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TVアニメ「ニートくノ一となぜか同棲はじめました」放送開始直前記念! 原作者・小龍インタビュー(前編) 「浮いている者同士が出会ったら、なんか合うみたいな」
2025年1月4日(土)より放送がスタートするTVアニメ「ニートくノ一となぜか同棲はじめました」は、平凡なサラリーマン・安海政(あつみつかさ)と、彼を妖魔から護るべく、居候を条件に主従契約を結んだ天才くノ一・出浦白津莉(いでうらしづり)との同棲生活を描いたラブコメディー。しづりは天才的な強さを誇るくノ一だが、家ではゲーム三昧のオタクニートというギャップが、とてもかわいらしい。原作者の小龍さんへのインタビュー前編では、作品が生まれた経緯について語っていただきました。
ニートでくノ一。もうひと癖で足された要素がチョロイン
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しづりの声優を務める矢野妃菜喜さん
――「ニートくノ一となぜか同棲はじめました」というタイトルに大きなインパクトがあります。“ニート”で“くノ一”で“同棲”と、気になるワードだらけだったのですが、このタイトルはどうやって決まっていったのですか?
小龍 もともとはTwitter(※現・X)漫画で、2019年頃から始めたんですけど、当時、Twitter漫画がすごく盛り上がっていて、僕も参入したいなと思い、漫画家の八木戸マトさんといっしょに、どういう作品をやるかを考えていたんです。そこでまず出てきたのが“くノ一”の要素になります。もともと僕は、コミケの同人サークルで二次創作をメインに活動していたんですけど、そのときタイツや水着のフェチな衣装を着た女の子を描くことをブランディングとしていたんです。その要素を取り入れられるもので何がいいかを考えていたときに、某作品にインスパイアされて、“くノ一”にしようと思いました。そこから、何くノ一にするのかを考えていき、いろんな候補をリストにして、戸マトさんと話し合った結果、“ニートくノ一”になりました。そこから内容を考えていき、“同棲”が加えられていったという流れになります。
――“ニートくノ一”の語感がすごくいいですし、同棲が入ることで、内容も想像しやすくなりますよね。
小龍 でも最初は、ニートというカタカナに引っ張られて、“ニートクノー”と読まれてしまって、苦労はしました(笑)。でも、戸マトさんのTwitter漫画の見せ方や訴求のさせ方がすごくうまいんですよね。爆速でタイムラインが流れていくTwitterだと、タイトルにフックがないと見てもらえないんです。だから、パッと見て「ん?」とさせるタイトルをいっしょに考えてくれたことは大きかったです。
――絵を見たとき、女の子のコスチュームに目がいったのですが、そこが最初の軸としてあったのですね。
小龍 そうなんです。サークル時代のブランディングを残すことは意識していたことでした。家ではジャージを羽織るだけというのも、そこをあまり隠したくなかったからで、それと、ニートでめんどくさいから着替えないみたいなところが、うまくハマってくれた感じでした(笑)。
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――作品的に、出浦白津莉(CV.矢野妃菜喜)のキャラクターが大事になると思ったのですが、彼女のキャラクター性はどのようにできていったのですか?
小龍 めちゃめちゃカリスマっぽい鋭い目つきをしていて強いということを印象づけつつ、オフのときは、ダラッとしたニートというギャップを出そうというのが、最初のコンセプトでした。ただ、戸マトさんにネーム監修をしてもらうなかで、もうひと癖欲しいということになり、チョロインというのが出てきました。ニートだけどカリスマくノ一というのは、しづりの予測内というか、意識内みたいな感じがしたので、しづりにとっても意外な要素として、同棲した安海政(CV.石毛翔弥)に、いい感じのことを言われると、めっちゃ気持ちが揺れるみたいな(笑)。この3段ギャップみたいなところは、戸マトさんと設計していったところです。
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――そうすることで、ラブコメとしての幅も広がりますよね。
小龍 当時、Twitter漫画はラブコメブームだったので、ラブコメ要素はマストで始めたんですけど、そこにチョロインという要素は、入り方としてもよかったなと思います。
――同棲相手の安海政が平凡なサラリーマンなのは、なぜですか?
小龍 これはあえてそうしたところはあるんですけど、Twitter漫画の制約で、ページ数が4Pと少ない分、情報をあまり入れられなかったんです。それにキャラクターモノで、女の子をまず立たせる目的がありました。これが商業誌のページ数であれば、男性キャラも立たせて、掛け合いをさせて読み味を出すこともできたんですけど、Twitterでそれをやると、その間に読み飛ばされてしまうので、4Pで決着をつけるということを第一に考えていました。もちろん、やり方によっては入れられると思うのですが、ラブコメで女の子を立たせるという優先順位だったので、男性は無個性にして、ユーザーが自分を投影できるようにしました。
――突然女の子が自分のもとに来るという、いわゆる落ちもの系だと、自分に置き換えて見るところはありますからね。
小龍 そうですね。でも物語が進んでいけばキャラも立ってくるもので、僕の熱血的な部分と、戸マトさんの全部を受け入れるみたいな要素が入ったキャラクターになっていったと思います。あと、これは意識して作っていたところではあるんですけど、しづりは里で異端とされていて、政も会社では浮いているみたいなところがあるんです。その浮いている者同士が出会ったら、なんか合うみたいなところも作品の裏テーマとしてありました。それで、そういう人たちが集まっているマンション、みたいなものがある。社会に合わない者同士で集まったら、そこで社会ができちゃったみたいな作品にしようというのは、考えていました。
――現代社会の問題にも踏み込んでいる感じもしますね。では、アニメ化の話があったときの心境を教えてください。
小龍 個人活動で漫画を描いていたので、出版社での商業連載とはいっさい関係がなかったんです。紙の書籍にする際KADOKAWAさんにお手伝いをしていただきましたが、基本個人で連載をしていたので、こんな話が来るわけないというのがベースにあったんです。だから、今回のアニメ化を企画したプロデューサーの藤井さんにも言ったのですが、最初は詐欺だと思っていました(笑)。でも、初めての打ち合わせで顔を見たときに、ほかの作品のインタビュー記事で見た藤井さんの顔と同じだったので、「これ、ほんまや!」となりました。そこからですね、じわじわ実感して、やったー!と嬉しくなりました。
※後編に続く
☆桃月なしこさんと矢野妃菜喜さんのお写真は2025年2月10日発売の月刊ニュータイプ3月号にも掲載予定です。
【撮影:田上富実子/取材・文:塚越淳一】
■TVアニメ「ニートくノ一となぜか同棲はじめました」
放送:2025年1月4日(土)より放送開始
スタッフ:原作…小龍・八木戸マト/監督…斎藤久/シリーズ構成…あおしまたかし/キャラクターデザイン…鈴木政彦/プロップデザイン…岩田竜治/色彩設計…日比智恵子/美術設定…益田健太/美術監督…西山勇/撮影監督…金武慎也・今泉秀樹/編集…増永純一/音響監督…吉田光平/音楽…CMJK/アニメーション制作…Quad
キャスト:出浦白津莉…矢野妃菜喜/安海政…石毛翔弥/百地彩夢…ファイルーズあい/和泉緋那…会沢紗弥/夏見叶愛…木野日菜/中山透…野上翔/朝倉陽葵…村上まなつ/葉月沙耶…堀江由衣/ナレーション…千葉繁
リンク:TVアニメ「ニートくノ一となぜか同棲はじめました」公式サイト
公式X(Twitter)・@neet_kunoichi