
「ファイブスター物語」第18巻刊行決定! 永野護カバーイラスト解説(第13~17巻)
デザイナー・永野護さんが「月刊ニュータイプ」で連載中の漫画「ファイブスター物語」の単行本最新第18巻の発売が、2025年3月10日に決定しました。
また、現在、大阪にある「グランフロント大阪」では、永野護さん初の大型展覧会「DESIGNS 永野護デザイン展」が開催中(2025年2月11日まで)。同展覧会には、「ファイブスター物語」の単行本の顔であるカバーイラストの原画17点が展示されています。
これらを記念して「月刊ニュータイプ」2024年4月号に永野護さん自身が寄稿したカバーイラスト解説を、全3回に分けて特別公開! 最新刊への期待を高めてもらうとともに、これからデザイン展に参加される方は、その予習を兼ねてお楽しみください。
後編(第13~17巻)をお届けします。
第13巻 SNOWFLAKES

タイトルは、氷の女王カイゼリンの周りで強制冷却された粉雪という意味だ。が、紫の水晶になってしまっている。これは下絵の段階で先に考えていたイメージのタイトルと完成したらなんか変わっちゃった、という例である。とほほ。長い休載を経てようやくGTMとなった「ファイブスター物語」。やりたいことはこれじゃボケ!と言わんばかりのフルパワーで描かれた第13巻の表紙絵は、その勢いもあって2か月かからないで仕上げられた。ファティマ・町はさらに細くなり、ファティマの体型も異次元化している。展覧会に来られた方は最後のスペースに置いてある実物大カレンの2メートルを超える身長よりも人間の太ももよりも細い胴体にびっくりされたと思うが、あれがファティマ体型である。
第14巻 White Morpho

タイトルは「白い蝶」のままである。GTMモルフォの初期イメージ。色はこのころからウルトラマリンブルーを入れることを決めてあったのだが、あくまで蝶々のイメージである。ショウメはイメージ通りだがあえて本編のデザインとは変えてある。第10巻エストのところでも述べたが、「絵はあくまで独立した別作品」と思っているためこのモルフォも未完成デザインなどではなく、絵としてのモルフォである。
第15巻 Praying Marble

祈るオーロラ。珍しく物語の主役からはちょっと離れたオーロラがモチーフとなっている。オーロラはともかく服が「絵のモチーフ」として魅力的で、黄色と水色の斜めストライプが好きでその色を生かすために描かれたものだ。
第16巻 Anchor For

タイトル(Forは4にもかかっている)とレイアウトの通り「デス・アンカー」の4作目のシリーズである。ゴリリの斜めに切れ込んだ眼球を破綻なく頭蓋骨に納めるために「眼球は楕円」ということにして骨から肉を付けていった。このレイアウト自体は「アンカー3」の別タイトルをもつ第3巻のコーラスと同じである(アンカー2はエルガイムマーク2のイラスト)。
第17巻 Silurian period Woods

タイトルは「シルル紀の森」。シルル紀、初めて海から陸地に進出した植物をイメージにした絵。なのだが赤い葉が落ちている。というのも、光合成する植物には海藻を見てわかる通り、葉が緑とは限らない。赤い光合成色素をもつものがいて、葉緑体が赤の植物である。ちなみに海藻は「植物ではなく藻類」である。最近植物から分離された。第14巻あたりからは連載と同時進行で表紙カバーを制作しており、連載を休止して描いていた時代より若干塗りが甘くなってしまっている。これは猛省し、次巻からはさらに手間をかけて描く予定である。第18巻は誰がカバーを飾るのだろうか?
※デザイン展の開催にあたり、単行本掲載時と絵のタイトルが一部変更されているものがあります。
(C)EDIT