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TVアニメ「ニートくノ一となぜか同棲はじめました」放送開始直前記念! 原作者・小龍インタビュー(後編) 「どちらが本編ととらえてもらっても構わない」
2025年1月4日(土)より放送がスタートするTVアニメ「ニートくノ一となぜか同棲はじめました」は、平凡なサラリーマン・安海政(あつみつかさ)と、彼を妖魔から護るべく、居候を条件に主従契約を結んだ天才くノ一・出浦白津莉(いでうらしづり)との同棲生活を描いたラブコメディー。原作者の小龍さんへのインタビュー後編では、アニメの制作に実際に参加してみて感じた、アニメと漫画の違いについて、教えていただきました。
自分のキャラクターが動いていることに感動しました
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しづりのコスチュームに身を包むコスプレイヤーの桃月なしこさん
――公式サイトのコメントで、「原作としてアニメ制作に一部関わらせていただいてます」とありましたが、原作者として、どのようなスタンスでアニメに関わっていったのでしょうか?
小龍 最初から、できる限り参加させてくださいということは伝えていたんです。アニメの制作現場にすごく興味がありましたし、漫画を描いていくうえで、アニメのクリエイティブについて勉強しておきたいというのもありました。それと、「SHIROBAKO」というTVアニメを見ていたので、原作者とのやりづらさがアニメのクオリティに影響しちゃう、みたいなデバフになることは絶対に避けたいと思っていたんです。だから、やり取りのラリーみたいなものでのロスはできるだけ少なくしたいと思っていました。
――「SHIROBAKO」で、原作サイドとアニメ制作会社の間に入って、コミュニケーションを取れなくしていた担当編集がいましたよね(笑)。
小龍 茶沢信輔ですね(笑)。「SHIROBAKO」がどこまでリアルなのかはわからないんですけど、ああいうことにならないようにしたかったんです。それに、アニメと原作をあまり分けて考える気がなくて、ファンの方には、どちらが本編ととらえてもらっても構わないと思っていたんです。とにかくたくさんの人に認知してもらいたかったので、アニメでも、「あれがこうできたらなぁ」ということが一切ないように、できるところは全部協力させていただきました。
――実際にアニメの制作現場を見てみて、漫画と何が違いましたか?
小龍 やっぱりアニメはたくさんの人が関わっているんですよね。漫画家って、全部の作業をひとりで、漫画というフォーマット上でやるんですけど、ここのコマは、こういうテンポでいきたいと思ったら、全部都合よくできてしまうんです。でもアニメは、そうしたいと思っても、シナリオから演出、作画、音響と関わってくるので、やりたいことに対してのコストとかスピード感が全然違うんです。動画になるってこんなに難しくて大変なことなのかというのを、体感することができました。だから、世の中に数多くある神作って、神作になるまでに、どれだけのミラクルを起こしてきたんだろうって思いました。
――特にここはアニメならではの考え方だなと思ったのは、どんなところですか?
小龍 やはり時間の感覚はぜんぜん違うと思いました。漫画家は、コマとテンポは意識するんですが、ページを読み進める速さは、その人次第でもあるので、そこは読者に委ねているんです。でも、アニメの場合はリアルに時間が流れていくので、ここは言語化が難しいんですけど、感覚としての決定的な違いはありました。コマとコマの間の時間も、漫画家は都合よくすっ飛ばせるんですけど、アニメの場合は、そこでも時間が流れているので、そこをつなげるために、この方向にはキャラクターは動かせませんとか、ここにキャラクターは置けませんというのがあるんです。それは動画ならではの難しさでした。
――そのうえ、尺に収めるための取捨選択もありますからね。小龍さんはシナリオ会議の段階で、意見を伝えるようにしていたのですか?
小龍 そうですね。シナリオ会議には全話参加させていただきました。そこでやりたいことを伝えてみて、それに対して監督やライターさんたちから、こういう理由でできませんとか、できない場合も丁寧に理由を説明してくれたので、お互いにちゃんとやり取りができていたと思います。いい具合に僕がやりたいことを反映していただき、無理なものも納得しながら進めていくことができました。
――声優についてはいかがですか?
小龍 オーディションから参加させていただいたんですけど、このキャラは、この人がいいなぁと思った方が、だいたい選ばれている印象でした。その後、アフレコにも参加していたのですが、自分のなかから出てきた、こんな変なキャラクターを演じていただくのが申し訳ない、みたいな気持ちがまずありました(笑)。でも、皆さんすごくうまくキャラを表現してくれていました。しづり役の矢野妃菜喜さんは、これまでやったことがないキャラクターだとおっしゃられていましたが、しづりが本当にいると思うくらい上手で、真剣に向き合ってくださっているなと思いました。あとは、百地彩夢を演じたファイルーズあいさんですよね。あやめに関しては、声として収録したときにどうなるのか、ぜんぜんイメージがわからなかったんです。
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――ドMでド変態みたいなキャラクターですからね(笑)。
小龍 そうなんですよ。だから実際に聞いたとき「こうなるんか!」って感動しました。でも、数多くのかわいいヒロインを演じてきた方に、この役をやってもらう罪悪感はハンパなかったです……。あとは、ナレーションを千葉繁さんにやっていただいたんです。僕の年齢的に、「幽☆遊☆白書」(桑原和真役として出演)がどストライク世代なんですけど、やってくださることが決まったとき、テンションがすごく上がりました。
――実際、ナレーションはどうでしたか?
小龍 (コロナ禍の分散収録で)だいたい千葉さんの収録が最後にあったんですけど、千葉さんがナレーションで言ったら、何があっても全部ちゃんと落ちるんですよね。これは何でだろうと思ったんですけど、きっと僕ら日本人のDNAに、千葉繁さんのナレーションが刻まれているからなんですよね。だから本当に、ほとんど一発OKでしたし、アフレコの調整室側はうなずいているだけでした(笑)。
――OPテーマが、REAL AKIBA BOYZ loves中川翔子の「Neet In Jam🍓」で、第1クールEDテーマが出浦白津莉(CV.矢野妃菜喜)の「にーとぴあ。」に決まりました。いかがでしたか?
小龍 OPテーマが中川翔子さんに決まったとき、この作品のコンセプトにバッチリ合っていると思いました。作品の舞台に秋葉原が出てきて、しづりはニートでオタクでサブカル好きですから。かつ、REAL AKIBA BOYZさんだったので、もう完璧なんです。しかもタイトルが「Neet In Jam🍓」で、=忍者ですからね。この曲は、地下アイドルがステージで歌っているのが想像できて、曲から感じるコンセプトがすごかったです。ヲタ芸を踊っている姿もうっすら見えましたから(笑)。EDテーマは、しづりのキャラクター性みたいなところを歌詞に落とし込んでくれていましたし、アレンジもすごく好きだったので、聴いたとき、めっちゃいい!と思いました。あと矢野妃菜喜さん、歌うまっ!ってなりました。
――アニメが完成したのを見て、どう思いましたか?
小龍 最初にラッシュ映像を見たとき、シンプルに自分のキャラクターが動いていることに感動しました。それと、絵コンテを見ていたので、それがこんなふうに動画になるんだ!と勉強になりました。これを頭のなかでシミュレーションしながら、演出の方や監督は絵コンテを描いていたと思うと、やっぱりすごいですね。圧倒されました。
――では最後に、アニメを楽しみにしているファンへメッセージをお願いします。
小龍 今回は原作者として深くアニメに関わらせていただいたおかげで、やりたいことはほぼやらせてもらいました。実はアニメのシナリオを制作している段階で、原作のエピソードは追い越していたんです。なので途中からは先のエピソードのプロットを出して、それをライターさんにシナリオにしていただきながら作りました。その内容もすごくよくて、原作に一部逆輸入させていただいています。それと、朝倉陽葵(CV.村上まなつ)というキャラはアニメ制作の中で生まれたんです。村上さんのお芝居もあって、想像以上にいいキャラクターになりました。最新の原作でも登場していますが、アニメでは原作よりも早い段階で登場してきます。なので、アニメと漫画の違いとかも感じながら、楽しんでいただけたらと思っています。原作者としてもおすすめできるクオリティになっているので、ぜひ見てください!
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☆桃月なしこさんと矢野妃菜喜さんのお写真は、2025年2月10日発売の月刊ニュータイプ3月号にも掲載予定です
【撮影:田上富実子/取材・文:塚越淳一】
■TVアニメ「ニートくノ一となぜか同棲はじめました」
放送:2025年1月4日(土)より放送開始
スタッフ:原作…小龍・八木戸マト/監督…斎藤久/シリーズ構成…あおしまたかし/キャラクターデザイン…鈴木政彦/プロップデザイン…岩田竜治/色彩設計…日比智恵子/美術設定…益田健太/美術監督…西山勇/撮影監督…金武慎也・今泉秀樹/編集…増永純一/音響監督…吉田光平/音楽…CMJK/アニメーション制作…Quad
キャスト:出浦白津莉…矢野妃菜喜/安海政…石毛翔弥/百地彩夢…ファイルーズあい/和泉緋那…会沢紗弥/夏見叶愛…木野日菜/中山透…野上翔/朝倉陽葵…村上まなつ/葉月沙耶…堀江由衣/ナレーション…千葉繁
リンク:TVアニメ「ニートくノ一となぜか同棲はじめました」公式サイト
公式X(Twitter)・@neet_kunoichi