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「なんか」ってなんか言っちゃう
具体的な使い方など習っていないはずなのに、全ての日本人が多用する言葉「なんか」。
今回はこの言葉について1時間で考えてみます。
「なんか」=「なんかわかんないけど」
「なんか」とはどういうものか。どんな効果があるのか。
「なんか」はテキストでは出てこない表現である。発話でのみ用いられ、「なんかよくわからないけど」という前置きとして、使用されることがほとんどだ。
先日のM-1グランプリにて「なんか」が効果的に使用されている場面があったので、優勝コンビの令和ロマンの漫才から引用する。戦国時代にタイムスリップしたが、明らかに当時の武士ではない奇妙な輩が登場したときのワンシーン。
くるま「イイねぇ~。戦は戦場の華よ。」
ケムリ「なんか2.5次元みたいなヤツ来たんだけど」
この場では2.5次元俳優の明確なイメージは全体に共有されていない。そのため、この「なんか」は「なんかよくわからないけど」という意味合いを含むことにより、「自分(ケムリ)もよく知らないけど2.5次元俳優のそれみたいじゃない?」と、受け手の共感をより強く引き出す効果があると言える。
実際、なんか2.5次元っぽかった。見たことはありませんが。
比喩が来るぞ!としての「なんか」
「なんか」の後には、「~みたい」が続くことが多々ある。
くるま「イイねぇ~。戦は戦場の華よ。」
ケムリ「2.5次元みたいなヤツ来たんだけど」
テキストであればこれでも問題ないように見えるが、会話によるコミュニケーションだとすると、喩えが出てくるまでが早すぎるように思う。
「なんか」を添えることにより、「喩えが来る!」という準備を受け手に植え付けることができる。ついでに「考えがまとまっていなかったが、今咄嗟に考えた感」も醸し出せる。
喩えたがりな私のような人間は、「なんか」を挟むことが多々ある。理由は上で書いた通り、私の発言に周りが耳を傾けてくれるからだ。
「なんか」担う役割は、自身の考えをまとめるための時間稼ぎだけではない。受け手の準備を整えるためのものでもある。
私が口頭での説明で「なんか」を多用してしまうのは、考えがまとまっていないからではない。相手が言葉を上手くキャッチするための時間稼ぎなのだ。決して、考えがまとまっていないわけではない。
不安とイラつきを表現する「なんか」
「なんか」は、本質的にネガティブな言葉であるように思う。考えがまとまっていないことを表現していることは上で書いた通りだが、「なんか」のあとに続く言葉は、あまり気持ちの良いものではないことが多い印象だ。
「なんか面倒そうなアカウントからDM来たんだけど」
「なんかわからないけど、明日急にシフト入れられた」
「なんかさぁ…君ってこう…あれだよね…」
ネガティブな出来事のほうが脳に残りやすいという、人間の心理だけが原因なのだろうか…。
「なんか、ここすごくいい景色じゃない?」
過去、私自身がこのような発言をした記憶があるが、これも「なんか(予想に反して)いい景色じゃない?」と、元々は期待していなかったといったニュアンスが含まれている。
「なんか君の手術成功してほしいな」
「なんかスタメンに選ばれたいと思う」
「なんか君の膵臓を食べたい」
「なんか」さえなければ普通の言葉になるのに。こんな使い方のミスをする方はいないと思いますが、一応、注意喚起として書いておきました。
最後に
「なんか」は基本的には理由や考えがまとまっていない状態で発せられます。なので、可能な限り「なんか」を言わずに、スパッと考えを言語化できるようになりたいものですね。
「なんか」を言うこと自体がいけないことではないですし、日本人である限りは縁が切れる言葉ではありませんが、なんか、こう…
なんか…そうですね…
はい。
おわり
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