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ドラマ撮影時のコロナ対策

先日、短いドラマ撮影の監督をしてきました。

世の中がコロナ一色になってから初の、役者演出でした。

そして、従来とは全く違ったやり方が必要となり、とてももどかしい思いをしました。とは言え、やれる範囲でやるべきこと、やれることをやるしかありません。

テレビ局などでも、感染拡大を防止するためのロケ・番組制作のガイドライン等が発表されています。

今回、撮影を通してやってみたこと、思ったことをまとめてみたいと思います。

国内の撮影に関するガイドライン

詳しくまとめてあるページを見つけました。

「新型コロナウィルス感染予防対策にかかるガイドライン集」
https://www.japanfc.org/coronavirus_guidelines

ざっと読んでみましたが、共通点は次のあたりでしょうか。

・体温、体調をチェックし、記録する
・人の流れを記録する
・場所が密閉空間になることを避ける
・人の密集を避ける(会話を避ける)
・ソーシャルディスタンスをとる

飲食店などの一般的な生活に関わることと、別に違うものではありませんね。

さて、今回の制作にあたり、スタッフ同士の事前打ち合わせでも、このコロナ対策が求められました。

プリプロ:撮影準備

◎シナリオや撮影のスタッフ打ち合わせ
すべてオンラインでZoomで夜でも昼間でも、関係者の時間が合った時にパッと行える。データのやり取りも、その場で行えますし。

これはむしろ、今後も是非続けたい流れでした。

ただこれは、スタッフ間の関係性がすでにできあがっているからできたこと。まったく初めての人たちが組む場合は、もう少しやり方を考えた方がいいかもしれません。

◎役者オーディションに困る
これは悩みました。
会わずに選んでいいのかどうか。

でも結局、オーディションは書類と動画で行うこととなりました。

一次選考は書類で。
二次選考は、本人に動画を送ってもらうか、過去の出演動画を共有してもらうことで進めました。

今回はこれが限界でしたが、監督としてはもっと別の方法を探ればよかったかなと思います。

「当日会ってみたらずいぶんと印象が違った」人が何人もいたのです。
そして、宣材写真と本人は、やっぱり違うんです。

◎撮影当日の感染症予防対策について
なんだか、撮影そのものよりも、これについての話し合いが多かったような印象です(苦笑)。

何よりもまず、「役者はマスクをしたまま演技するかどうか」をクライアントに確認しましたが、さすがにそれはなく。
次のように、細かく細かく準備することとなりました。

・役者さんにはフェイスシールドより、あごに装着する透明マスクを採用する。(おでこに跡がついてしまうのを避けるため)

・透明マスクにはすべて役名を入れたものを用意する。
(つけたり外したりが頻繁に発生するため)
また、外した時どこに持つかも、都度指示しました。

・すべてのロケ地に、広く換気のできる待機室やスペースを用意する。

・除菌スプレーや除菌ジェルの十分な用意。

・お弁当はすべて個包装で用意、手渡しではなく「ここから持っていく」という場所を設ける。

・ペットボトルは、名前を書いた上で、各自で保管。

・飲食後のごみはきちんと分類し、特定のスタッフが持ち帰る。

・建物内での撮影は、その施設が休みの日を利用する。

・エキストラも最小限にしぼる。
広い部屋に少ない人数でたくさんいるように見せる演出。

・移動車輌も、乗る人数を制限。
一度に来ると車の数が増えて予算に影響するため、撮影時間帯をずらして調整しました。

・小道具は一人がすべて担当し、撮影の時は手渡しするような演出を避ける。

などなど、本当に細かいところまで詰めていったと自負しています。
と言ってもこれは、プロデューサーほか運営スタッフの皆さんの意思の結集です。

演出担当の僕は、絵コンテを描きながらコロナ対策が反映された絵作りを考えていきました。
向かい合ったシーンをどうするかとか、同時に会話しないようにカット割りするとか。
もう、これでもか!というくらい徹底的な合理性を追求しました。

今回、絵コンテがコロナ禍でいつも以上に役に立ったな、という印象です。

・絵がつながっているか
・撮影は現実的か

などの通常のチェックのほか、

・役者のソーシャル・ディスタンスは保たれているか
・スタッフは蜜にならない撮影体制にできるか

といったチェックもできましたし、クライアントやプロデューサーらと共有することもできました。

撮影当日

プロデューサーは、撮影当日、感染症防止の学級委員長、みたいな存在となりました。
「ご飯はこっちとあっちで食べて」
「ゴミはこっち!」
「スタッフ、近い!」
といった感じです。

◎体温測定と記録からスタート
集合は広い公園で。
一人一人「おでこにピッ」と体温を測り、名前と連絡先と一緒に記入して待機です。
これ、もし当日、僕の体温が高かったりしたら、どうなってしまうんだ・・。役者も、カメラマンも・・。
そんなドキドキがありました。

◎クランクインの挨拶は大きく距離を追って輪になって
クランクインでは、一人一人の紹介と挨拶をしたいところでしたが、今回は役者とメインスタッフだけに絞りました。

◎借りている施設からも条件が
一度に一人ずつ出入りするとか、トイレも一度に一人など。

◎お昼ご飯もバラバラに
会話も必要最低限にする。
これは味気なかったなあ・・。

◎大きなモニターを用意
これはカメラマンからの提案でしたが、これがよかった!!
大型テレビくらいのサイズがあり、監督の僕はもちろん、クライアントもスタッフも離れたところから確認ができました。
スタッフのソーシャル・ディスタンスはこのモニターのおかげです。

◎周囲の人への心くばり
我々だけではなく、たまたま通りかかった人との距離などもあります。
許可をとっているとは言え、路上の往来を遮るような場所は避けて撮影しました。一般の人との距離も近くなりますし。

こんな風に、いつもとは違う撮影の日々となりました。
撮影が無事に終わった時、いつもよりもホッとしたのは気のせいだったでしょうか・・。

海外の撮影ガイドライン事情

ふと考えました。海の向こう、例えばハリウッドではどうなんだろうかと。

こんな記事を見つけました。
COVID Guidelines for Hollywood
https://www.latimes.com/entertainment-arts/business/story/2020-06-12/hollywood-reopening-rules-productions-covid-19-pandemic

すべきこと・やれること自体はそう変わらないかと思いますが、それに対する法整備だったり労働組合の対応などに特徴があるかもしれませんね。

* * * *

「ニューノーマル」という言葉をさかんに耳にします。
コロナと共存していくための新しい生活様式が始まる、という意味です。

今回、この「ニューノーマル」は、モニターの中にも始まっている、と感じたのでした。

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オリカワシュウイチ
映像クリエイター/絵コンテコーチ

初心者の映画制作をサポートする活動を全国で続ける。埼玉在住。
仲間ゼロ・カメラ1台から映画作りをスタートし『映画工房カルフのように( http://karufu.net/ )』を立ち上げ、セミナーやワークショップを通して、これまで1000人以上に映画作りをアドバイスする。スタローンに生で会ったことのある広島県人。著書に『事例で学ぶ1分間PR動画ラクラク作成ハンドブック』『iPhoneで作ろう ビジネス動画の教科書』(共にペンコム)がある。
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