんです。これは、そういうデザインの場合は、という事ですけど。分かりやすい例では、Vネックの胸もと。
空きが浅過ぎると、その "V字" の頂点に向かって、ハサミを入れてる私に、
Designer「もっと、もっと、下げて。」
私 「またかい!どんだけ下げんの?!」<--顔には出さず。
Designer「子供服じゃないんだから、セクシーに仕上げてね!」
私 「あいよ!」とは言ってないけど、"Ok, sure!" 「ガッテン、承知の助!」みたいな感じで、Front Neck Drop: lower by 1 1/2" (前えりぐり:3.6cm下げる)と、メモる。
”SEXY” の本来の意味って何?
私も、ニューヨークで生活する様になって、この"sexy"伝える本来の意味を理解した様な•••。
ご存知の通り、アメリカは移民で創り上げられた国。ニューヨークは、特にいわゆる人種のるつぼ。日本人もそうである様に、それぞれみんな、違った文化をもってここに集まってきて、それが全てかき回されて独特の文化が作られている。
コルセットが創り出した"SEXY"の根源
服飾の歴史にもある様に、1500年ごろにイタリアでコルセットが生まれ、フランスへとわたるんです。当時の婦人服は、上下分かれていて、コルセットは、下着として胸を包み、押し上げるという、ブラの役を担ってました。
つまり、もう16世紀から、ヨーロッパでは胸を押し上げて強調し、それを美しく見せることがトレンドで、文化の一部になっていた。もっと言えば、美しいものは、更に強調し、より美しく見せる。という文化。
”SEXY” の本来の意味が、日本文化の中で変わってしまった(?)
日本の服装の歴史をたどれば、着物。幾重にも重ねられ、襟ぐりは、首近くで交差。ちなみに、1500年代は、室町時代後半から、安土・桃山時代にあたります。
ここが、大きな分かれ道のひとつの様に感じるんです。
A. 当然の様に、押し上げられた胸もとを日常に、目にする
B. 秘密を隠すかの様に、胸もとは閉ざされている
そうすると、こんな風に変化したって思うんです。
A. 美しいものを見せる事 = SEXY 対 B. 隠された物が見える = SEXY
欧米と一言でくくって良いのかどうかは疑問ですが、女性でしか持ち得ない、肉体美をより美しく見せる事を、少なくとも、ニューヨークのファッション業界では、SEXY と表現されてます。
こういうコンセプトに基づいて、仕事をし続けて、胸もとを美しく、かつSEXY に見せるのも、テクニカル・デザイナーとして、忘れてはいけない事の一つだと、学んできました。
ここに辿り着くのに、ちょっと時間は、かかりましたが、自分で試行錯誤を繰り返し、服飾の歴史となど調べたりして、働きながらの更なる、良い勉強になりました。
バランスの美
業界で一緒に仕事をする、フィットモデルの平均身長は、172cm~176cm。本当に、背が高いですよ〜。157cm位の私は、いつもモデルさんを見上げて仕事している感じです。
私の仕事は、いかにデザインに忠実に、しかも機能的で、その外観が綺麗な洋服をつくりあげる事。襟ぐりを、1cm上げたり下げたりするだけでも、全体の雰囲気が変わるんですね。
「ものづくり」には、何にでも当てはるかもしれませんが、全体のバランスが気持ちよく整っていればこそ、ひとつ、ひとつの detail ディテールが美しく、各々の価値を表現できる。